小沢コージのものくろメッセ その8 黄色いマークXが物語るもの

その8 黄色いマークXが物語るもの

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具体的には今年の年始ぐらいから話題になったピンククラウンの二番煎じである。トヨタはこれで結構本気で'80年代的デートカーの再来を狙っているようで、一瞬「こんなクルマを欲しがる人、本気でいるんかいな?」とも感じたが、それなりに時代を浮き彫りにした企画であるとも思った。

というのも今までにない色を使った話題作りへの挑戦であると同時に、根底に流れる漠然とした〝クルマへの諦め〟も感じるからだ。

これまでクルマは、基本的には今までにない斬新なデザインなり、刺激的な走りなり、実のあるもので革新性を訴求してきた。だが、これは明かなクルマのファッション化であり、インパクト至上主義化だ。

昔の美人女優が年を重ねて、妙にハデな服を着てくるような状況とも似通っていて、マークXやクラウンも遂にその領域に来たと不肖オザワは感じてしまったのだ。

実際、レクサスNXやマツダ・デミオに黄色い仕様はなく、それはある種の劇薬とも言える。え? こんなの乗れないよ! という反応を覚悟でトヨタ開発陣が提供してきた、半分毒のようなクルマであり、トヨタもおそらくそれを覚悟している。

考えてみれば4ドアセダンは、ずっとクルマの中心であり、ど真ん中を走ってきた。1955年に生まれた初代クラウンに始まり、'60年代'70年代とほぼずっとセダンの時代が続いた。

しかし、'80年代途中からスペシャルティクーペが話題となり、'90年代にRV、ワゴン、ミニバンと一通りボディ形式を消化すると、日本人のクルマ熱は徐々に底冷えし、今では軽自動車やコンパクトハッチバックがすっかりメインになった。

それはある種の成熟化であり、合目的判断だ。人が年を取ってムチャ飲みをしなくなり、焼肉食べ放題に行かなくなり、街角でナンパしなくなるようなもの。一見無駄なこと、効率の悪いこと、疲れることをしなくなるのにも似ていて、やはり日本のクルマ社会は歳を取ったわけだ。

比べると中国、ASEAN、インド、ブラジルは基本セダン流行りでまだまだ若い。つくづくセダンの存在は、その国のクルマ社会の若さを示しているのだと思う。

正直、イエローのマークX、ピンクのクラウンは、懐かしくもどこか切なく痛々しい。バックグラウンドにはなぜかユーミンが流れていて、そばにはボディコンスーツを着た昔のアイドルタレントが踊っている気がする。

だが、自分自身40代も後半になると、それを否定できないし、未だにタイトなブルージーンズをピシっと履ける自分に酔うのと近い感覚がある。

マークXイエローレーベル。それは確かに時代と自分を映す鏡だ。これに貴方は本気で乗れるのか? カッコ良いのかカッコ悪いのか? 一度自ら行って、ショールームで確かめてみてはいかがだろうか。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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