Rolling 40's vol.46 アイドル崩れ

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マヤ歴2012年、人類滅亡ではないが、毎日、テレビを見てもヤフー・ジャパンを見ても、いよいよ日本も「トンチンカン」なとこに来ているなという思いは誰もが持っているだろう。そう考えると、あながち2012年人類滅亡説も単なるオカルト話ではないような気さえしてくる。

text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]
Chapter
vol.46 アイドル崩れ

vol.46 アイドル崩れ

知り合いの大金持ちは資産をまとめて「シンガポール」に移住し、別のサーファーはバリ島にお店を出して住むという夢を叶えたりしているが、私は東京を離れるつもりはない。旅人気質も強いのだが、同時に、自分が生まれ育った地域への想いは年齢とともに強くなった。今更、ロスに住む気合もない。

その思いに格段崇高な意味はない。中央線阿佐ヶ谷駅前の病院で生まれたので、未だに中央線沿線の飲み屋街をウロウロしていたいということぐらいだ。あとはここ杉並区周辺に昔からの仲間がたくさんいることだろう。つまり人は命だけを抱えて生きている訳ではないということだ。

こんな経済・文化を含めた国難に何を「能天気な」と言われるかも知れないが、反対に最近、極端に緊張感のある活動もしてみた。今年3月から今月まで飛び石スケジュールで、南相馬を舞台にした映画を撮影し続け、やっと7月に完成発表をできることになった。物語の詳細はこんな感じだ。

「全てを失った男が、あらゆる矛盾のスケープゴートとなった南相馬に向かう。そこには親戚が住んでいた。そして彼はその土地で新しい愛を見つけるのだが、世の中は、とても残酷なもので…」

そんな内容の話だ。本当はもっと筆舌し難いほど過激なのだが今回はこの程度の説明にさせていただく。

「のた打ち回る40代」

このコラムの題の「別訳」としてそんな思いが強くある。私自身、この歳になって感じ始めた男としての一番の「強み」とは、残された時間を「逆算」できることだと思っている。また4分の一くらいは寝ているとして、さらに残された時間を正確に「見積もる」ことも可能だ。

そう考えると「人類滅亡」なんて意外と怖くない。どっちにしろ地球の未来を担うような尊大な人生なんて残っていないのだ。せいぜい大好きな映画を作ったり、本を書いたり、テレビでアホ面さらすくらいだろう。

子供たちの未来は? なんてきれいごともついでに言いたいところだが、とりあえず自分は救世主ではないので、できることを半分でも貫徹していくだけ。ただ、その半分でも実現できたら御の字。

そんなケツまくりの勢いで、とある面白いクルマを買ってみた。中古の某大型高級セダンだ。別に好きな車種でもなかったのだが、近所のディーラーの前を愛犬と自転車で通り掛かったら、その「白鯨」がパールホワイトの巨体を晒しながら私に何かを訴えていた。

思わずフロントウィンドウに張られている値段や詳細を見るとなかなか好条件。中を覗き込むとかなり程度の良い黒革。そこは知り合いの営業マンもいる正規ディーラーだったので、その場で店の中から彼を呼び出し、「これください」と出会ってから3分で購入決定。

納車までは10日以上かかったが、いろいろと丁寧に整備&部品交換をしてくれて、バリ物のそいつは私の元に嫁いできた。今となっては某メーカーのフラッグシップではなくなってしまったが、その気品と性能は言わずもがなである。

言ってみれば、8年くらいにピークを迎えたバツイチの「アイドル崩れ」と結婚するようなものだろう。これをそのままリアルにやった業界の友人がひとりいるが…新車やピチピチばかりに目を奪われていては「羅漢」として能がない。

その「アイドル崩れ」と最近の生活を楽しんでいる。彼女とのリアル生活がまず最初に始まり気が付いたことは燃費の悪さだった。それも車体が2トンあるせいか、走る状況でリッター5キロから13キロを行ったり来たりする。

当然ハイオクである。少し青ざめてもいるのだが、うまく走れば平均7キロくらいはなんとか行くので、まあ、「アイドル崩れ」のご愛嬌ということで気にしないようにしている。
また、走りに関しては、ドリフトでもしない限り全く文句の付けようがなく、とりあえず毎日乗る度になんか楽しい気分にしてくれる。

スポーツカーではない選択ではあるが、それも40代の図々しさだ。バイクは別として、黒革シートで「中小企業の社長並み」にリラックスして何が悪いと開き直っている。あと、とにかくデカいので、交通の中で何となく大らかな気持ちになり、その余裕から無駄な速度超過もなくなる。

40代こそスポーツカーにという「選択」を指標としてきたところもある私がどんな「改宗」だと訝しがられてもいるのだが、そこは再び40代の図々しさで返り討ちにしている。

「今はこれが好き」

残された時間が分かっているからこそ、私はいつもこう答える。それは40代にとっては、仕事だって恋愛だって同じことだ。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
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