ひこうき雲を追いかけて vol.59 踏み間違えるのは高齢者だけじゃない

アヘッド 景色

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恥を忍んで言うと、過去にペダルの踏み間違いをしたことがある。クルマを運転しはじめてまだ間もない頃、お台場のビルの駐車場にクルマを停めようとバックしたとき。アクセルとブレーキを踏み間違えた。その頃はまだバックする時の自分なりの方法が確立されていなかった。

text:ahead編集長・若林葉子 [aheadアーカイブス vol.174 2017年5月号]
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vol.58 踏み間違えるのは高齢者だけじゃない

vol.58 踏み間違えるのは高齢者だけじゃない

「バックのときは運転席と助手席の間、つまりクルマの中央から後ろを見ると、クルマの中心線が分かるからそうするのが良い」という人もいれば、「窓から後ろを覗くのがいい」という人もいて、バックするたび真ん中から後ろを見てみたり、ドアを開けて白線を見たり。

これらの方法が体の小さい私には向かないと分かるまでには少し時間が掛かった。

体をねじると足がペダルから離れてしまうし、顔の向きを変えるとハンドルを切るときに左右の感覚が混乱したりする。今は体の向きは変えず、左右のミラーだけでバックするようにしている。

先日「マツダ安全取材会」に参加した折の資料「高齢運転者に係る死亡事故の特徴について」(出展:警察庁交通局・H29年2月28日)によると、死亡事故の要因比較において、75歳以上の運転者の件数が、75歳以下の運転者の件数を上回るのは、「操作不適(ハンドル操作、ブレーキ・アクセルの踏み間違え)」のみで、「安全不確認」「漫然運転等の前方不注意」「脇見」「判断の誤り」の項目では、いずれも75歳以下の件数の方が多いことが分かる。

またペダル踏み間違い事故件数(H22〜27年、交通事故総合分析センター「交通事故統計データ」)に限って見てみると、29歳以下の件数が70歳以上を上回っているのだ。

マツダ安全取材会では、実際に私も、体や足に重りを付けたり、視野が狭まるメガネを付けたりして、高齢者の体の動きを体感した。装備を付けて椅子から立ち上がった瞬間、すでにバランスを崩してよろめいた。

みな一様にちょっと猫背になっている。その状態で運転席に座り、よっこらしょと足首を持ち上げブレーキペダルとアクセルペダルの踏み替えをしてみる。視野も狭まっているから、これはなかなか大変だ、と実感した。

マツダはドライバー自らが正しい「認知」「判断」「操作」ができることを安全・安心の基本要件と考えて、クルマ全体を根本的に見直した商品開発を行ってきた。

自然に足を伸ばした位置にペダルを配置する、交差点などにおいて危険を認知しやすい前方視界を確保することなどに加えて、衝突被害軽減ブレーキ、AT誤発進抑制制御などの先進安全技術を2017年度中にほぼすべての新世代商品に搭載すると発表した。

かつて子供の視野を体験するチャイルドビジョンという装置を付けてみたことがあった。子供も高齢者同様、私たちが思っているほどには見えていないのだ、ということを改めて思い起こした。

クルマの安全技術は進化している。そのクルマを運転する一人のドライバーとして、人の行動特性の冷静な分析と他人の立場に立てる心の余裕を持ちたいと思う。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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