目指せ!カントリージェントルマン VOL.8 北欧寄りの風

アヘッド 北欧

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季春が目前に迫り、森の動植物が動き出している。これが雪に閉ざされた長い冬の終わりであれば大いに歓迎したいところなのだが、神奈川県の平均気温は全く低くない。生半可で安楽な冬が終わり、うだるような暑さと湿気が迫ってくる恐怖心の方がはるかに大きいのである。

text/photo:吉田拓生 [aheadアーカイブス vol.184 2018年3月号]
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VOL.8 北欧寄りの風

VOL.8 北欧寄りの風

「あり得ない話だけれど」と前置きして妻が言う。「もし次に引っ越すようなことがあったら、今度は寒い場所に住もう」。同感である。高断熱の家と高性能エアコンの組み合わせで夏を凌ぐより、薪を燃やして冬ごもりするような生涯のほうが健全ではないだろうか?

シャンパンはフランスのシャンパーニュ地方で作るからシャンパンなのだという。だからそれ以外の場所で同じものを作っても、それはスパークリングワインと呼ばれるというのはよく知られた話。

だが昨今、地球温暖化のせいで、シャンパンに適したブドウが採れる緯度も上がってきている。シャンパーニュ地方に拘っていると、畢竟良いシャンパンは作れなくなるということだ。「ストップ地球温暖化!」 大いに賛成である。けれど現実問題として、すでに日本の夏は暑すぎる。

果たして現代における理想の土地はどこなのか? 国内でと言うことなら、レタスの名産地である長野県の川上村がいい。地球規模で選べるのであれば、真冬と真夏に訪ねたことがある北欧だろう。
実は北欧というキーワードが、自分の中で年々大きくなっている。以前は英国にかぶれていた僕だけれど、森に棲んでからはがぜん北欧が気になる。

モノ好きの観点から言うと、我が家にある食器類の半分以上がフィンランド製だし、アウトドアの用品は圧倒的にスウェーデン・ブランドが多い。3機のチェンソーも5本あるハンドアックス(斧)も、先日何気なく手に入れた長靴もナイフも北欧の品だった。そんな北欧傾倒にとどめを刺すように、クルマでは最近すっかりボルボにやられている。

「とにかく安全、保守的」という時代のボルボには強く惹かれなかったのだが、新世代となった昨今のボルボはガソリンに軸足を置かないという進取の気性、他国のクルマに似ない見た目と走りのテイストが素晴らしい。結局のところ僕は、機能優先であるにもかかわらず、それがデザインにも良い影響を及ぼしているプロダクトが好きなのだろう。
鶏が先か卵が先かはわからないのだけれど、北欧モノの趣味と、平均気温の低い土地への移住願望は無関係ではない。気候風土がヒトの生活に影響を与え、個性的な道具を生み出すのだからそれも当然である。

とはいえ現実的にモノゴトを捉えるのであれば、言葉すらわからない北欧には住まない(住めない)だろう。できることといったら、またぞろ北欧モノを適当に買い漁って遊び、北欧に学ぶ(ノルウェーはEV需要が4割を越すって知ってました?)くらい。あとできればボルボV90クロスカントリーあたりを愛車にしたいな。そう、それはたぶん不可能ではないはずだ。

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text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。

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