インプレッサを2台乗り継いだ後、たどり着いたクワトロシステム。V8、4.2リッター344馬力を誇る「アウディ S4 (B7)を愛車にした理由
更新日:2024.09.09
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アウディS4に乗ることになったのは、当時アウディ・ドライビング・エクスペリエンスというアウディの安全運転スクールのインストラクターをしていたことがきっかけです。当時(2007年くらい)私が関わっていたイベントでのスクールカーがS4とA6で、インストラクターとしてのトレーニングやコース設営のために、運転訓練施設やテストコース、サーキットで限界近い領域まで走らせるチャンスがたくさんあったことがキッカケで購入に至ったのです。
文・斎藤聡
文・斎藤聡
スバル・インプレッサに2台乗り継いだ...しかし、現在ではジャーマン4WDの虜に。その理由は?
当時は、スバル・インプレッサ WRXと三菱・ランサーエボリューションによるメーカーの威信をかけた、し烈な開発競争が繰り広げられている真っ最中で、私自身4WDの運転の面白さにハマっていました。実際、インプレッサを所有してだいぶ走り込んでいた経験もあって、インプレッサとランエボは世界で最も優れた4WDだと信じていました。
ところが、スクールカーでS4に乗ることになり、ドライ路面だけでなく、氷上や雪上で走らせてみると、S4の4WD=クワトロシステムが、それに負けないくらい良いことを知ったんです。セダン用ならむしろアウディの方が優れているのではないか?と思えるくらい良かった。
そんなことから、インプレッサにGC8、GDBと2台乗り継いでいたのですが、フラフラと引き寄せられるようにアウディS4を選びました。
4.2リッター、V8エンジン。燃費はどうしても良いとは言えないけれど、ただただドライブすることが楽しい
アウディに乗り換える以前の愛車、スバル・インプレッサは2Lのターボエンジンでしたが、アウディ・S4は4.2L V8。パワーとトルクはほぼ同じくらいなのですが、ターボと自然吸気エンジンの違いで、アクセルを踏んだ瞬間から発揮される大排気量エンジンならではのトルクの厚みが感じられるのもS4の面白さの一つです。燃費は日常生活で使用してみるとリッターあたり、10キロを越さないことも多くあるのでそれはちょっと痛いですが....。
V8ですから、フロントセクションが重く、かなりノーズヘビーです。そのため、普通に旋回していくとアンダーステア傾向も強く出ます。
ところが、S4の4WDの特性を理解して上手く運転してやると、アンダーステア傾向を抑えながら、かなりの領域まで気持ちよく曲がることもできるんです。特に雪道や氷上は安定性と操縦性が良い加減でバランスしていて運転しているのが楽しくてたまりません。
メカニズムオタクを唸らせる、クワトロシステム。しっかり理解してドライブすれば、どんなコーナーもなんのその
その操縦性の要となっているのが、クワトロと呼ばれる4WDシステムです。アウディでは4WDのタイプに関わらずクワトロと呼んでいますが、システムは一つではなく、車種によってそのシステムが多少異なります。私のS4は、トルセンAタイプと呼ばれるものをセンターデフに使った4WDシステムです。基本前後駆動配分は50対50で、そこから路面状況によって75対25から25対75まで駆動配分が変化してくれまず。つまり駆動トルク(≒タイヤが路面を蹴る力)が前寄りになったり後ろ寄りになったりしてくれるわけです。
例えば雪道で曲がろうとしたとき、前輪がちょっと滑って、クルマが少し外に膨らむような状況になった時に、ハンドルを徐々に切り足していくと、前輪の滑りが収まって、今度は徐々に後輪への駆動配分が多くなっていき、後輪が軽く滑り出す状態にまでなります。
一般的なセンターデフ式4WDだと、一旦出たアンダーステアはスピードを落とさないと収まりません。あるいは前後のデファレンシャルにLSD(=差動制限装置=リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)を組み込むなどしないと、4つのタイヤがバラバラに回転してしまいます。
S4のクワトロシステムは、とてもシンプルなメカニズムで上手に4輪をコントロールしている点も4WDシステムとして優れていると思っています。
いろいろ理屈をこねくり回していますが、結局のところクルマの走り味が気に入っていること、メカニズムが面白くオタク心をくすぐってくれることが、いまだにB7型S4に乗り続けている理由だったりします。
最近の出来の良いクルマは、アウディに限らず、本当に出来が良くて感心してしまいますが、クルマがいろんなことをやってくれる分、ドライバーが関与する部分が少なくなっていて、いま一つ歯応えがないというか、深く入り込むことができないというか、そんな気分があります。
斎藤 聡 | SATOSHI SAITO
モータージャーナリスト。車両のインプレッションはもちろん、タイヤやサスペンションについて造詣が深く、業界内でも頼りにされている存在。多数の自動車雑誌やWEBマガジンで活躍中。某メーカーのドライビングインストラクターを務めるなど、わかりやすい解説も人気のヒミツ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カーオブザイヤー選考委員。