”おひとりさま専用スポーツカー”S660に2年半乗って思ったこと

ホンダ S660とはどんな車か?

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

今一度、S660について簡単に説明しよう。ミッドシップ・リアドライブのオープン2シーターというパッケージに、660ccの直列3気筒ターボエンジンを搭載。トランスミッションは6速マニュアルとCVTの2種類から用意されている。端的に言えば、同社が過去販売していたBeatの現代版だ。

開発責任者は当時26歳という椋本陵氏。本田技術研究所の50周年を記念した新商品提案コンペで、「車離れが言われる若い世代から、『車って楽しいんだぜ』というメッセージを世の中にストレートに発信したい」という彼の応募案が優勝したことがきっかけになったという。

また椋本氏は以前S2000を中古で買い求めて所有していたそうだが、その性能を持て余していたため、自分にとって等身大のスポーツカーを作りたいという思いがあったそうだ。

曖昧ながらも明確なコンセプトから誕生したS660は、ホンダでしか作りえない、そして誰もが「ホンダらしい」と思えるクルマに仕上がり世に送り出された。

ホンダは長年、日本のロック・バンド「ハイロウズ」の楽曲「日曜日よりの使者」を企業CMに用いていたが、S660はその言葉がピッタリといったクルマとして、世間に迎え入れられ、発売当初は納車まで1年待ちとまで言われるほどの人気を誇った。現在の納期は2~3ヶ月ほど。それほど待たなくてもS660は貴方の手元にやってくる。

エコで経済的なS660

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎エンジンフードを空けた状態。

S660の利点は、スポーツカーとしては異例ともいうべき維持費が安いことがあげられる。軽自動車であるため、維持費が普通車に比べてかなり安い。自動車税はリッターカーの1/3といえる金額だし、車体が軽いため新規登録や車検時に納める重量税も控えめだ。

高速道路の通行料ももちろん安い。気になる実燃費も走行シーンによるとはいえリッター17km~18km(CVTの場合)と、さすがにハイブリッド車には劣ってしまうものの、スポーツカーとしてはかなりの高燃費だ。

見た目も、最近のSUVやミニバン、軽バンのような、高さを稼いだ結果による大型グリルと威嚇するような切れ長の目による顔つきとは異なるスマートさを感じさせるもの。1990年台のインテグラやシビックを彷彿とさせる、どこか知的な印象を漂わせる。

軽自動車規格ギリギリの大きさとはいえ、コンパクトなボディは都内の狭い道にも余裕で対応。エコで経済的、それでいてスポーツカーだから走りは楽しい。そんなS660を買わない手はない。

ラゲッジスペースはどうか?

ホンダ S660(栗原祥光撮影)

▶︎ラゲッジスペースを空けたところ。雨が降っても浸水することはないが、横幅が狭いため、入れるものはかなり限られる。

しかし、そんなS660を購入する上で最大の障害になるのは、走りと引き換えに失った実用性の乏しさだ。ラゲッジスペースといえる場所がほとんどないため、物を運ぶ、ということには適していないのだ。

フロントに幌を収容する場所があるので、そこに何かを入れることはできるのだが、直近にラジエーターが配置されているため、庫内はかなり熱くなる。そのため収納できるものは限られる上に、幅が狭いためボストンバッグの一つも入らない。よって運転手の荷物は助手席に置くことになるのだが、どんな大きさでも、というわけにはいかず、経験上飛行機内持ち込み可能な大きさのバッグが上限といったところ。

旅行取材の多い筆者は、その大きさのバッグを複数個用意し、まるでパズルゲームのごとく車内に詰め込むことで対応している。そのような有様だから、助手席に人を乗せる必要がある場合は、自身の荷物は財布と鍵だけとし、かつ同乗者に対して事前に「手荷物は一つまで」と伝えて対応するか、レンタカーを借りるなど別のクルマを利用するのが懸命だ。

このラゲッジスペース問題に関しては「おひとりさま専用スポーツカー」と言わざるを得ない。それさえ納得すれば、乗り出し250万円強で、日々の生活がよりハッピーになるカーライフが約束されている。

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