ファブリック・レザー・アルカンターラ比較:車のシート素材の特徴と選び方
更新日:2025.10.02

クルマのシート表皮素材にはファブリック(布)、本革レザー、アルカンターラの3種類があります。それぞれ座り心地や見た目、耐久性に違いがあり、本記事では各素材のメリット・デメリットと用途別の選び方を紹介します。
- Chapter
- ファブリックシート(布地)の特徴と魅力
- ファブリックシートのメリット|コスパと快適性
- ファブリックシートのデメリット|汚れやすさと高級感不足
- レザーシート(本革)の特徴と高級感
- レザーシートのメリット|高級感と経年変化の楽しみ
- レザーシートのデメリット|価格・メンテナンス・環境面
- アルカンターラシート(人工皮革)の特徴と先進性
- アルカンターラのメリット|高級感・快適性・環境配慮
- アルカンターラのデメリット|価格と取り扱いの難しさ
- 利用シーン別|後悔しないためのシート素材の選び方
- コストと通気性を重視するならファブリック
- 高級感と手入れのしやすさ(表面)を両立するならレザー
- 機能性・快適性・デザイン性を最高レベルで求めるならアルカンターラ
- まとめ|自分の価値観とライフスタイルに合った素材を選ぶ
ファブリックシート(布地)の特徴と魅力
ファブリックシートは、ポリエステルなどの化学繊維でできた布地であり、織り方や編み方によってジャージ、トリコット、モケットといった種類があります。カジュアルで親しみやすい印象があり、織物ならではの柔らかな座り心地で通気性も良好です。
ファブリックシートのメリット|コスパと快適性
価格が比較的安価で、物理的な擦れに対する耐久性(耐摩耗性)に優れています。また、通気性が良く蒸れにくい点や、冬場も極端に冷えにくい快適性が大きな魅力です。扱いやすさとコストパフォーマンスの高さから、日常使いの車に適した素材と言えます。
ファブリックシートのデメリット|汚れやすさと高級感不足
繊維の織り目に飲み物のシミやホコリ、毛などが入り込みやすく、一度染み付くと掃除が大変です。繊維の奥深くに入り込んだ汚れは除去が難しく、臭いを吸着しやすいという性質もあります。また、質感がカジュアルであるため高級感の面ではレザーに劣り、上級グレードでの採用例が少ない点もデメリットとして挙げられます。
レザーシート(本革)の特徴と高級感
本革シートは動物の革を加工したシート素材で、古くから高級車に用いられてきました。独特の質感があり、車内に上質な雰囲気をもたらします。なお、自動車用の本革シートの表面は、革そのものではなく、保護と着色を目的とした「塗膜」でコーティングされています。
レザーシートのメリット|高級感と経年変化の楽しみ
最大の魅力である高級感に加え、表面がコーティングされているため汚れを弾き、清掃も比較的容易です。さらに、適切なメンテナンスを定期的に行うことで、革本来の油分と水分が保たれ、使い込むほどに色艶が増すという経年変化も楽しめます。メンテナンスを怠ると、経年変化ではなく単なる「劣化」につながるため注意が必要です。
レザーシートのデメリット|価格・メンテナンス・環境面
価格が高く、通気性が低いため夏は蒸れやすいのが難点です。一方で、適切な手入れを怠ると、紫外線や乾燥によって革内部の油分と水分が失われ、柔軟性が低下します。その結果、表面の塗膜にシワやひび割れが発生しやすくなります。物理的な擦れへの強さではファブリックに劣るため、本革の耐久性は日頃の丁寧な手入れによって大きく左右されると言えるでしょう。また、動物由来であるため環境・倫理面で敬遠される動きも見られます。
アルカンターラシート(人工皮革)の特徴と先進性
アルカンターラは、日本の化学メーカー「東レ」が1970年に開発した技術を基に、イタリアのアルカンターラ社で製造・販売されているスエード調の高級人工皮革です。柔らかな起毛感が特徴で、高級車の内装に広く採用されています。軽量で通気性にも優れ、近年は動物由来ではないエシカル素材としても注目されています。
アルカンターラのメリット|高級感・快適性・環境配慮
本革に匹敵する高級感を持ちながら、通気性に優れ蒸れにくく、汚れも付きにくいのが特長です。触り心地が柔らかく、表面が滑りにくいため体のホールド性が高く、スポーツ走行にも適しています。動物由来ではない点も、現代の価値観において高く評価されています。
アルカンターラのデメリット|価格と取り扱いの難しさ
非常に高価で、本革以上の価格設定となることもあり、装備できる車種・グレードが限られます。また、長期の使用や、特にステアリングホイールなど頻繁に摩擦が起きる箇所では、表面に毛羽立ちやテカリといった特有の劣化が見られる場合があります。
利用シーン別|後悔しないためのシート素材の選び方
コストと通気性を重視するならファブリック
多くの車種で標準装備されるファブリックシートは、安価で通気性に優れているのが最大の長所です。布地ならではの構造が、夏場の蒸れや冬場のヒヤッとした感覚を和らげ、年間を通じて比較的快適な座り心地を提供します。
一方で、先ほど述べたように、ファブリックシートの最大の弱点は汚れやすさにあります。ファミリーユースで選ぶ場合は、防水・防汚タイプのシートカバーを併用することを前提に検討するのが賢明です。
一方で、先ほど述べたように、ファブリックシートの最大の弱点は汚れやすさにあります。ファミリーユースで選ぶ場合は、防水・防汚タイプのシートカバーを併用することを前提に検討するのが賢明です。
高級感と手入れのしやすさ(表面)を両立するならレザー
本革シートが持つ、しっとりとした艶や独特の香りは、車内に高級感をもたらす最大の魅力です。また、表面が樹脂でコーティングされているため、液体をこぼしても染み込みにくく、さっと拭き取れる点は大きなメリットと言えます。
またメンテナンスの際の注意点として、自動車用の本革シートは表面が塗装されているため、革製品用のオイルやクリームを塗っても浸透せず、逆に油分がホコリを吸着してベタつきや劣化の原因になることがあります。基本のお手入れは、固く絞った濡れタオルで拭くだけで十分です。乗り降りで擦れる部分は塗装が剥げやすいという弱点もあります。
またメンテナンスの際の注意点として、自動車用の本革シートは表面が塗装されているため、革製品用のオイルやクリームを塗っても浸透せず、逆に油分がホコリを吸着してベタつきや劣化の原因になることがあります。基本のお手入れは、固く絞った濡れタオルで拭くだけで十分です。乗り降りで擦れる部分は塗装が剥げやすいという弱点もあります。
機能性・快適性・デザイン性を最高レベルで求めるならアルカンターラ
アルカンターラは、スポーティな走行に適した滑りにくさと高いホールド性だけでなく、機能面でも非常に優れた人工素材です。
本革の弱点であった夏場の熱さや冬場の冷たさを感じにくく、ファブリック同様の優れた通気性を誇ります。さらに、日光による色褪せや摩擦にも強く、天然皮革よりも用途によっては高い耐久性を持っています。本革のような高級感を持ちながら、ファブリックの快適性と本革の弱点を克服した、まさに両者の「良いとこ取り」をした高機能素材と言えるでしょう。
本革の弱点であった夏場の熱さや冬場の冷たさを感じにくく、ファブリック同様の優れた通気性を誇ります。さらに、日光による色褪せや摩擦にも強く、天然皮革よりも用途によっては高い耐久性を持っています。本革のような高級感を持ちながら、ファブリックの快適性と本革の弱点を克服した、まさに両者の「良いとこ取り」をした高機能素材と言えるでしょう。
まとめ|自分の価値観とライフスタイルに合った素材を選ぶ
3種類の素材は、それぞれに明確な長所と短所(トレードオフ)が存在します。安価で快適なファブリックは汚れに弱く、高級感のある本革は温度変化に弱くメンテナンスに注意が必要です。アルカンターラは多くの面で優れますが、価格は高価になります。
さらに近年では、単なる快適性だけでなく、環境負荷や倫理的な観点を重視した「サステナブル素材」が新たな高級の定義になりつつあります。ボルボが採用するリサイクル素材由来の「Nordico™」や、様々なブランドが開発を進める植物由来のヴィーガンレザーなどがその代表例です。
見た目やイメージだけで選ぶのではなく、ご自身の車の使い方、家族構成、そして環境に対する価値観まで含めて総合的に判断することが、最も満足度の高い選択につながります。
さらに近年では、単なる快適性だけでなく、環境負荷や倫理的な観点を重視した「サステナブル素材」が新たな高級の定義になりつつあります。ボルボが採用するリサイクル素材由来の「Nordico™」や、様々なブランドが開発を進める植物由来のヴィーガンレザーなどがその代表例です。
見た目やイメージだけで選ぶのではなく、ご自身の車の使い方、家族構成、そして環境に対する価値観まで含めて総合的に判断することが、最も満足度の高い選択につながります。