軽自動車に空冷48Vのハイブリッド!? スズキが技術戦略2025を発表

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スズキが2025年9月10日、技術戦略2025を発表しました。派手に革新的なトピックで突き進むより、顧客と共に未来へ歩むという姿勢にスズキらしさを感じた発表でした。

宇田川 敦史|うだがわ あつし

旧ヤフージャパン社の元自動車サービスマネージャー、カービュー社のプロデューサー、carview!編集長、日本カー・オブ・ザ・イヤー執行役員。
現ファブリカコミュニケーションズ社のメディア車選びドットコムとカープライムの統括編集長。
消費者目線でのクルマ選びとクルマ好きならではの目線をバランス良く発信し、一人でも多くの方が車が好きになっていただける世界に貢献したいと考えています。

宇田川 敦史
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軽量化と新たなテクノロジーを他社協業含め低価格でバランスしてゆく

軽量化と新たなテクノロジーを他社協業含め低価格でバランスしてゆく

スズキが発表した「技術戦略2025」のキーワードは「軽く、ムダなく、ちょうどいい」です。この戦略は私たちのクルマ選びに、どのような影響をもたらすのでしょうか。

1. 「過剰スペック」からの脱却 本当に必要な性能とは?
近年の自動車業界は「より大きく、より高性能に」という方向に向かいがちでした。しかしスズキは、この潮流に対して本質の追求につながる性能以上のスペックまでは要らないのではないか、との考えを示し続けています。

「Right × Light Mobile Tech」では、プラットフォーム「HEARTECT」をさらに磨き上げ、最大100kg(現時点で約80kgですが、会場で120kgまでやります!との冗談も飛び交っていました)の軽量化を目指しています。これは単なる数字の改善ではなく、軽い車体は燃費向上、運動性能の向上、そして価格の抑制に直結する大きな要素となります。

また、「バッテリー・リーン」という設計思想では、EVやハイブリッド車で「電池は多ければ多いほど良い」という考え方が一般的ですが、スズキは「必要十分な容量」にこだわっています。これにより、購入価格の抑制、車重の軽減、そして将来のバッテリー交換コストの軽減が期待ができるといいます。

2. 燃料の選択肢が広がる FFVとバイオガスの実用化
フレックス燃料車(FFV)は、ガソリンとエタノールの混合燃料を柔軟に使い分けることができます。インドではすでに2輪車「GIXXER SF 250 FFV」の量産を開始し、4輪車でもE20対応(エタノール20%混合)を進めています。日本国内でも、将来的に燃料選択の幅が広がる可能性があります。

また、バイオガス事業も具体的に進行中です。インドで建設中のプラントが2025年から順次稼働予定で、CNG車の燃料として活用されます。これらの取り組みは、エネルギーコストの変動リスクを分散し、長期的な燃料費の安定化につながる可能性があります。

3. 「SDVライト」 ちょうどいいクルマへの新発想
自動車のソフトウェア化(SDV:Software Defined Vehicle)が進む中、スズキは「SDVライト」という独自のアプローチを提示しています。

これは「すべてをソフトウェアで高機能化する」のではなく、その車格・価格帯で「ちょうどいい」機能に特化するという考え方です。ライトはlightは「軽い」ではなく、「正しい」rightという意味で、結果として、価格高騰を抑え、軽量で故障しにくいクルマを目指しています。

消費者にとっては、「使わない高機能のために高い費用を払う」必要がなくなり、実用性重視の装備選択ができるメリットがあります。

4. 循環まで考えた設計 将来の下取り・リセールにも影響
スズキの戦略には、分解設計や再生プラスチックの活用拡大も含まれています。これは環境配慮だけでなく、修理性の向上や将来の下取り価値にも影響する可能性があります。

樹脂部品の材料統合やモノマテリアル化により、リサイクルしやすい車体構造を実現しています。これは部品コストの削減や修理期間の短縮にもつながることが期待されます。

5. 購入タイミングと注意点 いつ、どこで手に入る?
最も気になるのは、これらの技術が搭載されたクルマを実際に購入できる時期でしょう。

第一弾の「eビターラ(e VITARA)」については、日本の公式サイトでも先行情報が公開されていますが、インドでは生産計画の調整報道もあります。地域ごとに導入タイミングが異なるため、国内正式発表を待つ必要があります。

FFV対応車についても、FY25-26(2025-2026年度)の投入が計画されていますが、国内での展開時期は未定です。

発表中の会話の中では、軽自動車規格は変えずにガラパゴスをグローバルに変える内容や、空冷エンジンと48Vのハイブリッドが軽量小型の軽自動車には合うかもしれないといった会話もされていました。また、R&DプロジェクトやCNチャレンジなど、新たな社内体制やプロジェクトにも取り組んでおり、これからのスズキに活気が垣間見えました。

これからのスズキが、「大きく、高性能で、多機能」が必ずしも正解ではないという価値観と共に、私たちのカーライフに新たな選択肢の気づきをもたらしてくれるのではないでしょうか。

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