私の永遠の1台 VOL.26 BMW 2002ti

アヘッド BMW 2002ti

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BMW2002tiは筆者が生まれて初めて運転した外車だ。その印象は強烈でその後のクルマに対する考え方に影響を与えたと言ってもいい。それは1970年代の初めごろだった。

text:菰田 潔 [aheadアーカイブス vol.186 2018年5月号]
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VOL.26 BMW 2002ti

VOL.26 BMW 2002ti

そのころはすでに自動車レースに参戦していたので運転には自信があったが、初めての外車、しかも高性能なBMWというだけで嬉しい反面、緊張したのは確かだ。しかも借り物である。筆者はアルコールが飲めないので運転代行の役割をさせられ、夜の六本木の駐車場で乗り込んだ。

ドアを開けて座るのも初めてのBMWだから、まずは慎重にドライビングポジションを合わせる。するとペダルとハンドルとシートの位置関係がピタッと来て、安心感を持った。エンジンをかけるとちょっと大きめの排気音が聞こえるが、まろやかで上品な音が心地良い。これがBMWのエンジンかと感激したのをはっきり覚えている。

クラッチペダルを踏み込み、ギヤを1速に入れる。もちろんMTである。シフトレバーの感触もいい。リンケージが太い感じで、動きが滑らかなのにしっかりしているところが良かった。ここから発進だが、隣の席と後ろの席には飲んだオッサンが乗っているのでエンストでもしたら何を言われるか分からない。慎重にクラッチペダルを戻していった。

するとクラッチが繋がるポイントがわかりやすく、コントロールしやすいので最初からスムーズに発進できた。半クラッチの領域が広めだからエンストがしにくいクラッチだった。

高性能車ということを意識してアクセルペダルも慎重に操作したが、意外にもゲインが高くない。ペダル操作に対してレスポンスが過敏でないから扱いやすかった。しかし踏み込めばその分は力強く加速してくれるから、扱いやすい高性能という印象だった。

ハンドルも同じように扱いやすかった。センターの遊びの範囲は狭く、小さな操舵角から正確に曲がってくれた。タクシーで混んだ夜の六本木の道でも自信を持って運転できたのは、この正確なハンドリングのお蔭だった。

こんなクルマがあったことに驚いた。外車と国産車の違いにも唖然としたことを覚えている。

ドライバーの思いどおりに運転できるクルマ、高性能なのに扱いやすいクルマ、まろやかなのにダイレクトなフィールは現代のBMWにも共通しているように思う。その後1980年代にタイヤテストのためにサーキットでBMW528eに乗るチャンスがあったが、ここでもグリップ限界を越えた領域でも扱いやすく、ドライバーがコントロールしやすく創られていた。

ユーザーのレベルで、あるいはユーザーの要求でクルマ創りをしているのではない、プロフェッショナルの仕事を見た気がした。

BMW 2002ti

初代3シリーズ(E21)の前身が02シリーズ。1966年から1977年にかけて製造された。最初は1600−2というネーミングだった。2ℓエンジンだと2002、1.8ℓだと1802、最後のモデルである1.6ℓエンジンは1502と呼ばれた。ツインキャブになると「ti」、インジェクションは「tii」が数字のあとに付く。高性能な2002ターボも有名だ。

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text:菰田 潔/Kiyoshi Komoda
クルマ好きというより運転好きのモータージャーナリスト。毎年、世界の難関といわれるニュルブルクリンクを走ることを楽しみにしている。日本自動車ジャーナリスト協会会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員など。
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