リ・スタートしたレクサスLS

アヘッド レクサスLS

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1989年をピークにした「バブル景気」はすごかった。とくに都市圏の「土地バブル」は凄まじく、「山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買える」といわれたほどだった。そんなタイミングで日本メーカーはレクサス('89年)、インフィニティ('89年)、アキュラ('86年)を(まずは北米市場に絞って)誕生させた。

text:岡崎宏司 [aheadアーカイブス vol.182 2018年1月号]
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リ・スタートしたレクサスLS

リ・スタートしたレクサスLS

●NEW LEXUS LS 
車両本体価格:¥9,800,000〜(LS500、税込)
エンジン:V型6気筒インタークーラー付ツインターボ
排気量:3,444cc 
最高出力:310kW(422ps)/6,000rpm 
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1,600〜4,800rpm

資金が潤沢にあったことも理由だろうが、「利益の厚いプレミアム・セグメントへの進出が迫られていた」ことが主たる理由だ。

当時の日本車は北米市場を中心に海外販売は好調だったが、「安くて、信頼性が高く、サービスがいい」といったところが好調の理由。つまり薄利多売の商売をしていた。しかし、急速な拡大を続ける日本車から地元自動車産業を守るため、北米や欧州では輸入台数規制を導入。

そんな状況下での利益の確保には利幅の厚い高級モデルが必要だったということだ。
トヨタ・初代セルシオ(初代レクサス・LS400、1989〜1994年)

さて、本題に話しを進めよう。

初代LSは、レクサス・ブランドの顔になるべく、さらにはドイツのプレミアム御三家のクルマとも並び語られるようなクルマにすべく、企画され、開発された。

初代LSの開発を指揮されたのは鈴木一郎主査。強烈な前進力、突破力を持つ方だが、新参者の大きなハンディを乗り越え、「世界の高級車市場で戦えるクルマ」作りに邁進された。私は開発過程であれこれ接触機会があったが、すごい方だった。初代LSが今なお敬意を持って「鈴木LS」と呼ばれ続けているのも当然のことだ。

初めての国際試乗会はドイツで行われたが、LS400は驚きと賞賛の声に包まれた。ホテルを出るとすぐアウトバーンに乗る。当時は文字通りの速度無制限時代。ドイツ勢が勝ち誇ったように追い越し車線を200㎞/h オーバーで突っ走っていた。しかし、鈴木LSは負けていなかった。高速レーンを悠々と、しかも経験したことのない静粛性を保ちながら走り抜けたのだ。燃費も優れていた。

こうした話はすぐ世界に拡がり、多くの高級車メーカーがLSを買い入れ、試験し分析した。

そして漏れ伝わってきたのは、やはり「驚きの声」だった

北米を中心に市場もすぐ反応した。シャンパンをなみなみと注いだグラスをピラミッド状に重ねてボンネット上に置き、エンジンを掛けても、シャンパンに小さなさざ波が起こるだけ…そんなCMも大いに話題になり、LSの、レクサス・ブランドの認知度は短期間に北米市場に広がっていった。その影響でLS以外のモデルも受け容れられてゆく。初代LSの功績は偉大だった。
トヨタ・2代目セルシオ(2代目レクサス・LS400、1994〜2000年)
トヨタ・3代目セルシオ(3代目レクサス・LS460、2000〜2006年)
4代目レクサス LS460(2006〜2017年)

2代目、3代目も順調に進化したが、初代の存在感があまりに大きかったので、話題性という点では特記するほどのことはない。

4代目LS('06年)からはトヨタ・セルシオとの兄弟車の関係は終わり、レクサスのフラッグシップとして独自の道を歩み始めた。

4代目の存在感ある姿はNY辺りでも目立つようになっていった。医者とか弁護士とかIT系とか…インテリ階層に支持者は多いようだ。そういえば、アメリカの人気TVドラマ「SUITS(スーツ)」で、NYの一流弁護士がショーファードリブンのLSを使っている設定も頷けるし、シリコンバレーで働く人たちの多いサンフランシスコでLSを多く見かけるのも頷ける。
▶︎ショーファーカーに加え、ドライバーズカーとしての走りも備わったNEW LSだが、ひとたび乗り込むとトヨタのフラッグシップセダンにふさわしい、うっとりとするような内装に目を奪われる。自動運転につながるLexus CoDriveや、衝突回避を支援する先進の予防安全システムなども搭載されている。https://lexus.jp/models/ls

最新の5代目でいちばん大きく変わったのはシックスライトのクーペ的プロポーション。3ボックス・セダンに別れを告げている。ショーファードリブンカーからドライバーズカー方向に大変身したということだ。

5代目LSを開発するに当たり、豊田章男社長からは「初代LSの衝撃を超えるクルマを作って下さい」との命が下ったという。ちなみに、'89年に大志を抱いてスタートしたレクサスだが、長い間、積極的な活動はなかった。 

しかし2012年、豊田章男社長が「レクサス・インターナショナル」を立ち上げ、「プレミアムブランドとして再チャレンジする」と号令を掛け、自ら先頭に立ったことで劇的な変化が起こった。トヨタとのバッジエンジニアリング車ばかりと揶揄されてきたモデル構成も大きく変わった。

4代目LSと5代目LSの違いは、新しい地平へと舵を切ったレクサスを象徴しているかのようだ。

新型LSが若々しく軽快になったのは姿佇まいだけではない。走りもまた若々しく軽快だ。欧米のインテリ層VIPたちには「運転好き」が多いと聞くが、新型LSはその辺りにもしっかり目を向けている。同時に、運転支援システム等でも最先端を走る。

深いワインカラーのようなボディカラーでも選べば、ハリウッドのレッドカーペットに乗り付けても負けないような華もある。

そんな新型LSをひと言で括るなら、「クール!」といったことになるだろう。

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text:岡崎宏司/Koji Okazaki
1940年東京生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦。卒業後は自動車雑誌の編集者となる。
後に自動車評論家として独立。現在もモータージャーナリズムの第一線で活躍している。
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