東京エスプリ倶楽部 vol.8 イタリアンベーシックカーとは

アヘッド 東京エスプリ

vol.8 イタリアンベーシックカーとは

翌日、レンタカーの窓口に行ってみると、ちゃんとパンダのカギが渡された。Sicily by carというローカルのレンタカー会社だけれど、走行距離は2,000㎞台と新しかったし、イタリアでイタリア庶民のクルマが借りられたことがうれしかった。

4年前、オランダで一番安いレンタカーを借りたときはヒュンダイi10だった。そういうこともある。でも、ヨーロッパではヨーロッパ車に乗りたいのが人情であるまいか。

日本仕様のパンダは現在875ccのツインエア、すなわち2気筒ターボしかないけれど、借りたパンダは1.2ラウンジの5MTで、イタリアでは骨董品の4気筒FIREエンジンが健在だった。

排気量1,242cc、最高出力たったの69ps。走り始めてすぐの印象は、ガタガタゆさぶられて乗り心地は悪いし、遅いのはいいとして、高速ではいまいちまっすぐ走っている感が薄い。ヒュンダイの方がいいクルマだったかも……とチラと思った。

ローマ空港からフィレツェまではおよそ300㎞、長靴型のイタリア半島を縦に貫くアウトストラーダ・デル・ソルA1一本道だけれど、A1はアペニン山脈の一部とかぶる。山あり谷ありカーブあり。

パンダで追い越し車線を走るのは大それたことで、大型トラックを抜きにかかっていると後方からアウディA3が猛スピードでやってきてパッシングする。A5やQ5、日産キャシュカイ等々にも煽られた。そのたびに逃げるように走行車線に戻る。パンダはつらいよ。

と途中までは思っていたのだけれど、パンダは高速巡航がじつは得意だった。100㎞/hは5速トップで3,000rpm。現代の基準をもってすれば超高回転ながら、130㎞/h巡航は意外と静かで、乗り心地も快適、ちゃんとまっすぐ走る。法さえ許せば150㎞/h巡航だって可能だ。コーナーではものすごくロールしつつ踏ん張る。ロード・ホールディングがイイ。

5MTを駆使して、エンジンを6,000rpmまで回してやれば、けっこう活発に走るし、低速トルクも十分。フィレンツェの石畳ではサスペンションがしなやかに動き、小さなボディのおかげで旧市街の狭い道をスイスイ行ける。

月曜日にピサの斜塔に寄り、そのまま南下して海側の道でローマまで戻って空港近くの安宿で1泊し、火曜日の朝返却した。814㎞走って燃費は14㎞/ℓ。いまさらながら、イタリアにおけるベーシック・カーとは、都市内を走るものではなくて、都市から都市を駆けまわるダイナミックな乗り物なのだった。パンダ、見直した。

----------------------------------------
text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

アヘッド ロゴ

この記事をシェアする

最新記事

     
アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives