目指せ!カントリージェントルマン VOL.11 日英、イギリス車の明暗に思う

アヘッド イギリス車

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ヘンリー王子とアメリカ人女優、メーガン・マークルさんの結婚式をニュース等で目にした人は多いはずである。

text/photo:吉田拓生 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
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VOL.11 日英、イギリス車の明暗に思う

VOL.11 日英、イギリス車の明暗に思う

華やかなロイヤルカップルの装いや話題豊富な出席者が注目を集めた結婚式だったが、イギリス車好きとしてはやはり登場するクルマが気になった。今回のロイヤルウェディングではランドローバーやロールスロイス、ベントレー、ジャガーといったイギリスを代表する自動車ブランドのクルマが用いられていたのである。

ウインザー城における結婚式を終え、無事にサセックス侯爵となったヘンリー王子が、ジャガーEタイプの助手席にメーガン・マークル夫人をエスコートしたシーンは、まさに式のハイライトだった。個人的にはこのEタイプが左ハンドルだった点と、ヘンリー王子が運転席に座った後間髪を入れずに発車した様子が奇異に映った。

最初からエンジンを掛けてあったとしても、クラッチを踏んでギアを入れEタイプを発車させるためにはちょっとしたタメの時間が必要になるはず。よくよくアナウンスを聞いてみると、このEタイプはジャガー・クラシックが手掛けたEVコンバート、Eタイプ・ゼロだったのである。

誰の企みかはわからないが、60年前の世界で最も美しいオープンカーの心臓に最新のEVシステムを組み込んだこのクルマをロイヤルウェディングに持ち込むあたりにイギリスという国のイメージ作りの上手さを感じる。イギリス車のイメージが絶えず貴族的である背景には、節目節目にこういった華々しいお披露目があるからなのだと思う。

それにアフリカ系アメリカ人のメーガン・マークルさんと生粋のイギリス人であるヘンリー王子の結婚という前例のない結婚に、やはり前例のないクラシックEVが掛けられているとしたら? それは考え過ぎだろうか。
Eタイプ・ゼロ以外はどれもおなじみの顔ぶれだったが、流石と唸らされるコレクションが披露された。新たなロイヤルカップルを乗せた1950年のロールスロイス・ファンタムⅣはエリザベス女王の長年の愛車であり、女王自身は彼女のために2台だけ誂えられたベントレー・ステート・リムジンで現れた。2002年に作られたこのベントレーこそ、今世紀最後にして最も格調の高いイギリス車だ。

一方、王室のメンバーが乗ってきた3台のディムラーDS420ロイヤルリムジンも良かった。当日は現代のレンジローバーも列をなしていたが、フォーマルなシーンにおいてはやはり誂えのリムジンが相応しい。ジャガーの傘下にあり現在は休眠している(?)ディムラー・ブランドだが、イギリス最古の自動車ブランドであり、イギリス王室最初のロイヤルカーでもあるのでこの場に相応しい。

そんな華々しいロイヤルウェディングを見ていて、5月頭に出回った「宮内庁所有のロールス・ロイス・コーニッシュが修理不可能」というニュースを思い出した。1950年式のファンタムⅣが12万人の観衆の前で元気に走る姿を目の当たりにした後では、1990年式のコーニッシュの話は質の悪い冗談にしか聞こえない。どこの専門家がそんな冗談を言ったのか?

コーニッシュはコーチビルド車なのでツルシの中では上等だが、部品はシャドウ系と一緒。補修部品なら腐るほどある。事の真相はともかくとして、モノを古いか新しいかだけで判断しているようなフシが実に日本らしいと感じた。

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text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。
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