私の永遠の1台 VOL.25 アストンマーティン V8ヴァンテージ

アヘッド アストンマーティン V8ヴァンテージ

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あの時、なぜ「清水の舞台」から飛び降りられなかったのだろう!! 手持ちのクルマを全部売りさばいて多額のローンを組んででも、手に入れるべき1台だったと悔やむ。

text:桂 伸一 [aheadアーカイブス vol.185 2018年4月号]
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VOL.25 アストンマーティン V8ヴァンテージ

VOL.25 アストンマーティン V8ヴァンテージ

後悔とはほんとうに、後からやってくる。

「いま買えばいいではないか」という声も聞こえる。ま、確かにそうなのだが現実は新型が出てしまった。買うのは 〝優勝〟したあのタイミングだったとしか思えない。

このクルマが自分にとって永遠の1台かどうかは、もっと時が経たなければ判らないが、僕にとって「アストンマーティン・V8ヴァンテージ」は手にいれなければならない重要な1台だったことは間違いない。

理由は、本誌ではたびたび取り上げて頂いているが、1周25キロと長い、世界一過酷なコース、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催されたニュルブルクリンク24時間レースのクラス優勝車だから。

イギリス人ジャーナリストと、ドイツ人アストンオーナーにしてセミプロドライバーと筆者がドライブして、筆者にとってはもちろん、アストンマーティン・ワークスにとっても初優勝だった'08年の話。もちろん、レーシングカーが欲しいワケではない。そのベースとなった市販ロードカーの話である。ニュル(俗称)24時間レース仕様も、基本はロードカーにレース規定を満たす安全装備を施したもの。

アストンは市販車に近い状態のV8ヴァンテージで、さらに馬力の大きい、本格的なレーシングマシンとして造られた速いクルマたちのクラス(SP8クラス)に挑み、ライバルがバタバタとトラブリ、壊れてリタイアして行くなか、完走どころか優勝してしまった!!

そのクラスに市販ロードカーレベルのチューンで挑戦する事の意義深さは、レース関係者はもとより、目の肥えた欧州のユーザーたちにも届き、響いた。結果、ロードカーに近いV8ヴァンテージが'08・'09年と同一クラスの表彰台を独占。もちろんアストンマーティン社にとって、その事はセールスに重要な効果を生んだ。

筆者が'08年から都合5度に渡りアストン・ワークスのドライバーとして迎え入れられたことはその成果に対する評価の表れである。さらにアストンとの関係は続き、新型モデルの日本での発表、試乗イベントではドライバーに指名されるようにもなった。

さて、永遠の一台…だが、もう詳しく説明する必要はないだろう。このコンパクトだがグラマラスな艶かしい面と抑揚のあるスタイリングは、誰がどこから眺めてもいい、でしょ?

自然吸気V8 4.7ℓ+6速マニュアルギアボックス仕様!! どちらも今後は絶滅するであろう。あるうちに、乗れるうちに、愛車にすべき1台であった。

アストンマーティン V8ヴァンテージ

ここで言うV8ヴァンテージは2005年誕生の3代目。4.7ℓ V8をフロントに、6速MT/7速AMTをリアに搭載するトランスアスクル車。コンパクトグラマーなスタイリングは2シータースポーツカーの王道を行き、他社のデザイナーもその美しさを認める存在。V12搭載の上位モデルもあるが、軽快さはV8だ、と桂氏。

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text:桂 伸一/Shinichi Katsura
1959年生まれ。自動車雑誌「OPTION」を経てフリーランス・モータージャーナリストに。クルマの印象を判りやすく各媒体に寄稿すると同時に、幼少の頃より憧れたレーシングドライバーとしても活躍。アストンマーティンとは2008年から5回ニュル24時間にワークスドライバーとして参戦。2度の優勝を飾る。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。WCAワールドカーアワード選考委員。
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