埋もれちゃいけない名車たち VOL.23 70年代の存在感。スポーツカー感覚の“サニトラ”「日産サニー・トラック(2代目)」

アヘッド 日産サニー・トラック(2代目)

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時代はいつも、動いてる。目に見えなくても、絶えず変化を続けている。そんな中にあって、頑として変わることを拒み続けるものもあれば、時代を読んで器用に変貌を繰り返すものもあり、また時代が変わっちゃったから仕方なく後追いで調子を合わせてるようなものもある。長く在り続けられるのは、どれだろう?

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.139 2014年6月号]
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vol.23 70年代の存在感。スポーツカー感覚の“サニトラ”「日産サニー・トラック(2代目)」

vol.23 70年代の存在感。スポーツカー感覚の“サニトラ”「日産サニー・トラック(2代目)」

その昔、日本の乗用車はほぼ4年ごとにフルモデルチェンジをしていたような記憶がある。けれど、あまり記憶にも残ってないし日頃は仕事でも(僕の場合は)触れることのないカテゴリーだから資料も手元にはロクに揃ってないのだけど、商用車、いわゆる働くクルマについてはその限りではなかったように思う。

乗用車は常に真新しさがないと売れないが、働くクルマは〝マイカー〟ではなく会社が業務遂行のために購入するケースがほとんどだから、安くて丈夫で機能さえちゃんと満たせばOK、乗る人間も多くの場合は〝仕事道具〟のひとつとしてガシガシ使うわけで、そこには〝めくるめく愛〟のような感情は生まれにくい。

なんてことを考えていたら、思い出した。そう、驚くほどの長寿モデルとなり、生産中止になった今も一部のマニアに熱烈に愛され続けている〝働くクルマ〟があったのだった。1971年から1994年まで国内生産され、海外では2008年の秋まで生産されていた日産サニー・トラックの2代目、B120型の通称〝サニトラ〟がそれだ。
いうまでもなく大衆車として一世を風靡した2代目サニーをベースとした小型ピックアップ・トラックで、キャビンと荷台が別れてないワンピースデザインだったため、スタイリッシュだった。

もちろん大半のサニトラは〝働くクルマ〟としてガシガシ使われたわけだが、仕事車両兼自家用車としてサニトラに乗る若者が小型軽量なボディと後輪駆動、搭載するA型エンジンの望外の元気良さに目をつけてチューンナップを始めたところから隠れた人気を見せ始めた。

当時のサニーはツーリングカー・レースで無敵を誇ったクルマであり、サニトラに転用できるパーツも少なからずあったことが勢いをつけた。時代が進むとほとんど'70年代のままのシンプルでノスタルジックなスタイリングが新鮮味を帯びるようになり、同時に〝世界の本流〟には決してなれないカテゴリーのクルマであるがゆえ、そのマイナーどころとしての存在感がマニアックなクルマ好きの心をくすぐった。

アメリカには若者がピックアップをスポーツカー感覚で楽しむようなカルチャーがあるけれど、実は日本にもあったわけだ。少し形態は異なるけど。

今や小型商用車はミニバン系ばかり。サニトラみたいなクルマがあれば、仕事をするのがもっと楽しくなるのにな……なんて思ったりもする。

日産サニー・トラック(2代目)

2代目“サニトラ”は小型車サニーをベースとするピックアップ・トラックとして1971年から発売されたモデル。細部の改良を繰り返しながらも基本的な部分は変えず、1994年まで生産された。また南アフリカで2008年まで生産されていた。

基本構造がサニーのクーペやセダンと大差なく、ピックアップとしては侮れない動力性能を持っていたのが特徴のひとつ。実はグループBのホモロゲを所得しており、'80年代半ばの南アフリカでアウディ・クワトロやランチア037と同じクラスで数台のサニトラがラリーを戦っていたこともある。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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