なぜ日本人はそこまで燃費を気にするのか?1km/L違うと財布にどれだけ優しいの?

ガソリン価格が高くなると、気になるのはやはり燃費だろう。しかし、最近は、販売現場や自動車メーカーのエンジニアなどを取材していると、カタログ燃費ばかりを気にするという空気感はかなり薄まっているようだ。それでも燃費が一番気になるという人もいるだろう。燃費差によるランニングコストを考えてみた。

文・塚田 勝弘

Chapter
カタログ燃費競争の時代は終わった!?
まずは自分の運転の仕方について考えてみたい
1km/Lの差で年間1万km走るとどれくらい違う?

カタログ燃費競争の時代は終わった!?

数年前までのダイハツとスズキによる「仁義なき燃費競争」や、トヨタとホンダのハイブリッド車による燃費ナンバー1争いは、カタログ燃費(当時のJC08モード燃費)で相手を0.1km/Lでも上回ることに主眼をおいてエコカーが開発されていた。最近はあまり聞かれなくなったが、「第3のエコカー」というキャッチフレーズも連呼された時期もある。

しかし、ダイハツは2017年5月に発売したミライースで、カタログ燃費競争から一歩引いた姿勢を取っている。ミライースといえば、2011年発売の初代が「第3のエコカー」を謳い、スズキ アルトエコとの激しいカタログ燃費競争を勝ち抜くために生まれたモデルといっていいだろう。

近年、各メーカーがカタログ燃費を前面に押し出さないようになってきたのは、こうしたエコカーを乗ってきたユーザーから「発進加速が遅い」「坂道で登っていかない」「遅くて高速道路が怖い」などの声が聞こえてきたからだそうで、ほかの性能を犠牲にしてまで「カタログ燃費を0.1km/Lでも上げていく」という開発思想はほぼ聞かれなくなった。

もちろん、エネルギー効率の向上は大切なテーマで、ガソリンやディーゼルなどの内燃機関を積むモデルであれば、パワートレーンの熱効率(主にエンジン)向上、ハイブリッドシステムのさらなる高効率化などが、より強調されるようになった。

また、カタログ燃費(とくにJC08モード)と実燃費の乖離が広く知られるようになり、JC08モード燃費よりも実燃費に近いWLTCモード燃費に切り替わった今、実燃費を少しでも上げていくことが重要になっている。なお、現在はJC08とWLTCを併記しているクルマが多いが、2020年9月以降はWLTCモードのみになる。

加えて、ユーザーが投稿した実燃費のウェブサイトなどもあり、昔よりも実燃費を知る機会が増え、さらに車載燃費計の精度が年々向上しているなど、実用燃費を把握しやすくなっていることも、カタログ燃費一辺倒という状況を変えている面もあるかもしれない。

まずは自分の運転の仕方について考えてみたい

編集部からのお題は、「なぜ日本人はそこまで燃費を気にするのか?1km/L違うと財布にどれだけ優しいの?」だったが、今でも燃費をものすごく気にしている方も少なくないだろう。

しかし、先述したように、少なくてもメーカーはカタログ燃費さえ良ければと今は思っていない。また、ディーラーなどの販売現場の声を聞いていても、カタログ燃費を最重要視する人は、昔よりも減っているようだ。

こうした「1km/Lの燃費差」というテーマを考える前に確認しておきたいのが、果たして燃費に優しい運転をしているかだ。初代プリウスが登場してから「無給油でどこまで走れるか」と競争するユーザーが出てきて、筆者も雑誌でこうした企画をしたことがある。

某雑誌では、各タイヤメーカー自慢のエコタイヤを同車種の同グレードに装着し、気が遠くなるような長距離を何日もかけて走ったこともある。

最も大きく差が出るのは、重量物の有無はもちろん、運転の方法だ。高速道路などでは、経済速度を下回るようなノロノロ運転で走れば燃費は良くなる。EVに乗っている方なら高速道路などで飛ばすと航続可能距離が短くなり、ゆっくり走ると長くなるのはご存じだろう。

こうした少し非現実的な走らせ方ではなく、使っていないルーフボックスやゴルフバッグなどの余計な荷物をクルマから降ろす、空気圧をこまめに見る、加速は周囲の流れを妨げない程度に、少しゆっくり目にしかもスムーズに。

さらに、意外と皆さんやっていないのが、フューエルカット(燃料カット)を働かせること。下り坂での走行や目の前の信号が赤なのに、アクセルを戻さずに信号手前でほぼブレーキのみで減速し、停止する人がかなり多いように感じられる。

エコ運転の方法は上げていくとキリはないが、運転の仕方を見直してから燃費に向き合うのもいいのかもしれない。やってみたら意外と燃費が良くて、ガソリンも許容できる範囲と思えるかもしれない。

1km/Lの差で年間1万km走るとどれくらい違う?

さて、前置きがかなり長くなったが、燃費差を考えてみよう。

まずは計算を分かりやすくするため、キリがいい数値と燃費差を付けて、クルマAは10km/L、クルマBは15km/Lとした。ガソリン価格は140円/Lに設定。
燃費10km/LのクルマAは、100km走るのに1,400円かかる。
燃費20km/LのクルマBは100km走るのに933円で済む。
1000km走るとクルマAは1万4000円、クルマBは9,333円。
年間1万km走行の場合、クルマAは14万円。クルマBは9万3333円になる。年間の差は4万6667円。

では、同じくガソリン価格は140円/Lとした上で、クルマCの燃費を15km/L、クルマDの燃費を16km/Lにすると…
クルマCは年間1万km走行で9万3333円。クルマDは、8万7500円となる。年間の差は5833円だ。

同じ車種でも寸分違わぬ同一条件で燃費を計測することは、実燃費においてはほぼ不可能だが、先述したように「運転の仕方を常に意識しているか」で、これくらいの差であればカバーできるはず。1円でも安いガソリンスタンド目指して給油のみを目的に、わざわざ遠くまで出かけるのも考えものだろう。

着いた先でアイドリングしながら給油待ちでは、それこそガソリンがもったいない。燃費のいいクルマよりも燃費のいい運転を意識することが、財布への負担を軽くするのではないだろうか。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの展開している。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ