ジュネーブショーとEVの新境地

アヘッド ジュネーブショー

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ジュネーヴ・ショーでの日産自動車は、驚くほどのEV押しだった。目立つエリアにあるのは電池とモーターで走るクルマばかり、プレスカンファレンスで最も華々しくアナウンスされたのは2018-19シーズンからフォーミュラE選手権に参戦すること、そして同じフロアのどこからでも見えるくらい目立つよう展示されたのも参戦時のカラーリングが施されたマシン、といった具合だ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.185 2018年4月号]
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ジュネーブショーとEVの新境地

ジュネーブショーとEVの新境地

昨年秋に参戦発表を済ませているにも関わらず再度ジュネーヴでアナウンスするのは、世界中のメディアへ意志を伝達するのに最も適した機会だからだ。ライバルとなる他メーカーが勢揃いする場所でもある。

2010年に世界に先駆けてピュアEVの量産を開始した日産の、EVを使ったモータースポーツへの真剣味を世界に示すものであり、同じようにEVという乗り物の可能性を多面的に追求するライバル達への技術的な宣戦布告でもある、ということだ。アウディ、DS、ジャガー、参戦を表明しているBMW、ポルシェ、メルセデス。F1より参戦メーカーの顔ぶれが豊かである。

それは彼らがEVをスポーツできる乗り物=走らせて楽しい乗り物として捉え、その分野での発展を視野に入れている証だろう。技術の進化も含め、そのガチな戦いは色々な意味で楽しみだ。
最近、日産セレナe-POWERに試乗する機会があった。e-POWERはピュアEVではなく、発電専用のガソリン・エンジンを積み、外部充電を要さずバッテリーとモーターで走れる仕組み。実はそれがかなり楽しかった。高級感のある滑らかな走り。力強い加速と感覚から外れない減速。

アクセル・ペダルひとつでスムーズに発進から停止までができ、加減速時のトルクの立ち上がり方も抜き方も、制御は並みのドライバーより遙かに繊細で巧みだ。技術は日々素晴らしく進化してる。この仕組みを発展させて積んだスポーツカーを作って欲しいと感じたほど。

僕は味わい深い内燃機関を強く愛する古いタイプのクルマ好きだ。が、最近ようやく〝EVもいいかも〟と素直に思えるようになった。技術が飛躍的に進んだことを知り、触れるチャンスも増え、それらを下地に別カテゴリーの乗り物と意識できるようになったことが大きい。

蕎麦とパスタの美味さに優劣をつけようとする無意味さにやっと気づいたわけだ。そうなるとEVという乗り物は新鮮で、内燃機関とは異なる良さや意外な楽しさに次々と目が向く。

ニワカ経験者は語る──が許されるなら、蕎麦とパスタを較べてる人に、代わりばんこに試食してみることをぜひオススメしたい。少なくとも自動車のこの先の楽しみ方のイメージぐらいは湧いてくるはずだから。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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