トヨタ 初代ピクシス バンの乗り心地はいかに？

トヨタ 初代ピクシス バンは、ダイハツ ハイゼットカーゴのOEM版として2011年に登場しました。エンブレム以外はハイゼットカーゴと共通のつくりで、4ナンバーを付ける貨物車として販売されています。

ピクシス バンは主に貨物を積載する商用車という位置付けのため、ハンドリングにこれといった特徴はありません。走行性能や静粛性も一般的な商用車と似たようなものですが、最上級グレードの「クルーズターボ」には、最高出力47kW(64PS)のターボエンジンが搭載されています。

他のグレードに採用されるエンジンよりもトルクアップされているため、余裕のある走りが可能です。またエンジン回転数を上げなくても十分なパワーを発揮できるため、静粛性は高いと言えるでしょう。

乗り心地を左右する要素のひとつにサスペンションの性能があり、その方式により乗り心地は大きく変わります。

トヨタ 初代ピクシス バンのサスペンションは、フロントにマクファーソン・ストラット式、リアサスペンションにはトレーリングリンク車軸式が用いられています。

フロントのマクファーソン・ストラット式は多くの車種で一般的に採用される方式で、製造コストが低い点や、部品点数が少なく、軽量化されている点などが特徴です。一方デメリットとしては、特段乗り心地に優れているわけではないことや、操縦性もそれほど高くないという点などがあります。

しかし車両スペックやコストなどを総合的に勘案し、最も効率の高い方式として採用されているため、通常使用する分にはまったくデメリットを感じることは無いでしょう。

また、リアサスペンションに採用されているトレーリングリンク車軸式は、低コスト、軽量、車内スペースを広く取れる、という特徴があります。そのため、軽自動車などで幅広く用いられています。走行性能に限界があるという点はデメリットになりますが、さほど大きな問題にならないでしょう。

乗員が座るシートの出来は乗り心地に直接の影響を与えるため、その優劣を判断するにあたって重要な要素となります。トヨタ 初代ピクシス バンでは、商用メインのグレードと乗用ユースも想定したグレードで、シートのつくりが大幅に異なっています。

商用ユースを意識した「デラックス」や「スペシャル」には、フロントシート(前席)にヘッドレスト一体型のシートが採用されています。

一体型なので、大柄なドライバーの頭部位置にも対応できるように、シートが上下方向に大きくつくられているのが特徴です。そのためリアシート(後席)の乗員は、前方に圧迫感を感じてしまいます。

リアシートには、ベンチタイプのシートが採用されます。このシート形状は、通常、シートバックを倒しラゲッジルーム(荷室)として使うのが一般的です。そのためシートクッションも薄く、ヘッドレストも付いていません。

シート素材もプリントレザーで、乗り心地よりも貨物車としての使い勝手を追求しているシートタイプになっています。

一方「クルーズ」と「クルーズターボ」では乗用車としての使用も想定されているので、フロントシートに、分離式ヘッドレストのシートが採用されていて、リアシートには乗用タイプが採用されています。

特にリアシートは、シート自体の大きさはもちろん、クッションの厚さも「デラックス」や「スペシャル」より大幅にアップされています。さらにこの2グレードはファブリック素材のため高い質感をもち、乗用車として使う場合も快適にドライブを楽しめます。

トヨタ 初代ピクシス バンでは、ボディ構造やサスペンション型式に大きな特徴はないものの、普段使いに支障ない乗り心地を実現させています。一方、ボディ形状は同じながら、グレードによって2種類のシートがあり、それぞれ異なる用途が想定されているため座り心地は若干異なります。

しかし、乗用車としても貨物積載の用途でも、乗り心地に大きな不満はありません。ピクシス バンの購入を検討している人は、乗り心地はあまり気にせず、他の特徴にフォーカスした車選びができるでしょう。

※ 2020年11月現在