また一つ国産セダンの系譜が途絶える…日産 シーマの歴史を振り返る

バブル真っただ中の1988年にデビューした日産 シーマは40代以上の世代にとっては特別なクルマとして記憶されているのではないでしょうか。国産セダンの最高峰のひとつであり、長らく日産のセダンの象徴として君臨したモデル。しかし、2019年内で販売終了、というニュースがとびこんできました。

文・YOSHIT

Chapter
シーマの販売終了…ひとつの時代の終焉
「シーマ現象」を巻き起こした初代モデル(FPY31型1988年~)
排気量を拡大!より豪奢になった2代目FY32型(1991年~)
日本発の安全装備も搭載した進化系3代目FY33型(1996年~)
「バルカンヘッド」が印象的な4代目FY50型(2001年~)
環境性能も備えた最後のシーマ!HGY51型(2012年~2020年)
姿を消すシーマ…セダンモデルの後継は?

シーマの販売終了…ひとつの時代の終焉

日産 シーマ VIP

1988年に発表されたシーマは、セドリック/グロリアといった日産の高級セダンのさらに上位となる、フラッグシップセダンでした。時代からして、豪奢な装備のVIPセダンが大人気で、「シーマ現象」ともいわれたムーブメントが起きたほどです。

価格が高いからシーマを選ぶ、資産価値・ステータスシンボルとしての側面があったといえましょう。時は流れ、2019年。SUV人気はとどまるところをしらず、高級使用のSUVも欧州から出現。

日本もその潮流の最中にあり、かつてのハイソカー・VIPカーが占めていたポジションはSUVに取って変わりました。2019年内で日産シーマが販売終了となる、というのはそうした時代の変遷による価値観の変化も大きな要因と考えます。

今回は一時代を築いた、忘れえぬ日産シーマを振り返ってみたいと思います。

「シーマ現象」を巻き起こした初代モデル(FPY31型1988年~)

日産 シーマ Y31

1988年1月にデビューした初代シーマは、前述のようにそのバブル真っただ中という時代性も相まって、高い人気を博しました。セドリック/グロリアのプラットフォームをベースに、エンジンには3.0L V6ターボエンジンが奢られています。

丸みを帯びた流麗なデザインに反して強烈な加速を見せる運動性能と、電子制御エアサスペンションによるしなやかな乗り心地という高級感も、それまでの国産車にはなかった新たな価値観を提示したモデル、といえるかもしれません。

■ FPY31型 スペック
全長4,890mm×全幅1,770mm×全高1,380mm(1,400mm)
エンジン:3.0L VG30DET(255PS)/ VG30DE(200PS)
トランスミッション:4AT FR駆動
車両重量:1,640kg

排気量を拡大!より豪奢になった2代目FY32型(1991年~)

バブル末期にデビューした2代目モデルは、エンジンを拡大。4,130㏄の自然吸気エンジン「VH41DE型」V型8気筒DOHCエンジンが搭載されました。

NAで先代に負けないパワーを出すため、排気量アップさせたとのこと。ただし、1993年のマイナーチェンジで先代同様の「VG30DET型」V型6気筒DOHCターボ搭載モデルも追加されています。

足回りには油圧式アクティブサスペンションを採用。また本革内装や室内照明の追加等々、より豪奢さ・洗練度を高めたモデルでした。

■ FY32型スペック(タイプIIリミテッドL)
全長4,930mm×全幅1,780mm×全高1,420mm(1,435mm)
エンジン:VH41DE型(V8DOHC32バルブ)
最高出力:270PS(199kW)/6,000rpm
最大トルク:37.8kg・m(370.7N・m)/4,400rpm
トランスミッション:4AT FR駆動
車両重量:1,800㎏

日本発の安全装備も搭載した進化系3代目FY33型(1996年~)

3代目となったシーマはそのフロントマスクをこれまでとイメージを変えており、どこか英国的だった初代・2代目と比べると、幾分ドイツ的なデザインになっているともいえます。

パワーユニットはFY32型のキャリーオーバーですが、最大トルクも少し引き上げられ、また発生回転数も低くなっています。

また特筆すべきは1999年に追加された41LV-Zグレードに、日本車初の自動ブレーキ機能をもつ「車間自動制御システム(ミリ波レーダーセンサー採用)」を搭載したことです。

現在の日産の運転支援技術の礎ともいえる重要なモデル、ともいえます。

■FY33型スペック(41LV-Z)
全長4,970mm×全幅1,820mm×全高1,445mm
エンジン:VH41DE型(V8DOHC32バルブ)
最高出力:270ps(199kW)/5,600rpm
最大トルク:38.4kg・m(377N・m)/4,000rpm
トランスミッション:4AT FR駆動
車両重量:1,800㎏

「バルカンヘッド」が印象的な4代目FY50型(2001年~)

2000年代に入り、シーマも4代目に。V8仕様のヘッドライトは、小型のプロジェクターランプを中央、それを取り囲むように6つ配置された特徴的なヘッドランプ、通称「バルカンヘッド」が実に印象的。

デザインもよりドイツ的になったともいえるモデルでした。エンジンはお馴染VQ30DET型V6DOHC2,987ccターボと、日産初の直噴V8エンジンとなったVK45DD型V8DOHC直噴4,494ccエンジンを搭載。

また運転支援機能もさらに進化。レーンキープサポートシステム(車線逸脱防止支援システム)をオプションとして世界初採用。これはCCDカメラで高速道路両側の白線を認識し、逸脱しそうになると微舵修正を自動で行うもの。

またレーンキープサポートシステムとレーダークルーズコントロールによって、先行車の自動追尾運転が可能となっています。

現在ではファミリーカーにも標準装備となっている機能ですが、約20年前に初搭載したのが最上級モデルのシーマだったことを考えると、時の流れを感じますね。

■ F50型(450VIP)スペック
全長4,995mm×全幅1,845mm×全高1,490mm
エンジン:NEO Di VK45DD型(V8DOHCエンジン)
最高出力:280ps(206kW)/6,000rpm
最大トルク:46.0kg・m(451N・m)/3,600rpm
トランスミッション:5AT FR駆動
車両重量:1,810kg

環境性能も備えた最後のシーマ!HGY51型(2012年~2020年)

日産 シーマ VIP

現行モデルにして最終モデルが、2012年デビューのHGY51型です。これまでのV8エンジンは廃され、フーガハイブリッドにも搭載されているVQ35HR型ハイブリッドエンジンを搭載。

日産独自の1モーター2クラッチ・パラレル方式のハイブリッドシステム「インテリジェント デュアルクラッチ コントロール」を採用し、ダイレクト感ある、シーマらしい豪快な加速感も健在。

またトランスミッションも7ATと多段化。こうした装備によって燃費性能はJC08モードで16.6km/Lと、かつてないほどの数値になっています。

エクステリアデザインも非常に優れており、また前モデルより全高がアップしたことから居住性もアップ。現時点での最高のシーマであるのは間違いありません。

一方で、シーマといえども環境性能を満たさなければならない、時代の変化に直面したモデル。そして販売終了というのも運命的なものを感じさせますね。

■ HGY51型(ハイブリッド VIP G)スペック
全長5,120mm×全幅1,845mm×全高1,510mm
エンジン:VQ35HR(V6DOHCエンジン+モーター)
最高出力:306ps(225kW)/6,800rpm
最大トルク:35.7kg・m(350N・m)/5,000rpm
トランスミッション:7AT FR駆動
車両重量:1,950㎏

姿を消すシーマ…セダンモデルの後継は?

新型 日産 スカイライン 2019

日産 シーマが2020年に姿を消す、いうのはなんとも寂しくもあります。日産としては自社エンジンを搭載し、息を吹き返そうとしている新型スカイラインを高級セダンモデルとして展開していくプランと考えます。

かつて一世を風靡した高級セダンですが、SUV全盛の今、その勢いを取り戻すのは容易ではないといえます。それだけに、新型スカイラインがどのようにマーケットで受け入れられるか、という点も非常に大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。

ここのところ明るいニュースの少なかった日産ですが、かつての勢いと「技術の日産」の復活を期待したいところですね。

YOSHIT

しがない古物商。中古車をたまに販売。
愛車遍歴は、いすゞPAネロ、ホンダZ360、ランチア・デルタ・インテグラーレ16V、アルピーヌ・ルノーV6ターボ等々、一貫性もなく。現在はルノー・ルーテシア(CLIO4 120TCe)、KTM RC250(2輪)が愛車。旧車、ラテン車に目がないオッサンです。

YOSHIT