東京エスプリ倶楽部 vol.6 コワモテを求める時代

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vol.6 コワモテを求める時代

ボディ色がシルバーだと、C-HRは映画「ガメラ2」に出てくる宇宙怪獣、小型レギオンみたいで、なんでこういう戦闘マシンみたいなカタチが支持されるのだろう? と私は訝った。

機能主義とは反対の、SFチックなハリボテ的造形、その意味ではポストモダン・デザインともいえるこの小型クロスオーバーは、昨年12月の発売以来、1ヵ月で4万8,000台を受注した。月販目標6,000台の8倍にもなる。超人気ぶりではないか。

考えてみたら、最近のクルマはどれもこれも顔がコワい。エヴァ初号機みたいな顔がいまやフツウだ。環境フレンドリーをウリにするプリウスだって、代を重ねるたびにエコよりエゴが強まった感がある。

同じくトヨタのアルファードなんて、本来は和やかなファミリーカーのはずなのに、鎧のようなグリルをつけている。あのグリル、光の加減でクロコの本革みたいに見える、ということに最近気づいた。

だからある種の人たちに人気がある……のかもしれない。軽の販売台数No.1のホンダN-BOXにしても、路上で見かけるのはクロームのグリルを貼り付けたカスタムが多い気がする。

顔がコワくなっているという点では外国車も同じだ。昨年はランボルギーニ・ミウラの誕生50周年ということで、ミウラからカウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴにアヴェンタドールまで縦に並んだ写真を見かけた。

1966年発表のミウラのなんとエレガントなことか。ライト周りの付けまつ毛のなんとチャーミングなことでしょう。'71年に発売になったカウンタックだって、実は微妙なカーブがあってセクシーで、アヴェンタドールみたいにミサイルで武装している宇宙戦艦ふうではない。

自動車は自我を投影し拡大する機械である。2001年の9.11以来、世界は戦争状態にある。日本だっていろいろあってタイヘンなのはご存知の通りだ。だから、他者を拒絶し威嚇するようなコワい顔が、意識してか無意識にか求められているのではあるまいか。不安だから強面に守られたい。

SUVの人気が高いのは、単に機能的だからではなくて、ご先祖が軍用車のジープに遡ることに象徴される。つまり、準戦争状態だから準軍用車の需要があるのだ。というのが筆者の見立てなのだけれど、証拠はないです。

これからの4年間、世界はプロレス化する。世界一のプロレス団体に出演していた男が超大国の大統領に就任したのだから当然だ。プロレスというのは楽しいショウなのに、いまのところヒールだけが暴れまわっていて、ベビーフェイスがいない。世界はヒーローを待っている! あ、C-HRの人気はそれだったのか……。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

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