モタスポ見聞録 Vol.15 レース好きとバイク好き
更新日:2024.09.09
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「バイクはレースの道具」そう考えるレーシングライダーは多い。市販車についてあまり知らず、免許証を持っていない人も珍しくない。彼らの目的は「レースに勝つこと」。「バイクに乗ること」ではない。ストイックなのだ。
text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
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- Vol.15 レース好きとバイク好き
Vol.15 レース好きとバイク好き
▶︎加賀山のマシンは、チームメカニックが製作した鉄フレームにGSX-R1000のエンジンを積んだオリジナルのカタナ。フロントはGSX-Rの純正を基本とし、リアはユニットプロリンクとなっている。
そういう意味では、私が特殊なのかもしれない。私はただバイクが好きな、ごく普通のツーリングライダーだった。ふとしたきっかけでサーキットを走り始め、気付けば全日本選手権を戦っていた。
ストイックにレースを追求したが「ただのバイク好き」は変わらなかった。だから「レースがすべて」ではなく、レースで戦いながら、自らレースイベントを開催し、またそれらをみんなに楽しんでもらうためのTV番組プログラムも創り上げてきた。バイクもレースも好きなのだ。
レースの魅力は、人間模様にあると思う。人が喜んだり、苦しんだり、乗り越えたり、充実する姿にこそ、人は共感する。レースには、走りやタイムやメカ、技術といったストイックな要素が多々あるが、「ただのバイク好き」の観点からすると、やはり生の人間の姿に惹かれる。
例えば、すごく速いライダーがミスをして、「ああ、普通の人間なんだな」と思わせてくれるような──。あるいは、往年の名ライダーが「実は当時こんなことを考えていたのか」と打ち明けてくれるような──。そうやってライダーへの興味がふくらみ、人から人へと伝わっていくことが、モータースポーツを文化にする道だと私は思っている。
私自身がプロデューサーを務めるYouTube上のモータースポーツ番組「MOTOR STATION TV」で、レースシーンを取りあげるときは、各メーカーの勝ち負けだけではなく、そこに至るまでの歴史やバイク好きの人間模様を映し出し、視聴者の共感を得るよう工夫を凝らしている。
5月20日に開催した日本最大の草レースとも呼ばれるテイスト オブ ツクバ ハーキュリーズクラスに、全日本最高峰JSB1000クラスに現役参戦中の加賀山就臣選手がエントリー。常連たちとどんなバトルを繰り広げるか、大いに注目を集めた。「ユッキー(加賀山選手のニックネーム)がテイストに出たらどうなるんだろう?」という人間への興味が、関心を呼んだのだ。
レースは加賀山選手が優勝し、全日本ライダーの実力とプライドを見せつけた。テイスト常連組にとっては悔しいレースとなったが、非常に盛り上がった。やはり人間ドラマが人に活力を授けるのだ。「カッコいいマシンで走ってみたい」とテイスト参戦を決めたという加賀山選手。ひとりのバイク好きの熱意が、多くのバイク好きの心を揺さぶったのだ。
私自身も番組、そしてレースイベントプロデューサーという立場ながら「ただのバイク好き」として加賀山選手の参戦を純粋に楽しめる放送プログラムにしようと思っている。往年の名ライダーの中には「僕も出てみようかな」と言ってくれる人もいる。
こうやって「バイク好きな人」が心底から楽しんでいる姿を見せていくことが、バイク好きを増やすのだと確信している。まだまだレースは面白くなる。
そういう意味では、私が特殊なのかもしれない。私はただバイクが好きな、ごく普通のツーリングライダーだった。ふとしたきっかけでサーキットを走り始め、気付けば全日本選手権を戦っていた。
ストイックにレースを追求したが「ただのバイク好き」は変わらなかった。だから「レースがすべて」ではなく、レースで戦いながら、自らレースイベントを開催し、またそれらをみんなに楽しんでもらうためのTV番組プログラムも創り上げてきた。バイクもレースも好きなのだ。
レースの魅力は、人間模様にあると思う。人が喜んだり、苦しんだり、乗り越えたり、充実する姿にこそ、人は共感する。レースには、走りやタイムやメカ、技術といったストイックな要素が多々あるが、「ただのバイク好き」の観点からすると、やはり生の人間の姿に惹かれる。
例えば、すごく速いライダーがミスをして、「ああ、普通の人間なんだな」と思わせてくれるような──。あるいは、往年の名ライダーが「実は当時こんなことを考えていたのか」と打ち明けてくれるような──。そうやってライダーへの興味がふくらみ、人から人へと伝わっていくことが、モータースポーツを文化にする道だと私は思っている。
私自身がプロデューサーを務めるYouTube上のモータースポーツ番組「MOTOR STATION TV」で、レースシーンを取りあげるときは、各メーカーの勝ち負けだけではなく、そこに至るまでの歴史やバイク好きの人間模様を映し出し、視聴者の共感を得るよう工夫を凝らしている。
5月20日に開催した日本最大の草レースとも呼ばれるテイスト オブ ツクバ ハーキュリーズクラスに、全日本最高峰JSB1000クラスに現役参戦中の加賀山就臣選手がエントリー。常連たちとどんなバトルを繰り広げるか、大いに注目を集めた。「ユッキー(加賀山選手のニックネーム)がテイストに出たらどうなるんだろう?」という人間への興味が、関心を呼んだのだ。
レースは加賀山選手が優勝し、全日本ライダーの実力とプライドを見せつけた。テイスト常連組にとっては悔しいレースとなったが、非常に盛り上がった。やはり人間ドラマが人に活力を授けるのだ。「カッコいいマシンで走ってみたい」とテイスト参戦を決めたという加賀山選手。ひとりのバイク好きの熱意が、多くのバイク好きの心を揺さぶったのだ。
私自身も番組、そしてレースイベントプロデューサーという立場ながら「ただのバイク好き」として加賀山選手の参戦を純粋に楽しめる放送プログラムにしようと思っている。往年の名ライダーの中には「僕も出てみようかな」と言ってくれる人もいる。
こうやって「バイク好きな人」が心底から楽しんでいる姿を見せていくことが、バイク好きを増やすのだと確信している。まだまだレースは面白くなる。
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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/