ダイハツ タントの乗り心地や運転のしやすさは?ライバル車と運転性能を比較【試乗レビュー】

2020 ダイハツ タント

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タントのような軽スーパーハイトワゴンは、リアシート(後席)の広さや荷室の使い勝手の良さから、子育て中のママを始めとして、多くの方の「日常の足」として使われています。毎日のことだからこそ、運転のしやすさや乗り心地など、走行性能も気になるところ。他社車と比べて、タントの走行性能は如何に!?

文・吉川 賢一/写真・エムスリープロダクション 鈴木 祐子

吉川 賢一|よしかわ けんいち

モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。

吉川 賢一
Chapter
快適かつサポート性も必要十分なシート
新手法のDNGAにより実現した小さなロードノイズ
どの道を走ってもソフトな乗り心地
コーナリング中のボディの動きはあと一歩!ライバル車と変わらない?
動力性能はNAだと物足りない?ターボでようやく必要十分!

快適かつサポート性も必要十分なシート

タントの運転席シートは、シートのサイドサポートはあまりありませんが、座面が広くソフトな座り心地をしており、シート素材に使われているファブリックによって身体がズレる心配はなく、体格が大きくても小さくても、ホールド性は高くなるように設計されています。後席の印象も同じく、ソフトな座り心地でかつフラットな形状ですが、あまり影響はないように感じます。

新手法のDNGAにより実現した小さなロードノイズ

タント・スペーシア・N-BOXといった軽スーパーハイトワゴンは、ドア面やガラス面が大きいために、ロードノイズがキャビンへ侵入しやすいのですが、新型タントは静粛性が高く、一般道の低中速(~60km/h)、または高速道路(~100km/h)において、従来の軽スーパーハイトワゴンよりもロードノイズは静かでした。

タントの試乗会に参加した際に、タントを担当した車体開発エンジニアの方に質問したところ、「入力をボディ骨格全体で受け止める「DNGA」によって、静粛性を向上することができました。」とのこと。

新型タントから導入した、新たな設計思想のもと、車体フロアの設計方法を見直し、効果的にロードノイズを低減できる車体構造や、遮音材の配置などを検討、これにより、静粛性を大幅に改善できたそう。前型と乗り比べれば、誰でもわかるレベルで改善しています。

どの道を走ってもソフトな乗り心地

低中速での一般道走行では、タントは柔らかい乗り心地です。路面の継ぎ目など、突起を乗り越した際に「ガツン」とくるショックは小さく、角が丸い印象をうけます。ただし、突起乗り越し後には、ボディは揺すられ、ユラユラした振動がわずかに残ります(上下のダンピングが悪い印象)。

高速走行でも印象は同じですが、道路の継ぎ目から受ける衝撃はやや大きめになり、「ダダン」という音とショックがやや大きめに入ります。ただ、高速走行になると、ボディがゆらゆらする様子はさほど気にならなくなりますので、怖さは殆どありません。

ダイハツのエンジニアの方曰く、「背高のボディが揺れない様に、サスペンションのレイアウトなど見直しています。また、スプリングとスタビライザーのロール剛性配分を適正化して乗り心地の改善を狙いました。とはいえ、ボディの揺れを消しきれない部分はあったと思います。」とのこと。低中速と高速走行を両立する足回りには、もう少し改善の余地があるように感じます。

コーナリング中のボディの動きはあと一歩!ライバル車と変わらない?

交差点で早めのハンドル操作をするシーンでは、タントのボディは遅れを伴ってロール方向に「グラり」と傾き、お店の駐車場へ入るときなどの段差乗り越しのシーンでも「ゆさゆさ」と左右に振られてしまい、安定感はあと一歩、といった印象です。

ダイハツのエンジニアの方によると、「フロントサスのロールセンタ高を修正、またアンチダイブ(ブレーキ時の前のめり抑制)のためフロントロアリンク後側のブッシュ位置を修正。リアサスはビームの付け根にあるブッシュの傾角を変更し、ステア特性と横剛性を改善してリアグリップを改善しました。」とのこと。

確かに、コーナーでのリアグリップには安定性がある様に感じますが、筆者としてはそれ以前に、大きく発生するロールの方が気になりました。スペーシアやN-BOXと比べて、リアサスの良さを明確には感じることはできませんでした。

動力性能はNAだと物足りない?ターボでようやく必要十分!

エンジンはNAエンジン、ガソリンターボの2種類。ミッションには「世界初」のスプリッドギアを組み込んだCVTベルト+ギア駆動「D-CVT」が採用されています。新型タントは、先代から約40kg軽量化されていますが、NAエンジンでは、少しの坂道があると、前走車についていくことが困難な場面がありました。

アクセルペダルを踏み込んでもエンジンが「ウォーン」とうなりを上げるだけで加速を伴わず、日常シーンでストレスを感じることがあるかもしれません。タントのキャラクター上、速く走る必要はまったくないと思いますが、筆者としては、「タントカスタム」に搭載されているガソリンターボエンジン程度のトルク感は欲しい、と感じました。
ハンドルを切った際のボディの揺れはやや大きめですが、乗り心地の良さと静粛性はとても魅力的です。静かになったことで「ワンランク上の軽」になったように感じます。ダイハツのエンジニアの方は「軽スーパーハイトワゴンであるタントの、ボディモーションが厳しいのは承知しています。

ただ、最も厳しいボディシェイプのクルマで対策を打てれば、その後の派生車種の開発が楽になる。そうしたコンセプトで設計をしました。」ともお話しされていました。ちなみに、この派生車種の第一弾が、11月に新登場したロッキーです。その新型ロッキーは2019年11月に登場するや否や、4,284台もの販売台数を達成しました。

兄弟車のトヨタ ライズと共に、12月以降も販売台数はまだまだ伸びていく見込みです。ダイハツの技術力は年々向上しており、今やトヨタと同じ技術水準にまで上がってきているように感じます。今後もダイハツが出す「面白いクルマ」には目が離せません。
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