アヴァンギャルドのベンチマーク

アヘッド シトロエン DS3 CABRIO

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シトロエンDSラインのトップバッター、DS3が日本に上陸したのは2010年。当初は「なぜDSの2文字がこれに?」と賛否両論が巻き起こったものだが、あれから3年経って、この国でもDSラインのコンセプトがだいぶ浸透してきたようだ。

text:森口将之 photo:長谷川徹   [aheadアーカイブス vol.128 2013年7月号]
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アヴァンギャルドのベンチマーク

アヴァンギャルドのベンチマーク

そのコンセプトを簡単に言えば、独創と革新。つまりシトロエンのDNAを結集したモデルであり、既存の自動車にはない新しい価値を創造していくサブブランドである。だからライバルのミニやフィアット500とは一線を画した、「アンチレトロ」というコピーを掲げてきた。

今回発表されたDS3カブリオも、その個性を反映したオープンモデルと言える。なにしろフルオープンではない。ドアやサイドウインドーは残し、ルーフとリアウインドーだけ開閉するスタイルを採用したからだ。

シトロエンは名車2CVや、それの復刻版と言えた旧型C3のプルリエルなどで、同様のボディを数多く手掛けてきた。でも彼らによれば、このスタイルは伝統の産物ではない。DS3のエクステリアの見せ場であるフローティングルーフとシャークフィンを残すために、こうしたという。

しかも細かく観察していくと、このスタイルにしたメリットは数多く存在することに気付く。

まずはソフトトップがなんと120㎞/hまで開閉可能なこと。つまり日本の法定速度内ならいつでも開け閉めできる。約16秒で作動が完了するというスピードともども、天候の急変が目立つ昨今の日本ではありがたい。しかもボディの補強が最小限ですむ。DS3の場合、同じエンジンを積むハッチバックの20㎏増でしかない。

室内や荷室空間がハッチバックとあまり変わらないことも長所。キャビンはこのクラスのオープンモデルでは唯一の5人乗りで、後席にも身長170㎝の僕が楽に座れる。荷室容積は230ℓで、こちらもクラス最大だ。

そして極めつけはカラーコーディネイト。ボディとルーフで色が異なるのはハッチバックと同じだが、ルーフキャンバスにブラックとブルーの他、DSエンブレムをモチーフにしたモノグラムまで設定しているのだ。もしフルオープンでモノグラムを導入したら、バッドセンスのカタマリだろう。ルーフ限定だから粋に見えるのだ。

フルオープンでないから手にできる世界を提示したDS3カブリオ。まさに逆転の発想であり、新しい挑戦と言える。

他にも上にスライドするように開くトランクリッド、光の枠が飛び出してくる3Dタイプのテールランプなど、シトロエンらしい驚きがいっぱい。なのに価格は 311万円と手が届きそうな場所にいるところが、自由・博愛・平等の国で生まれたクルマらしい。

上方にスライドするトランクリッドはぎりぎりの縦列駐車でも開くようにという発想から生まれたそう。テールランプには3DのLEDコンビネーションランプが配された。
DS3と言えば多彩なパーソナリゼーションがウリ。ボディカラーやルーフのみならず、アロイホイールセンターキャップ、シフトノブなどのアクセサリーも選べる。
とりわけ目を惹くのがこの1台。白(ブラン バンキーズ)のボディに青い(ブルー アンフィニ)ソフトトップ。まるで宝石を身に着けるように心をときめかせてくれる。
開発にあたってはハッチバックモデルの独創性とスタイリッシュなデザインを継承することが最も重要視された。「カブリオであっても、大事なのはDS3であること」だという。
DS3モノグラムがプリントされたソフトトップ。大変コストが掛かるそうだが、いかにもDS3らしいこだわり。シックでさりげない。こちらも気になるモデルだ。

シトロエンDS3 CABRIO(スポーツシック)

車両本体価格:¥3,110,000 
排気量:1,598cc
最高出力:115kW(156ps)/6,000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kg-m)/1,400-3,500rpm
お問い合わせ:シトロエン コール TEL.0120(55)4106

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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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