スノーモービルメーカーが作ったスリーホイラー カンナム・スパイダー

アヘッド カンナム・スパイダー

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ここ数年、高速道路や街中で一風変わった3輪の乗り物を目にする機会が増えてきた。その多くが「スリーホイラー」、または「トライク」等と呼ばれる新しいコミューターだ。2輪でも4輪でもないこの種の乗り物は、サイドカーにやや近い。

text:伊丹孝裕 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.137 2014年4月号]
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スノーモービルメーカーが作ったスリーホイラー カンナム・スパイダー

スノーモービルメーカーが作ったスリーホイラー カンナム・スパイダー

しかし、その成り立ちは根本的に異なっており、道路交通法においても道路運送車両法においても別の乗り物としてカテゴライズ。サイドカーがあくまでも2輪なのに対し、スリーホイラーは4輪に分類されるのが最大の違いだ。

一部の例外を除き、サイドカーとは一般的なバイクに後付けの側車を備えたもの。言わば「2輪+1輪=3輪」という考えに基づいた設計なのに対し、スリーホイラーは、「4輪–1輪=3輪」というのが基本概念となる。

同じ3輪ながら、設計や構造、保安基準等から見ても、そのアプローチがまったく異なるため、サイドカーを運転するには自動2輪免許を、スリーホイラーには普通自動車免許を必要とし、言わばその行為はライディングというよりもドライビング。そういう意味で、オープンカーの一種と呼んでいいかもしれない。

CAN-AM SPYDER RT LTD

CAN-AM SPYDER RT LTD
エンジン形式:ロータックス製水冷直列3気筒
排気量:1,330cc ボア×ストローク:84mm×80mm
最高出力:115ps(85.8kw)/7,250rpm
最大トルク:130.1Nm(96lb-ft)/5,000rpm
全長:2,667mm 全幅:1,572mm 全高:1,510mm
ホイールベース:1,714mm 
最低地上高:115mm シート高:772mm 
乾燥重量:459kg
燃料タンク容量:26ℓ 収納スペース容量:155ℓ
トランスミッション: 6速セミオートマチック後退ギア付
フロントタイヤ:165/55R15×2 リヤタイヤ:225/50R15
価格:¥2,991,600(税込)


そんなスリーホイラーの中でも、最も4輪的で先進性に富んでいるのが、BRP社のカンナム・スパイダーだろう。

同社は、カナダを拠点に水上オートバイやスノーモービルを生産しているメーカーだが、その技術を活かしてスリーホイラーも開発。2007年に初代モデルを完成させ、以来、世界各国ですでに6万台以上の販売実績を記録しているという。

ここで紹介するカンナム・スパイダーRT LTDは、その最新型であり、エンジンを筆頭にあらゆる部分が刷新された最上級仕様となる。
まず外観上の大きな特徴は、前2輪後1輪の構造を持っていることで、これによってコーナリング時の安定感が増し、転倒のリスクが大幅に軽減。しかも、ABSトラクションコントロールスタビリティコントロールといった数々の電子デバイスも備えられ、ブレーキやトルク、イグニッションが状況に応じて自動的に配分されるなど、徹底した車体姿勢の安定化が図られているのだ。

もちろん快適装備にも抜かりはない。ハンドル操作を軽減するパワーステアリングにクルーズコントロール、電子制御式サスペンション、グリップヒーター、電動式ウインドシールド、オーディオ、バックギア・・・・・・と、むしろそこにはちょっとした4輪を凌駕する空間が広がっている。

内包されるエンジンは、最高出力115psを発揮する1330ccの並列3気筒だ。スポーツバイクほどではないが、車重は一般的な軽自動車と比較しても1/2程度のため、かなり鋭い加速力を披露してくれる。

そのパワーを伝達する6速のセミオートマチックは、左手に備えられたボタンを押すだけでギヤを任意に選択でき、シフトアップにもダウンにもクラッチ操作は不要。つまり、4輪のAT限定免許でも運転できるのも大きなポイントである。

こうした装備の数々によって運転は基本的にイージーだが、旋回時にはちょっとしたスポーツ性が顔を覗かせる。その時に必要なのは体重移動ではなく、ハンドルさばき。操作自体は4輪のように曲がりたい方向へハンドルを向ければいいのだが、車体の姿勢上、旋回Gを感じやすいことと、路面からのキックバックを受けやすいため、コーナリングでは4輪よりも2輪に近いエキサイティングさが楽しめる。

2輪に興味があっても免許を持っていなかったり、体格や転倒の不安から二の足を踏んでいる人はきっと多いだろう。それでもどこかで「ライダーの爽快感を感じてみたい」と、そんな憧れを抱いていたドライバーには、BRP社のスリーホイラーという選択肢があることを覚えておいて欲しい。

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。
レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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