なぜBMW M5はV10NAからV8ターボへ舵を切ったのか?
更新日:2024.09.09
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大排気量と圧倒的なパワーが売りのBMW M5。エコを気にするようなモデルではないM5がなぜV10NAからV8ターボへ変更したのでしょうか?その理由とV10搭載モデルE60型M5の中古車事情や、後継のV8ターボモデルのM5の進化について紹介していきます。
V10を搭載するM5は E60型だけ
BMW M5は、BMWが誇るハイパフォーマンスセダンの一つです。スポーツ性能としてはM3/M4の方が勝るものの、その暴力的なパワーと加速感は他の車と比べようもありません。そんなM5の現行モデルのF90型はV8ですが、2つ前のモデルであるE60型はV10でした。
V10エンジン搭載車は世界中でも数えられる程で、M5のアイデンティティーだったことは間違いなく、歴代M5の歴史の中でもV10エンジンを搭載したモデルはE60型だけとなっています。
M5というスペシャルモデルが設定されたのは、1982年のE28型に遡ります。このモデルは初代M5ですが、BMWお得意の直列6気筒エンジンでした。また、M5としては2代目(5シリーズでは3代目)となるE34型も同じく直列6気筒エンジン搭載であり、どちらかといえば「ジェントルな」スポーツサルーンに仕上げられています。
V10エンジン搭載車は世界中でも数えられる程で、M5のアイデンティティーだったことは間違いなく、歴代M5の歴史の中でもV10エンジンを搭載したモデルはE60型だけとなっています。
M5というスペシャルモデルが設定されたのは、1982年のE28型に遡ります。このモデルは初代M5ですが、BMWお得意の直列6気筒エンジンでした。また、M5としては2代目(5シリーズでは3代目)となるE34型も同じく直列6気筒エンジン搭載であり、どちらかといえば「ジェントルな」スポーツサルーンに仕上げられています。
ただ、それは現代のクルマと比べればの話です。当時のスペックとしては目を見張るものがあり、非常にハイパワーであったと言えます。続くE39モデルでは直列6気筒からV8エンジンになります。このV8は4.9Lで約400馬力を発揮。アウトバーンのある本国ドイツでは、リミッターを外すだけで290km/hオーバーでの走行が可能だったそうです。この辺りから、暴力的なパワーを秘めた野獣感が溢れたモデルへと変化していきます。
4代目となるE60型ではV10へとさらに拡大。5.0Lで500馬力オーバーとなり、進化したSMGと組み合わされ、まさに獰猛な肉食獣のような強さを持つハイパワーサルーンへと進化していきます。
4代目となるE60型ではV10へとさらに拡大。5.0Lで500馬力オーバーとなり、進化したSMGと組み合わされ、まさに獰猛な肉食獣のような強さを持つハイパワーサルーンへと進化していきます。
なぜV10搭載はE60型M5だけなのか?
E60型が発表されたのは2003年のこと、このころのBMWはF1に参戦していました。日本からもトヨタ自動車が参戦していた時期ですので記憶にある方も多いかもしれません。この当時のF1はダウンサイジングターボではなく、V10エンジンであることがレギュレーションで定められていました。市販車ではF1エンジンのように20000回転も回すわけにはいきませんが、F1のテクノロジーを市販車へフィードバックし、それをアピールしていた時期でした。
当時E46型だったM3には、F1のカーボンファイバーテクノロジーを活用した、CSLと言う軽量限定モデルを発売、そしてM5にはF1譲りのV10が設定されました。車重1900kg弱の重量級FRですが、V10エンジンのおかげでパワフルを通り越して「暴力的」な加速を実現しました。
ドライバーによってはサーキットでも怖いくらいと思わせるモデル、この高性能は「アウトバーン専用」とも言えるでしょう。
当時E46型だったM3には、F1のカーボンファイバーテクノロジーを活用した、CSLと言う軽量限定モデルを発売、そしてM5にはF1譲りのV10が設定されました。車重1900kg弱の重量級FRですが、V10エンジンのおかげでパワフルを通り越して「暴力的」な加速を実現しました。
ドライバーによってはサーキットでも怖いくらいと思わせるモデル、この高性能は「アウトバーン専用」とも言えるでしょう。
BMW M5のV10からV8への移行は更にハイパワーを求めたからだった?
まずはBMW M5のモデル推移を振り返ってみましょう。
初代 E28型 (1982-1988) 直列6気筒3.5L 最高馬力286PS
2代目 E34型 (1988-1995) 直列6気筒 3.8L 最高出力340PS
3代目 E39型 (1996-2003) V型8気筒 4.9L 最高出力400PS
4代目 E60型 (2003-2010) V型10気筒 5.0L 最高出力507PS
5代目 F10型 (2009-2016) V型8気筒 4.4L 最高出力560PS
6代目 F90型 (2017~) V型8気筒 4.4L 最高出力600PS
エンジンを変えながら確実に性能を向上させていることが分かります。それはV10からV8への変更時も例外ではありません。少しエンジンを知っている方なら、似た感覚を覚えることはあるかもしれませんが、エンジンの気筒数が多くなるほどハイパワーにできると思ってしまいがちです。
初代 E28型 (1982-1988) 直列6気筒3.5L 最高馬力286PS
2代目 E34型 (1988-1995) 直列6気筒 3.8L 最高出力340PS
3代目 E39型 (1996-2003) V型8気筒 4.9L 最高出力400PS
4代目 E60型 (2003-2010) V型10気筒 5.0L 最高出力507PS
5代目 F10型 (2009-2016) V型8気筒 4.4L 最高出力560PS
6代目 F90型 (2017~) V型8気筒 4.4L 最高出力600PS
エンジンを変えながら確実に性能を向上させていることが分かります。それはV10からV8への変更時も例外ではありません。少しエンジンを知っている方なら、似た感覚を覚えることはあるかもしれませんが、エンジンの気筒数が多くなるほどハイパワーにできると思ってしまいがちです。
実際、NAエンジンではこれは間違いではなく、より排気量が大きいエンジンを高回転まで回す方がパワーは大きくなります。排気量を稼ぐには、ボアとストロークを上げていくわけですが、それでは高回転まで回らなくなるので、気筒数を増やしてボアとストロークを小さくします。そのため、NAの場合は多気筒ほどパワーが出るというのはあながち間違いではありません。
ところがE60型の後継モデルであるF10型M5は、V10からV8へと気筒数を減らしました。同時にこのモデルは4.4LとE60と比べて排気量が下がっています。しかし新たに採用された武器がツインスクロールターボです。
レスポンスとエンジンフィーリングに優れるNAエンジンからターボエンジンへと変更になってしまったことにより、嘆くBMWファンもいましたが、結果的に最高出力は560馬力とさらなるパワーアップを遂げています。車重1980kgと、ドライバーまで含めれば実質2tを超えるボディも560馬力と言う、文字通り溢れるパワーで軽々と前に進んでいきます。
ところがE60型の後継モデルであるF10型M5は、V10からV8へと気筒数を減らしました。同時にこのモデルは4.4LとE60と比べて排気量が下がっています。しかし新たに採用された武器がツインスクロールターボです。
レスポンスとエンジンフィーリングに優れるNAエンジンからターボエンジンへと変更になってしまったことにより、嘆くBMWファンもいましたが、結果的に最高出力は560馬力とさらなるパワーアップを遂げています。車重1980kgと、ドライバーまで含めれば実質2tを超えるボディも560馬力と言う、文字通り溢れるパワーで軽々と前に進んでいきます。
0−100km/h加速では、E60型が4.7秒だったのに対し、F10型では4.3秒と、0.4秒も縮めています。その割に車重が増えているのだから驚かされます。また、車重は増えているものの、重量の前後バランスも配慮されている点にBMWらしさを感じます。
フロントに長いシルキー6を搭載できるメーカーですので、V10を積んでもバランスを取ることは技術的に可能だと思いますが、それでもエンジンは短い方が、車体中央に重量物を集められます。V8と言うコンパクトなエンジンを採用することにより、設計時重量バランス面で有利にできるため、ハンドリングを中心とした「駆け抜ける喜び」の深化を深めることができるという判断もあるのでしょう。
フロントに長いシルキー6を搭載できるメーカーですので、V10を積んでもバランスを取ることは技術的に可能だと思いますが、それでもエンジンは短い方が、車体中央に重量物を集められます。V8と言うコンパクトなエンジンを採用することにより、設計時重量バランス面で有利にできるため、ハンドリングを中心とした「駆け抜ける喜び」の深化を深めることができるという判断もあるのでしょう。
BMW M5 F10で向上した脅威の「環境」性能
日本では、エコ=燃費=ランニングコストと考えてしまいがちです。日本はドライバーの傾向的にみれば近距離走行タイプで、1回の給油で往復できる距離の利用回数が多く、さらに長距離を走るケースは年に数回というのが平均的なところです。
対して、欧州は大陸間移動も多く、国をまたいで走ることもよくある話。そうなると、長距離走行時にどの程度燃料を消費するかは大事なポイントとなります。長距離を走る上で、燃費は非常に大事ですし、給油の回数が増えれば、それだけ所要時間が増えてしまいます。
F10型M5では燃費性能においても改善が見られ、その改善率は約30%となっています。E60型では約6.9km/Lだったのが、F10型では10.1km/Lまで向上。さらにタンク容量も10L増え、80Lとなったため航続距離が長い足長モデルへと進化しています。
対して、欧州は大陸間移動も多く、国をまたいで走ることもよくある話。そうなると、長距離走行時にどの程度燃料を消費するかは大事なポイントとなります。長距離を走る上で、燃費は非常に大事ですし、給油の回数が増えれば、それだけ所要時間が増えてしまいます。
F10型M5では燃費性能においても改善が見られ、その改善率は約30%となっています。E60型では約6.9km/Lだったのが、F10型では10.1km/Lまで向上。さらにタンク容量も10L増え、80Lとなったため航続距離が長い足長モデルへと進化しています。
現行の6代目BMW M5 F90型はどんなモデル?
E60型の登場から2度のフルモデルチェンジが行われ、2017年からは6代目にあたる現行F90型が発売されています。先代のF10型からは基本的な構造を受け継いで、M5のセダンとして初めての4輪駆動を採用しました。そしてパワーは更に向上しています。
全長4,965mm×全幅1,903mm×全高1,480mm、車両重量は少し軽くなり1,950kg。燃料消費率(WLTCモード)8.8km/L、高速走行時は11.0km/Lまで伸びました。燃費が悪くなりがちな4輪駆動ですが、しっかりと環境性能も改善させている点が素晴らしいです。
エンジンは先代モデルと同じ排気量4.4LのV8を継承しながら、最高出力は441kW(600PS)/6,000rpmと大幅にパワーアップ、さらに最大トルクは750Nm(76.5kgf)/1,800-5,600rpmで、0-100km/h加速は3.4秒という性能を誇ります。
全長4,965mm×全幅1,903mm×全高1,480mm、車両重量は少し軽くなり1,950kg。燃料消費率(WLTCモード)8.8km/L、高速走行時は11.0km/Lまで伸びました。燃費が悪くなりがちな4輪駆動ですが、しっかりと環境性能も改善させている点が素晴らしいです。
エンジンは先代モデルと同じ排気量4.4LのV8を継承しながら、最高出力は441kW(600PS)/6,000rpmと大幅にパワーアップ、さらに最大トルクは750Nm(76.5kgf)/1,800-5,600rpmで、0-100km/h加速は3.4秒という性能を誇ります。
BMW M5 E60型の中古車を買おうとするなら?
某大手中古車サイトでは、BMW M5 E60型は15台ほど見つかりました。(2020年7月現在)
最も安い個体は車両168万円で2007年式走行距離7.3万km、最も高い個体は車両価格348万円で2008年式、走行距離は5.3万kmで車両価格348万円となっています。希少なモデルで数が少ない割には低い価格だと感じ魅力的に見えますが、安いからといって飛びつくと維持費で痛い目を見ます。
しっかりとランニングコストを計算し、信頼の置けるメンテナンス体制を持つショップやディーラーを近くに見つけておきましょう。
最も安い個体は車両168万円で2007年式走行距離7.3万km、最も高い個体は車両価格348万円で2008年式、走行距離は5.3万kmで車両価格348万円となっています。希少なモデルで数が少ない割には低い価格だと感じ魅力的に見えますが、安いからといって飛びつくと維持費で痛い目を見ます。
しっかりとランニングコストを計算し、信頼の置けるメンテナンス体制を持つショップやディーラーを近くに見つけておきましょう。
今回ご紹介したM5は、その時々の最新の技術を用いた「スポーツサルーン」であると言うことでは間違いないでしょう。M3は当初モータースポーツのためのホモロゲモデルとして登場したので、M5はまた違ったアプローチのコンセプトが、採用メカニズムからも感じます。現行モデルのF90型は2017年に発売されたということもあり、今後も改良が施されるでしょう。まだまだ獰猛なM5から目が離せません。