熟成の域に達した3気筒の雄 Triumph DAYTONA 675R

アヘッド 熟成の域に達した3気筒の雄 Triumph DAYTONA 675R

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世界中のスポーツバイクを集めて一斉にエンジンを掛けたとしても、独特のサウンドですぐに聞き分けられるのがトライアンフの3気筒ユニットだが、そのアイデンティティを確固たるものにしたのは「デイトナ675」シリーズといえるだろう。

text:伊丹孝裕 photo:長谷川徹 撮影協力・トライアンフ横浜北 [aheadアーカイブス vol.136 2013年3月号]
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熟成の域に達した3気筒の雄 Triumph DAYTONA 675R

熟成の域に達した3気筒の雄 Triumph DAYTONA 675R

初代の登場は'06年。'09年にカウルの形状やミッションなどを変更、マイナーチェンジが施され、今回が初めてのフルモデルチェンジとなった。

「デイトナ675」シリーズの中でも最上級グレードの「675R」は特別だ。スタンダードモデルをベースに前後サスペンションを「オーリンズ」に、またブレーキキャリパーを「ブレンボ」にそれぞれ換装し、外装にはカーボンパーツを多用。また、クラッチ操作なしでスムーズなシフトアップを可能にする「クィックシフター」や、ノーマルとサーキットモードに切替可能なABSも標準装備するなど、ひとクラス上の走りを引き出すモディファイが盛り込まれている。

その日本仕様が今年3月に上陸、新しいトリプルサウンドを奏で始めている。欧米より1年ほど導入が遅くなったのだが、それにはワケがある。世界屈指の厳しさで知られる日本の音量規制をクリアするため、いくつかの壁があったからだ。
 
しかし、待った甲斐があった。なぜなら、海外のモデルを日本の基準に適応させる場合、エンジン回転数が制限されたり、マッピングが変更されるなどして、大幅な馬力ダウンを強いられることが通常だったからだ。ところが、トライアンフは見事にこれをクリアし、フルパワー仕様のエンジンスペックで日本の公道へ送り出してくれたのだ。その代償としてマフラーは長くなったが、その質感やデザインにも気が配られている。
 
フルパワー仕様で最も素晴らしいのは、128psという数字そのものではない。そこに至るまでのトルクフルな特性もまた本来の味付けのままであるため、サーキットでも公道でもドライバビリティに優れているところだ。どの回転域でもスロットルに対してダイレクトに反応し、回転の上下動もスムーズそのもの。結果的にタイヤのトラクションも感じやすくなっている。また、新型ならではの美点としては、車体バランスの良さが挙げられる。前側にも後側にも過度に荷重が掛かることなく、常に挙動が一定なため、数値以上にコンパクトに感じられる。また、ピタッと張りつくように旋回するコーナリング中の姿勢の安定感には関心させられた。

「正常進化」、あるいは「熟成」という言葉の意味を教えてくれるトライアンフ随一の秀作。それが「デイトナ675R」である。


従来のモデルとメインフレームは基本的に同じ構成だが、ピボット上部のリブを立たせている。シートを保持する赤いサブフレームは丸パイプから角断面構造に変更された。
日本仕様は、日本の音量規制に合わせたマフラー及びサイレンサーを装着する。ステンレス製でサイレンサー部分はヘアライン仕上げ。音量以外はフルパワー仕様とされる。
センターアップサイレンサーを廃止したことにより、従来モデルから大きくイメージを変更したテール周り。LEDが配されたテールランプはテールカウルにビルトインされる。
Rモデルは、ダンピングの調整時に、圧側、伸び側が互いの影響を受け難く、長時間の連続走行でも安定した性能を発揮するオーリンズのTTX「ツインチューブ」を装備。
基本的に従来モデルを踏襲したメーター周辺だが、新たにフェールメーターを追加する。また、「しなり」を意識したと思われるトップブリッジの肉厚や穴の形状にも注目。
トライアンフRモデルの特徴でもあるオーリンズ製NIX30フロントフォーク、ブレンボ製モノブロックキャリパーを搭載したフロント周り。ABSも標準装備とされる。
TRIUMPH  DAYTONA 675R
車両本体価格:¥1,585,000(税込)
エンジン:水冷DOHC並列3気筒12バルブ 675cc
最高出力:128PS/12,500rpm
最大トルク:74Nm/11,900rpm
シート高:820㎜

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。 

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