フォルクスワーゲン+オジエ時代の到来

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WRC第11戦ラリー・ド・フランスは今年のWRCを、そしてこの10年のWRCを象徴する1戦となった。9年連続王者セバスチャン・ローブが引退し、そのローブの後継者といわれながら結果的に宿敵となったセバスチャン・オジエが初タイトルを獲得。時代の大きな変化がふたりの故郷フランスで同時に起きたことに、何か運命的なものを感じる。

text:古賀敬介 [aheadアーカイブス vol.132 2013年11月号]
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フォルクスワーゲン+オジエ時代の到来

フォルクスワーゲン+オジエ時代の到来

▶︎ラリー・ド・フランスの舞台となったのはワインの名産地アルザス地方。収穫期のブドウ畑をオジエのフォルクスワーゲン・ポロR WRCが駆け抜ける。ポロR WRCは300馬力以上を発する1.6リッター4気筒ターボエンジンを4WDの車体に搭載した、WRCのトップカテゴリーカー。レースならばF1に相当するマシンだ。


今年からWRC参戦を開始したフォルクスワーゲンと共に、オジエは順調に勝利を重ねてきた。もともとテクニックとスピードはローブに匹敵するレベル。そのオジエが、潤沢な資金を誇るフォルクスワーゲンと組んだ時点で成功は約束されたも同然だった。

問題はマシン、ポロR-WRCが最初から高い性能と信頼性を発揮できるかだったが、フォルクスワーゲンは完璧な仕事で不安を払拭。オジエは連戦連勝でタイトル獲得への最短距離をまい進した。

順風満帆のオジエがひとつだけ気にしていたのはローブとの勝負だ。今季ローブはセミリタイアを表明し4戦にしか出場しない。オジエにとってローブはかつて雲の上の存在で、やがて同チームで倒すべき対象となり、そして政治的圧力で自分をシトロエンから追い出した相手である。

所属チームが変わり以前のような確執は溶融したが、ローブとの勝負に勝ち自分が引導を渡すことにより、オジエは最高のカタルシスを得ることができるのだ。

王座獲得には1点加えれば良い状況で、オジエはボーナスポイントがかかる最初のステージであっさりとチャンピオンを決めた。

しかしオジエはそれによって集中力を失い優勝争いから脱落。一方、ローブも久々の実戦ゆえに圧倒的な速さを示すには至らず。新旧世界王者はラリー序盤、らしからぬ順位に沈んだ。

しかし中盤、走りと気持の切れ味を取り戻したふたりは本来の力を発揮、優勝に手が届く位置で最終日をスタートした。オジエは今季ローブに対し1勝2敗。このラリーでローブに勝てなければタイトルの価値が大きく下がる。そしてローブも、選手権を追わぬ以上優勝以外は眼中にない。降りしきる雨の中、ふたりのセバスチャンの意地と意地がぶつかりあった。

先にスタートしたオジエはライバルが唖然とするようなタイムを刻み逆転優勝。そしてローブはスタートから約1㎞でコースを外れ崖下に転落。9年連続王者は最後まで勝負にこだわり、そして潔く散った。

オジエは力でローブをねじ伏せ、自分こそが新時代の王にふさわしいことを結果をもって証明した。しばらくの間WRCは彼の時代が続くだろう。しかし、そのオジエも気を緩めることはできない。

なぜなら次世代の若手が急激に力をつけてきているからだ。その代表格がベルギー出身のティエリー・ヌービル。まだ1勝も挙げていないが速さはすでにオジエを脅かすほど。25才の若者はポップなデザインの眼鏡の奥で、打倒オジエに瞳を爛々と輝かせている。
▶︎地元フランスで優勝し新王者となったオジエ。シトロエンに才能を見出されてジュニアチームで経験を積み、やがてローブのチームメイトに。しかしナンバー2の立場に我慢できず2011年シトロエンを離脱、今年から参戦を開始したフォルクスワーゲンと契約した。

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