クルマ好きを増やすカーシェアリング

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オーストリアの首都ウィーンで、「car2go(カーツーゴー)」を使ってきた。car2goとは、ダイムラーがスマートを使って行うカーシェアリングのこと。42ページで紹介しているように、日産自動車が10月から横浜市で「チョイモビ ヨコハマ」(*)を始めるなど、国内外で自動車メーカーによるカーシェアリングが増えている。

text / photo:森口将之 [aheadアーカイブス vol.133 2013年12月号]
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クルマ好きを増やすカーシェアリング

クルマ好きを増やすカーシェアリング

car2goはパイオニア的存在で、2008年にスタートし、現在25都市で展開している。

「自動車メーカーがシェアリングを始めたら、販売台数が減っちゃうんじゃないの?」と思う読者がいるかもしれない。そもそも愛車という表現があるぐらいで、所有してこそ魅力が分かると考えている人も多いだろう。僕もその気持ちが理解できないでもないので、機会を見つけて利用してみたというわけだ。

car2goの利用には会員登録を行い、専用カードを発行してもらえばOK。使用するスマートは白とブルーの2トーンなので一目瞭然だ。会員カードをウインドスクリーンにタッチしてロックを解除し、インパネ中央にあるモニターに暗証番号を打ち込むなど、簡単な手続きを行えばスタートできる。

一部の都市ではEV仕様も導入しているが、ウィーンのcar2goはガソリン車のみ。それでも新鮮な体験だった。 理由は借りた場所に戻す必要がなく、決められたエリア内の駐車場ならどこでも乗り捨て可能な「フリーフローティング方式」だから。自分の意志でどこでも行けるという、自動車の魅力が存分に味わえるのだ。さすがはガソリン自動車を発明したメーカーである。
car2goの最大の利点は環境に優しいこと。超小型のスマートを使っているから温暖化防止になるし、渋滞も減る。しかも少ない出費でクルマが使える。ウィーンを例に取ると、登録料金19ユーロ、利用料金1分間0.31ユーロだ。30分×10回使っても、登録料金と合わせて112ユーロ。1ユーロ135円で換算すると約1万5000円ですむ。

クルマは高い買い物だ。車両代の他にガソリン代や駐車場代、税金が嵩むし、任意保険はリスク細分型が浸透した結果、若い人では年間数十万円という金額になることも。それに比べると、カーシェアリングははるかに敷居が低い。

ダイムラーではcar2goを導入した理由のひとつとして、「若者のクルマ離れ」を挙げている。クルマ離れは日本に限った話ではない。問題解決のためには、もちろん魅力的なモデルを作ることも重要だけれど、クルマの素晴らしさを安価に体験できる仕組みも大切だ。

car2goでクルマの楽しさを覚えた人が、購入に移行する可能性は十分ありそうだし、オープンスポーツカーが欲しい人も、足グルマをcar2goに任せれば、1台で大丈夫と思うはず。そう、カーシェアリングには夢へのファーストステップという意味も込められているのだ。


*横浜市が「低炭素交通プロモーション」の一環として日産自動車と取り組む、超小型EVによるカーシェアリング

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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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