特集 元『Tipo』編集長 嶋田智之 推薦!これからはじめる趣味的クルマ生活

アヘッド クルマ生活

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生活を取り巻く事情に縛られるあまり趣味的なクルマ選びができない方は多いはず。
でもそこで、「乗りたいクルマ」をあきらめてしまうのは早計だ。視点を換えれば理想のクルマはきっと見つかる。

text:嶋田智之  photo:渕本智信  [aheadアーカイブス vol.113 2012年4月号]
Chapter
prologue
「200万円台で4人乗れるファミリーカー」編
「奥さんでも運転できる小さなAT車」編
「ミニバン選びに400万円」編
「200万円台で走りを楽しめる4人乗り」編
「人生一度はオープンカー」編
「100万円を自分のためだけに使う」編
epilogue

prologue

これからはじめる趣味的クルマ生活

のっけから極めて私的な話をさせていただくけれど、つい最近、思いがけず昔の仲間が顔を合わせる機会があった。ハナタレ小僧だった頃からの幼馴染だったり中学校から一緒だったりと様々だが、とりわけ10代の後半を一緒に笑ったり不貞腐れたりしながら濃く過ごした連中で、有り体にいってしまうなら学校の先生方からはありがたがられなかった類の、残念なタイプの元少年達だ。

40代も半ばを過ぎた男達が数年ぶりにグラスを傾ければ、話は嫌でも過去に転がっていく。誰かのヘマを囲んで笑ったり、別の誰かの秘密が今さら露になって仰天したり。他愛ないそうした時間の流れの中で、楽しい気分を感じながらも、ふと酔いが醒めそうになる瞬間というのが僕にはある。若い頃に乗ってたクルマの話がどこかから出たりすると、少し身構える。どこか座りが悪くなる。

中古のフェアレディZをチューンナップして公道ゼロヨンにトライしてたヤツ。当時“ハイソカー”などと呼ばれたおっさんセダンをシャコタンにして、踏切で腹を打ち付けてマフラーを落としたヤツ。軽自動車で普通車を追い落とすことに情熱を捧げたヤツ。最新鋭のナンパ車を頑張って手に入れたのに全く報われなかったヤツ。正統派FRクーペを夜ごと峠に向けてレース出場を夢見てたヤツ。方向性は見事バラバラだったけど、みんなクルマが好きだった。

楽しかったよなぁ、あの頃は…。

そう、想い出話なのである。記憶はあやふやだけど、10年くらい前か、いや、15年くらい前だったか。結婚をし、子供が生まれ、仕事にも追われ─。そんな歳まわりに差し掛かった辺りからだと思うけど、気づいたときにはそんな感じになっていた。そのくせこんな仕事をしてる僕と久しぶりに会ったりすると、デビューしたばかりの話題のニューモデルや昔から憧れてるブランドの現行モデルについて尋ねてくる。

子供が手を離れたら昔みたいにスポーツカーに乗りたい、歳をとったらベンツのオープンに乗りたい、金ができたらGT|Rかポルシェが欲しい…。関心らしきものは持っている。希望らしきものは持っている。過去形じゃなく、今でもクルマが好きなのだ。ただ、半ば諦めちゃってるだけで。停まっちゃってるだけで。それが言葉に変換されるとこうなる。

昔は金がなければないなりに、好き勝手に選べたからなぁ…。

でもさ──とノドまで出かかった言葉を、僕は飲み込むことにしてる。それぞれに社会に向けての顔があり、それぞれに家庭があり、それぞれに事情があるのだから、何もかも独りで日々を気ままにやってる僕がクチダシすることじゃない。けれど、胸の中ではいつだって「でもさ、解らないわけじゃないんだけどさ」という言葉が渦巻いてる。だからちょっとばかり気持ちの座りが悪いのだ。

僕が実家に乗って帰ったくたびれ果てる寸前の古いメルセデスのステーション・ワゴンを見て、迎えに来た下戸の友達は言ったものだ。

「うわ、お前、ベンツかよ。いいなぁ。儲かってんなぁ」。

「俺に言わせれば、儲かってるのはお前の方だよ。このエルグランド1台分で、俺のクルマ、10台買えるぞ」。

「わはは。ふざけるなよ馬鹿」。

利口じゃないことは認めるけれど、ふざけてなんかいない。エルグランドは特殊なモデルを除けば310万8000円から554万4000円。僕の20年も前のメルセデス・ベンツ300TEは、その気になれば楽に10分の1の価格で見つけられる。

さすがにここまで古いと手に入れてからのリスクは大なり小なりあるが、もっとリスクの少ない領域で、コストもそれほど莫大じゃない範囲内で、いろんなタイプの好みだとか趣味心だとかを満たせるチョイスが意外とたくさんあるものなのだ。

みんな、意外とそれに気づいてない。あるいは端から「無理!」と思い込んじゃって、見ないでいるのかも知れない。といったところで、僕の私的な話はにわかに一般的な話に繋がるわけだ。実はよくある話なのである。

本当は結構なクルマ好きで自分の趣味や好みに近いクルマに乗りたいのに、あるいは個性的なクルマや趣味的なクルマに憧れを持っているのに、自分にとっては味も素っ気も感じられないようなクルマしか選べないと思い込んで退屈なクルマ生活を送ってるケースの何と多いことか。

考え方をちょっとシフトして、一歩踏み出してみれば、人生をもっと楽しくするチャンスがそこにあるというのに。“もう終わっちゃった人”でもないだろうに、それはとってももったいないことだと思うのだ。

「200万円台で4人乗れるファミリーカー」編

“趣味”と両立できる 家族のクルマ

選択肢がないと考えがちになるには理由があって、多くの場合は予算、家族の人数、奥さんの希望、世間の目といった辺りが確実に関係してる。

そういった事柄を踏まえahead編集部の皆さんといろんなお話をしていたら、おおまかに何本かの柱が見えてきた。押し付けがましく感じられるかも知れないけれど、その柱に沿って「ならば、こんなクルマを考えてみたらどう?」と駆け足ながら紹介していくことにしよう。

まずは『200万円台で4人家族が乗れるファミリーカー』である。様々な方がこの雑誌を手にとっておられることだろうが、一般的に上限として設定されがちなのが300万円以下という数字らしい。当然、1〜2年で乗り換えることなんて考えず、できれば長く乗りたいだろう。

新車群をジックリ見ていくと、実はかなり“選べる”ことが判る。

VWのゴルフに新しく追加されたばかりの最もECOなグレード、『ブルーモーション』(264万円)は大本命だろう。10・15モードで18・4㎞/ℓの経済性、世界中が2ボックスカーのベンチマークに据える驚異的な品質の高さ、全方位的な高性能、飽きの来なさなど、死角のなさでは他の追随を許さないからだ。

が、僕はここではフランス車をオススメしたいところ。

なぜなら極めて個人主義的色合いが強いお国柄だから生み出されるクルマもブランドごとに見事な個性を放っていて、それぞれ控えめながら華やかさがあるし、スポーツカーにすら実用性を求める実利的な国民性ゆえに日常使いに不足なし、何より石畳の路面で足腰が鍛えられてるから、おしなべて乗り味は素晴らしく体に優しく疲れない。乗ってるとなぜかインテリジェンスのある人間に見られる、というちょっとしたオマケもついてくる。

日本にはルノー、プジョー、シトロエンの3つのブランドが上陸しているが、このカテゴリーならそれぞれ『メガーヌ』(268万円〜)、『308ハッチバック』(254万円〜)、『C4』(256万円〜)が、4人フル乗車することの多いファミリーにはサイズ的に最適だろう。

4ドア+ハッチバックという点もマッチしている。それぞれの特徴を簡単に挙げておくと、メガーヌは端正なスタイリングに加えてスポーツカーを思わせるようなハンドリングのよさと快適さを両立したモデル。308は猫科の動物を連想させる有機的なルックスとしなやかな身のこなしが魅力。

C4はちょっと大袈裟にいうなら、魔法のカーペットの上にリビングルームが乗っかってるような、柔らかく豊かな乗り心地が癖になるクルマ。そんなところだろう。どのモデルも乗った印象まで含めて明確な個性を持ってるから好き嫌いがハッキリ出るかもしれないが、どれも選んで後悔は出ないと思う。

もうひとつ付け加えておくと、実は日本のハイブリッドカーっていうのも、なかなか趣味的なファミリーカーとしていいんじゃないかと僕は思ってる。普通のガソリンエンジン車と比較して仰天するほど燃費が伸びるから、思わず「どこまで伸びるんだ?」と日常的にECOランを試してみたくなるのだ。

これがまた、やってみると密かにかなり楽しい。
自然とクルマの走らせ方も変わる。それでいて財布に優しいのだから、無視はできないだろう。

シトロエン C4

C4は『クサラ』の後継として'04年に登場。現行モデルは2代目。シトロエン流のデザインが個性的。

VW ゴルフ ブルーモーション

環境型のTDIエンジンや回生ブレーキ、アイドリングストップなどを備えたドイツ流エコモデル。

ルノー メガーヌ

躍動感あるデザインとドライビングの愉しみを両立。GTラインとプレミアムラインの2種類を用意する。

トヨタ プリウス

日本を代表するハイブリッドカー。初代は1997年に登場。現行型は2009年に登場した3代目である。

プジョー 308

307の後継として2007年に発表。搭載するエンジンは2007年のエンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞。

トヨタ アクア

ヴィッツクラスの車台にプリウスのハイブリッドシステムを搭載。発売後2ヶ月で10万台の受注を得た。

「奥さんでも運転できる小さなAT車」編

2ペダルでクルマの 愉しみを堪能する

次に考えたいのは『奥さんも運転するから小さなオートマチック車』である。この場合、オートマチックはクラッチのない2ペダル車、という考え方でいいだろう。いわゆるコンパクトカーにも魅力的なクルマはたくさんある。

ここでも本命になるのはやはりVWで、『ポロ』(213万円〜)はクラスを感じさせないクオリティの高さやゴルフをそのまま小さくしたような全方位的な高性能で、頭ひとつ以上抜きん出てるといえる。

フランス勢ではルノー『ルーテシア』(214・8万円)がスポーティ&コンフォート、プジョー『207ハッチバック』(199万円〜)がしゃっきり&しなやかで、どちらも高級感すら感じさせる豊かな乗り心地とオリジナリティのあるスタイリングに高い評価が集まっている。

が、個性的という面ではシトロエン『C3』(209万円〜)に軍配が上がる。運転席と助手席の頭の真上まで広がっているパノラマ的なフロント・ウインドゥが与えてくれる驚くほどの開放感。

それは他のクルマにはない気持ちよさだ。そのうえシトロエン特有の角のない柔らかな乗り心地。毎日が楽しく心地良くなるスモールカーの筆頭といえる。

が、毎日が楽しくなるということにかけては世界一といえるクルマが、このカテゴリーに1台入ってくる。イタリア生まれのフィアット『500』(195万円〜)がそれだ。

見る人の全てを笑顔に変えてしまうような愛嬌のあるルックスは、それだけで選ぶ価値があるとすら感じられるほどのものだ。それでいて小型車として求められる要素をちゃんと満たしたシッカリ者で、走りっぷりもイタリアンらしい明るく元気なキャラクター。

変に背伸びをしてないナチュラルなフィーリングも美点のひとつで、日々を愉快に暮らすパートナーとしてはこれ以上の存在はなかなか見つからない。女性に似合うのは当然、意外やオトナの男にもマッチしてしまう懐の深さもある。

ちなみにこのカテゴリー、ユーズドカーまで選択の幅を広げると、2代目フィアット『パンダ』(03〜11年)や2代目ルノー『トゥインゴ』(07年〜/輸入一時中断中)といった、それぞれ本国の人達が愛して止まないベーシック・カー(=つまり彼の地の国民車みたいな存在)達をはじめ、100万円前後辺りの予算でもなかなか惹かれるモデルの名前が連なってくる。要チェック、である。

フィアット 500

国民車「チンクェチェント」のテイストを再現。2気筒875ccのツインエアエンジンが話題をさらった。

VW ポロ

初代登場は'75年。現在の5代目はMTモードも楽しめる7速DSGを採用。小型車のベンチマーク。

プジョー 207

206の後継車。エンジンはBMWが開発した1.6ℓ直列4気筒。可変バルブタイミング機構が付く。

フィアット パンダ

'80年に登場した“角パンダ”を引き継いで登場した2代目。車格は5ナンバーに収まるサイズである。

ルノー トゥインゴ

'92年に登場した初代を引き継ぐ2代目。大衆車ながら、ルノー・スポール等のスポーツ版も発売された。

ルノー ルーテシア

写真は1.6ℓエンジンを搭載するスタンダードモデル。2010年にデザインを刷新した。本国名は「クリオ」。

シトロエン C3

現行型で2代目となるC3。基本骨格は先代のものを流用・熟成している。フロントガラスに注目。

「ミニバン選びに400万円」編

“ミニバン的に使える”SUVという選択

周りを見渡してみて意外に少なくないのは、「選択の余地がなかった」と言いながら比較的高額なミニバンに乗ってる人。『ミニバン選びに400万円。ならばこんなチョイスは?』を考えてみる。

つまりは堂々としていて貧乏臭さがなく、家族が広々と過ごせる空間と荷室があるクルマを家族が求めてる、ということなのだと思う。そうそう毎日7人も8人もがフル乗車するわけじゃないから、乗車定員は4〜5人で本来は充分なのではないか?

7人乗りの輸入ミニバンとしては、さすがドイツ! の質実剛健、超優等生のVW『シャラン』(379万円〜)などいくつか存在するが、概して日本的な高級ミニバンのような押し出しはなく、威風堂々な雰囲気が好きな向きには物足りないかも知れない。

ならばいっそのこと、堂々とした雰囲気+室内広々の回答をミニバンに求めることをヤメて、クロスカントリー・タイプのSUVへと発想の転換をしてみたらいかがだろう? こうした局面に最も相応しいのは、雄大な風景が似合いそうなアメリカンSUV。

フォード『エスケープ』(255万円〜)、シボレー『キャプティパ』(354万円〜)、クライスラーの『ジープ・パトリオット』(258万円〜)と、それぞれ雰囲気は異なるけれど、いずれも本格的なオフロード性能と冒険心を掻き立ててくれる魅力を備えたモデルが揃ってる。

もし奥さんが異を唱えそうになったら、すかさずカウボーイ・ブーツと然るべきジーンズをプレゼントして「これで颯爽と乗りこなしたら絶対にカッコイイ」と主張すべし。それはあながち嘘じゃない。

意外や女性とクロカン4WDは似合うのだ。それに、不経済のように思われがちなアメリカンSUVも、今ではエンジンをダウンサイジングするなどして、環境性能と経済性を素晴らしく高めている。

もし本当に日本的ミニバンが好きで選ぶならそれはいいことだと思うけど、他に手がなくて無駄にミニバンを転がすことには、あまり夢が感じられなくてちょっと寂しい気がする。それが家族のためのクルマ選びであっても、同じ乗るなら、それだけで気持ちが浮き立ってくるようなチョイスをして欲しいな、と心から思うのだ。

シボレー キャプティバ

搭載するエンジンは2.4ℓ直列4気筒。3列シート7人乗りのボディ長は全長4,690mm。

VW シャラン

1.4ℓ直列4気筒ツインチャージャーエンジンを搭載。リアドアはスライド方式を採っている。

ジープ パトリオット

2.4ℓ直列4気筒エンジンにCVTを組み合わせる。乗車定員は5名。全長は4,420mm。

フォード エスケープ

初代はマツダとの共同開発車。現行型の2代目は、エンジン、車台を先代から先代から流用している。

「200万円台で走りを楽しめる4人乗り」編

手頃な価格でドライビングを楽しむ

さて、ここからはグッと趣味の領域に入ったクルマ選びである。『200万円台で走りを存分に楽しめる4人乗り』だ。最初に浮かぶのは、トヨタ『86』(199万円〜)、スバル『BRZ』(205・8万円)という双子のスポーツ・クーペ。

後席は子供用と割り切った方がいい広さだが、とにかく後部座席は備わってる。2ドアは便利とは言えないが、子供が勝手に飛び出したりしないというメリットもある。この際、いい方に考えよう。

というのも、この2台、走らせてみての爽快感はかなりのレベルにある。クルマのことを良く知らない人が交差点ひとつ曲がっただけでも「あれ? 気持ちいいぞ」と感じることくらいはできるだろう。

コーナリング性能とコーナリングの楽しさはピカイチ。ウデに覚えのある方が走らせたら、自分の操作でクルマが自由自在に動いてくれるよう感じられるに違いない。日本が久々に素晴らしいスポーツカーを作ったんだ、と心から感激できる。最高だ。

もっと個性を望む方には、別のチョイスも当然ある。クルマは走って楽しくなきゃ意味がないという感覚に溢れる国イタリアからは、ファニーな顔つきと均整のとれたシルエットが特徴的なボディに、元気よく吹けるエンジンとよく粘る足周りを持つ、アルファロメオ『ミト』(278万円〜)。

そして歴史的なレーシングカー&チューニングカーのブランドを復活させ、フィアットのポピュラーな小型車を俊足マシンに仕立て上げた『アバルト・プント・エヴォ』(289万円)。この2台はいわゆる“ホットハッチ”と呼ばれる類で、どこを走らせても文句なしに痛快だ。

対するフランスからは、シトロエンの『DS3』(249万円〜)。これのターボ付きのモデルは、まるで世界ラリー選手権で無敵を誇ってる同名のマシンそのもののような俊足ぶりで、シトロエンらしくしなやかな乗り味なのに峠道ではクルクルと面白いように曲がってくれる。見た目はフランス人好みの小粋なスモールカーという感じだが、走りの実力も絶対に侮れない。

ちなみに、ミニバンのところで紹介しようか悩んだのだけど、ルノー『カングー』(219・8万円)という元は商用車ベースで開発された背の高い乗用車がある。小さめの5人乗りミニバンといった感じなのだが、マニュアルシフトのクルマも用意されていて、実はコーナーを攻めてみても、だいぶイケる。

思いのほか速かったりもする。ミニバンみたいなクルマが必要だけど走りも楽しみたいという人には、唯一無二のありがたい存在なのだ。まさしく欧州車の妙、である。

そしてユーズドカーまで広げると、旧型となった2代目ルノー『メガーヌRS』がイチオシ。驚くほど乗りやすく、乗り心地もよく、ちょっと風変わりなスタイルのハッチバックといった体なのに、ウデのある人がその気になれば峠道でポルシェを追い回せるくらいの速さを味わわせてくれる、スーパー・ホットハッチ。

また、いつの時代も常にホットハッチのトップクラスに位置し続けているVW『ゴルフGTI』も2〜3年落ちが、ゴーカートのようなキビキビ感が異様に楽しいミニ『クーパーS』なら1〜2年落ちが狙える。実はかなり選べるのである。

シトロエン DS3

アバンギャルドなデザインが個性的。WRCで活躍する姿を見た方も多いはず。3ドアハッチバックのみ。

ルノー メガーヌ RS(2代目)

ルノー・スポールがチューンしたRSは、2.0ℓ直列4気筒DOHCエンジンをターボで過給していた。

VW ゴルフ GTI

電子制御デフロックを進化させたXDSなどの装備が充実。“GTI”をよりスポーティに仕立てている。

アルファ ロメオ ミト

搭載するエンジンは1.4ℓ。アルファロメオ初の6速デュアルクラッチAT(Alfa TCT)を採用している。

ミニ クーパー S

搭載するのは1.6ℓツインスクロールターボチャージド直噴エンジン。ゴーカートのような乗り味は健在。

アバルト プント エヴォ

エンジンは1.4ℓマルチエアを搭載。フロントブレーキには、ブレンボ製4ポッドキャリパーを採用。

トヨタ 86

富士重工業との共同開発となる水平対向エンジンを搭載。FRレイアウトの4人乗りスポーツカー。

ルノー カングー

初代は250万台をセールスするヒット作。引き継ぐ2代目は先代より車格を大きくして登場した。

「人生一度はオープンカー」編

オープンエア・モータリング を手に入れる選択肢

『人生、一度はオープンカーに乗ってみたい』という人も少なくないだろう。新車で2シーターをという人には、ルノー『ウインド』(255万円)をオススメしたい。

トゥインゴという小型大衆車のコンポーネンツを巧みに使ったスポーツカーで、スイッチひとつで屋根が後ろ側にパタッと回転し、わずか12秒で自分だけの空が手に入る。エンジンのパワーはないがフットワークの良さは抜群だから、流して走っても飛ばして走っても素晴らしく気持ちいい。

一方4シーターということであれば、これはフィアット『500C』(239万円〜)に尽きる。正確には屋根の上の部分がキャンバス地で、スイッチひとつでそれがトランクの上の辺りまでするすると下がるスライディング・ルーフ式。とはいえ、その開放感はかなりのもの。

フィアット500持ち前の明るく愛らしいキャラクターとオープンエア・モータリングの組み合わせなのだから、楽しくないはずはないだろう。

ユーズドカーにも色々とチョイスはあるが、比較的年式の新しいプジョー『206CC』辺りは、2+2とはいえ事実上の2シーターながら、走りとスタイルのバランスもなかなか良好。価格的にも当然アンダー200万円。

また4シーターであれば、VWゴルフの信頼性と可愛らしいスタイルを持った『ニュー・ビートル・カブリオレ』が、100〜270万円位の間で流通してる。デュエット・クルージングもよし、家族みんなで風を浴びながらお出かけするもよし。

オープンカーは、ただそれだけで楽しい気分にさせてくれる、強力な気持ちよさを持っているのだ。

VW ニュービートル カブリオレ

かつてのビートル・カブリオレに倣った幌の収納方法により、イメージも'60年代風の面影を残している。

フィアット 500C

チンクのオープンバージョン。ピラーとルーフの一部を残しながら、天井部分のみ幌屋根が開放される。

プジョー 206CC

ルノー ウインド

トランク上部の専用スペースにルーフパネルが収納される。塊感のあるデザインは超個性派。

「100万円を自分のためだけに使う」編

限られた予算で 自己中心的、車両選び

最後は現実的と思うか全く非現実的と考えるかは人それぞれ、『100万円を自分のためだけに使えるのなら?』だ。その予算だと、ターゲットはユーズドカー。だが、ユーズドカー市場は宝の山である。

即座に思い浮かぶのは、マツダの『ロードスター』。それも世代がひとつ前の、いわゆるNB型だ。その価格帯でも充分に狙えるのはもちろん、タマ数が豊富だから比較しながら選ぶこともできる。何より走らせて楽しいのは折り紙つきの、後輪駆動の名作スポーツカー。

ドライビング・テクニックを鍛えるのにこれほど最適なクルマはないし、逆にウデの立つドライバーが駆れば、クルマの動きは自由自在。オープンエア・モータリングも楽しめる。

管楽器のようなサウンドを聴かせてくれるV6エンジンを積んだ、アルファロメオ『GTV』や『156』、なんていうのも一緒に暮らして心地いい。ちょっとリスキーかも知れないけど、メルセデス・ベンツ『SLK』の初期型や、BMW『Z3』の初期型といった、ジャーマン・オープンカーも楽々射程距離。

90年代の人気者だったフィアット『バルケッタ』や『クーペ・フィアット』も、もちろん。敷居は高いけど、MG『ミジェット』のようなブリティッシュ・ライトウェイトスポーツや、シトロエン『2CV』のような歴史的なベーシックカーといった、いわゆるヒストリックカーの世界にも、入っていくことができる。

盆栽のようにじっくり構えて長く楽しむつもりなら、それもいいかも知れない。とにかく、現状では“まず手に入れる”ための元手としてしか考えていないわけだけど、選択肢がたくさんあるっていうことだけは事実なのである。

アルファ ロメオ GTV

アルファロメオ伝統の「GTV」を車名に持つ、FFスポーツモデル。定員は4人。ただし後席はタイト。

BMW Z3

'96年に登場した2シーター・スポーツ。オープンカーとクーペの2種類がラインアップされていた。

シトロエン 2CV

みにくいアヒルの子と呼ばれたフランスの国民車。1948年から1990年まで、387万台が生産された。

フィアット クーペ フィアット

4人定員のFFスポーツモデル。エンジンは2.0ℓDOHC。ターボ付きモデルとノン・ターボが選べた。

マツダ ロードスター

初代(NA型)登場から9年を経た'98年に登場。リトラクタブルヘッドライトはこのNB型で廃止された。

アルファ ロメオ 156

'97年に発表された。日本には2ℓ直列4気筒エンジンと、2.5ℓV型6気筒エンジンが選べた。

フィアット バルケッタ

バルケッタとは、イタリア語で「小舟」の意味。初代のマイナーチェンジ版だった2代目は'04年に登場。

epilogue

考え方を換えれば “心の一台”は現れる

ここに連ねたチョイスは、僕の偏見に満ちているかも知れない。ちょっと前まで携わっていた比較的ガチな方向のマニアックな雑誌の読者さんのような方ばかりにお読みいただいてるわけじゃないことも承知で、ちょっとそっちに踏み込んでもいる。

そういう意味では最後の方は、普通の感覚からすれば無理めな話もしてる。なぜならば、「実はこんなにたくさんあるんだよ」ということを、これまで知らなかった人に知ってほしいと思ったのだ。いや、本当はまだまだたくさんあって、時間とスペースさえあれば1冊まるごと、それに費やすことだって不可能じゃない。

例えば、わりと知られていることだからあえて割愛したけれど、BMWの3シリーズやメルセデス・ベンツのCクラスのようなメジャーどころも、当然年式は古くなるけれど、まだまだ普通に乗っていられる個体が30万円・50万円・100万円…と、売り物はいくらでも出てくるのだ。

このページを開き、駄文にお付き合いいただいて、もしあなたに何か思うところがあったなら、自分の中の「クルマ、好きなんだよな」という声に従って、ウェブサイトでもいい、ユーズドカーの情報誌でもいい、ちょっとだけ手間隙かけていろいろとチェックをしてみて欲しい。そんな中から“わが心の1台”が、ひょろっと現れないとも限らない。

愛車を単なる道具と割り切って適当につきあっていくか、気に入ったクルマと一緒に楽しい人生を過ごしていくか。どっちがより幸せなのかは語るべくもないだろうが、その境界線は、実は僕達の目の前にある。一歩踏み出すかどうか。たったそれだけのことなのだと思う。

一歩踏み出して、世間の目という他人の価値観を気にせず自分の価値観に沿って進むようにする。一歩踏み出して、共に生きてる人生のパートナーとしっかり相談したり、ちゃんと説得したりするようにする。

一歩踏み出して、クルマに熱中しても後ろ指を刺されない人間でいられるよう自分を律して暮らすようにする。
簡単なことだ、なんていうつもりはない。でも、やってみる価値はあると思うのだ。そこから何かが変わるかも知れないのだから。

──なるほど。今になって気づくなんて鈍いなとは思うけど、この雑誌を作っている人達は、そうした願いを込めて雑誌の名前を決めたのだろうね。『ahead』──と。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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