日産リーフがもたらしたもの

アヘッド リーフ

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「電気自動車に乗る時はね、いつもエンプティーランプが点灯しているような気分になる。だって、『今ここで充電がなくなったらどうしよう』って、そのことばっかり気になっちゃうもんだから、常に充電残量をチェックして、ドライブを純粋に楽しめない。クルマ好きにとって、そしてドライブ好きにとって、コレが一番の苦行。だから、電気自動車が完全に普及するには、まだまだ時間がかかると思うんだよね」

text:今井優杏、ahead編集長・若林葉子 photo:鈴木広一郎 [aheadアーカイブス vol.181 2017年12月号]
Chapter
日産リーフがもたらしたもの
新型リーフに乗ってみた!
まだまだある!100%EV。

日産リーフがもたらしたもの

そう言った人がいた。そしてその何気ない会話を今でも覚えているのは、その台詞に私自身、深く納得したからだし、言い得て妙だと思ったからだ。でもとある別の友人はこうとも言う。

「一回電気自動車を持ってしまえば、こんなに素晴らしいものはない。だって毎日、普通に家に帰ってコードを差し込めばそれで終了。ガソリンスタンドに行かずとも、翌朝には満充電で走り出せるんだから! これは驚異的な時短だし、しかも電気はガソリンに比べて驚異的に安い。なによりモーターのトルクフルな加速はとてもエキサイティングだしね」

そう、もちろんそれも知っている。リーフ含め、今販売されているピュアEVだけをカウントしても、それらは決して退屈なだけのエコカーではない。内燃機関を持つ自動車にはない、鮮烈な〝愉しさ〟をも持ち合わせているのが今のEVだ。

そんなふたつの意見の、私たちはちょうど中庸でそれを観ている。このブーム(と敢えて言うけれど)がどこに着地するのか、それを見守っている。しかし、初代リーフはここに〝参加する〟、というカードをユーザーに提供した。つまり〝どんなもんだか乗ってみたいな〟的な人々を驚異的な低価格で引き込んで来たのだ。

さらに、これはメーカーにとって有り難いことではないかもしれないけれど、今、中古市場には初代リーフがかなりの安値、場合によっては200万円を切る価格帯で出て来ている。これもむろん元値が安くないと叶わないことであって、つまりリーフはあらゆる意味でEVの玄関口として広い門戸を一般家庭に開いたのだ。

そして門戸を開くことで得た販売台数およびユーザー数は、そのまま膨大なデータとなって日産の、ひいてはEV技術のベーシックを進化させる存在になり得る。手の届かないものをお茶の間に提供した、何よりもそれがリーフのもたらしたイノベーション、そして功績だと思う。

さらに日産は先日、今年末から開幕するフォーミュラEのシーズン5に参戦することを発表した。レースからしか得られないデータを生かして、日産はリーフのまさに葉を、ひいては枝を幹を、大きく育てることになるのだろう。
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text:今井優杏/Yuki Imai
レースクィーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリスト。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等で活躍している。バイク乗りでもあり、最近はオートバイ誌にも活動の場を広げている。

新型リーフに乗ってみた!

e-Pedalって?

ブレーキペダルをほとんど使わず、発進−加減速−停止までが、アクセルペダルの操作だけで可能な機構。アクセルペダルを戻すとブレーキングと同じように減速し、離しきると完全停止し、上り下りとも約30%の勾配でも停止を保持してくれる。

減速時と停止時にはブレーキランプも点灯するので安心だ。街中や渋滞時に頻繁な踏み替えをしなくて済むのは、使ってみるととても楽だし、ワインディングや高速道路ではメリハリのきいたドライビングを楽しむこともできる。

ただ、「簡単か」というとそういうわけでもなく、思っている以上に繊細なアクセルワークが求められる。ラフな操作をすると前後に体が揺られる。逆にいうと、それも含めて新しいドライビング感覚を楽しめるクルマだとも言える。あえて不満点を挙げるとすると、e-Pedal選択時はクリープ機能がないことくらいか。

読者にもぜひ一度体験していただきたい。

シートヒーターがいい!

“暖房”が航続距離に与える影響は大きいため、少ない電力で効率的に車内を温めるヒートポンプシステム(省電力暖房システム)が採用され(グレード別設定)、暖房だけスイッチが別に設定されている。加えてちょっと感動したのがシートヒーター(前席クイックコンフォートシートヒーター付きシート)とステアリングヒーターだ。

体が直接触れる部分がぽかぽか暖かいと、暖房の設定温度を低くしても平気だし、吹き出し口からの風が当たらないので乾燥も防げて言うことなし。これら2つのヒーターはメインバッテリーとは別に設けた容量の小さなバッテリーで電力を賄っているとのことだ。他のガソリン車でもどんどん採用してくれたらいいのに、なんて思ってしまった。

印象的だったのは上記の2つだけれど、高速道路での加速にも驚かされた。周りのクルマの動きがなんだか遅いなと思っていたら、自分のスピードメーターを見てびっくり。あっという間に加速するのに、静かだから気づかない。電気の実力を実感する。

一方、3ステップの操作だけで駐車完了までアシストしてくれるプロパイロット パーキングは、日常使いできるまでには至っていないと感じた。条件の異なるいろいろな場所で試してみたが、きちんと白線がある場所は機能するものの、状況によっては作動してくれないこともある。

ドライバーがコツをつかめば、クルマにとってなるべく理想的な状況に近づけられるようになるのだろうけれど。今後の進化を期待したいところだ。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。

まだまだある!100%EV。

EVシフトが鮮明となった、と報じられた2017年の各モーターショー。未来を描いたコンセプトカー、市販に向けて開発されるモデル、市販間近なものも含めて、気になるEVを集めてみた。
BMW i Vision Dynamics
サスティナビリティを重視したブランド、BMW iの電動モデル第三弾投入を示唆したコンセプトカー。シティーカー「i3」とスポーツカー「i8」の間に位置し、BMWの中核を担うオールマイティーな電動化モデルになるだろうと言われている。名前は「i5」との予想も。ローンチは2021年。
SUZUKI e-SURVIVOR
スズキの4WD車の流れを汲んだ未来のコンパクトSUV。伝統のラダーフレームと2シーターのオープンボディ、軽量で優れた走破性はそのままに、電動化されたパワーユニットを搭載しているのが特徴。未来のジムニーか、と話題になった。
TESLA New Roadster
新型ロードスターの予約受注が開始された。2020年、まずは1,000台限定で「Founders Series」を発売。価格は25万ドルで、予約時に車両価格全額の25万ドルが必要になる。0〜96km/h加速1.9秒、最高速400km/h以上。1回充電で、約1,000kmの航続が可能。
Audi AICON
アウディが描く未来を体現した「アイコン」。完全な自動運転ができる「レベル5」の大型セダン。ステアリングホイールやペダル、スイッチ、メーター類が一切なく、あるのはディスプレイのみ!
MERCEDES-BENZ EQA
メルセデスのエレクトリックモビリティーとしてマーケットに認知されつつあるEQ。EQAは「Aクラス」EQ版である。EQブランドの市販車モデル「EQC」は2019年から製造が開始される予定だ。
RENAULT SYMBIOZ
シンビオズは未来のモビリティに対するルノーのビジョンを提示した、クルマと住宅を統合させるコンセプトカー。スマートグリッドの電力を採用し、家庭とエネルギーを共有するほか、住宅のインテリアの一部としても機能する。
TOYOTA CONCEPT-愛i
CONCEPT-愛iシリーズは、人工知能(AI)を応用し、ドライバーの感情認識や嗜好推定を行う「人を理解する」技術をシリーズ共通のコア技術として採用。人と共に成長するパートナーして新しい時代の「愛車」となることを目指したコンセプトモデル
NISSAN IMx
日産が描く未来のモビリティの世界観を体現したクロスオーバータイプのコンセプトカー。リーフに搭載されている最新自動運転技術「プロパイロット」をさらに進化させ、完全自動運転を実現する一方、自分で運転を楽しむこともできる。デザインには“和”の伝統技法が用いられた。
JAGUAR I-PACE CONCEPT
2019年前半に登場予定のジャガー初ピュアEV。「I-PACE」(写真の左)の発売に合わせ、ジャガー・レーシング、世界初となる市販車ベースの電気自動車による国際選手権「Jaguar I-PACE eTROPHY」(写真の右)の開催を発表している(フォーミュラE第5シーズンのサポートレースとして世界10都市を予定。2018年末開幕)。
MINI Electric CONCEPT
ミニ初の量産EVとなる「MINI Electric」のコンセプトカー。市販モデルは2019年から英国オックスフォード工場で生産が始まる。
VW I.D. CROZZⅡ
VW I.D. BUZZ
HONDA Urban EV Concept
2019年に欧州で市販するホンダ新型EVの方向性を示したコンセプトカー。
HONDA Sports EV Concept
EVとAIを組み合わせ、「人とクルマが”心身ともにひとつ”になれる」次世代スポーツカーのコンセプトカーだ。
GLM G4
京都の自動車メーカーGLMが手がける4ドア4シーターの次世代EVスーパーカー。「トミーカイラZZ」に続くモデルで、2019年に量産化を目指す。想定価格は4,000万円。
MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT
フロントにある1機のモーターに加え、新開発の「デュアルモーターAYC」をリアに搭載してトリプルモーター方式の4WDシステムを採用するEVのコンセプトモデル。車名には「三菱自動車独自のEVの進化形(EVOLUTION)」という意味合いが込められている。
Volks wagen e-GOLF
ゴルフのEV版である「e-ゴルフ」が先ごろ発表され、すでにインターネットの専用サイトで受注を開始した。年末から順次納車される。VWジャパンとしては4番目の電動化車両であり、初の100%EV。本誌でもいずれ詳しく紹介したい。

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