値引きのコツは?なかなか聞けないディーラーの内部事情 ー前編

ディーラー

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快適なカーライフを送るためには、ディーラーの存在は欠かせませんよね。でもその内情は、あまり知られてはいません。今回は、元ディーラー営業マンの立場から、「商談」と「ディーラーのウラ事情」に焦点を当て、それぞれを前編・後編に分けて紹介します。

文・赤井福
Chapter
商談はスキルではなく、気持ちで進める
商談時の値引きの基準
上手な値引きのススメ

商談はスキルではなく、気持ちで進める

自動車雑誌やネット記事で『上手に値引きしてもらう方法』とか、『商談のうまい進め方』といった特集が組まれています。それらに書かれていることは、もちろん間違いではないのですが、皆さんが読んでいる記事は、当然のように営業マンも読んでいますから、対策も練られています。雑誌やネットの台本どおりに交渉すると、かえって営業マンの術中にはまってしまうことがほとんどなのです。

できる営業マンほど、商談の回数が多く、応酬話法もお手のものですから、記事と同じように商談を進めることには、なんのメリットもないといっていいでしょう。

ディーラーでうまく値引きを引き出す前に、まずインターネットが普及し、高級ブランドショップでも担当営業が付くことがまれなこの時代に、なぜクルマは一度きりの接客ではなく、旧来の商談という形をとるのかを考えなければなりません。

ブランドバッグや高級時計などの買い方と、クルマが大きく違うところは、「整備」があり「代替」があるということです。クルマは、買ってもらってから幾度も整備入庫があり、その数年後は代替もあります。そこに、機械的な対応では賄いきれない「人と人のつながり」が存在するのです。

商談時の値引きの基準

商談に値引きは欠かせないものです。最近では、レクサスに代表されるワンプライス販売(値引きなし)をするお店が徐々に増えていますが、値引き競争は、いまなお続く「クルマ独自の文化」といってもいいでしょう。

その値引きは、営業マンの持つ「ガイドライン」と「店長決裁」という2段階で構成されます。ガイドラインとは、車両本体価格・メーカーオプション・ディーラーオプションそれぞれに何%まで値引きをしていいかを、あらかじめ販売会社の本部指示のもとで決められたものです。営業マンは、その範囲内で商談を進めていきます。

不人気車や在庫車などでは車両本体の10%~15%という場合もありますが、多くは5~8%以内で、新型車や人気車にいたっては3%程度となります。そしてメーカーオプションはおおむね5%、ディーラーオプションは10~20%と決められているのです。この少ない値引き範囲のなかで数字の調節をします。

たとえば、車両本体に対し範囲を超えた値引きを要求された場合、オプション品の値引きを少し抑えたり、下取り車両の評価額を少し抑えめに伝え、最終的に下取り金額を増額したように見せながら、キリよく価格を調整しているのです。

上手な値引きのススメ

ユーザーが、営業マンからより良い値引き額を引き出すためのコツは、「この人と長く付き合いたい」と思わせることです。クルマとは、手に入れたその日から消耗が始まり、いずれ買い替えが発生するものです。長く良いお付き合いができるお客さんを、営業マンは囲っておきたいのです。

逆に営業マンの立場としては、まるでアイドルのように、自分のファンを増やすことが、長く営業の世界でやっていく秘訣でもあります。

自分がファンになれる営業マン探しは、まずディーラーに足を運ばなければなりません。そこで商談テーブルにつかなくとも、立ち話をしてみたり、自分の感性に合った人を探します。見つからなければ近くの別のお店に行ってみたり、日をあらためて訪問します。

営業マンが決まったら、そこでようやく商談に入ります。そして何度か商談を重ねると、営業マンから「もうこれ以上は」という言葉が出ます。ここが、ほぼガイドライン一杯のラインです。もう営業マンには裁量がありません。しかし、その先に店長決済のワクがあります。

そこで、具体的に金額を提示し、この場で契約することを伝えます。このときは、「これだったら買う」というより「ここまでどうにかお願いできないだろうか」という姿勢を見せることが大事です。営業マンを困らせたり、嫌がらせをするのではなく、あくまでお願いをするのです。

営業マンが「買って欲しいから私は店長と戦う」という気持ちになってくれたら、こちらの勝ち。初めてガイドラインを超えた値引きを引き出せるのです。

その際に、営業マンが店長と戦うための武器が”契約の確証”なのです。買うのか買わないのかわからない人に対して、営業マンが無理をすることはありません。「店長に相談する=この商談を決めないと自分の評価が下がる」ということに繋がるので、店長決裁をもらうということは一度きりであり、その商談は決まる前提でないと挑めないのです。


クルマの商談は人付き合いであり、戦うものではありません。お客さんも営業マンも、双方が気持ちよく取引きすることが大切であり、関係性を良好にすれば、おのずと値引き額はついてきます。

商談よりも雑談をいかに多くし、双方に人間性を分かり合えるかが、良い商談への一歩になるのです。

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文・赤井福
フリーライター。大学卒業後、金融業に従事。その後、6年間レクサスの営業マンとして自動車販売の現場に従事する。若者のクルマ離れを危惧し、ライターとしてクルマの楽しさを伝え、ネット上での情報発信を行っている。
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