本当に人気なの?日本におけるピックアップトラックの事情。保険や高速道路の料金にも違いが?

アメリカでは、大きなピックアップトラックが、まるで日本の軽自動車のように庶民の足として使われていると耳にすることは少なくありません。そのため各メーカーから様々なピックアップトラックが登場しています。日本ではトラックを作っているイメージの薄いホンダでさえ「リッジライン」というピックアップトラックを用意しているくらいです。しかし日本でパーソナルユース向けのピックアップトラックとなると、トヨタ・ハイラックスくらいしか選択肢はありません。こうした違いはなぜ生まれてくるのでしょうか。

文・山本晋也

Chapter
一体、ピックアップはどの国で人気なのか?
日本でも自動車税は安い
休日割引がなく高速料金が高い

一体、ピックアップはどの国で人気なのか?

フォード F-150 2018

"ピックアップトラック天国"といって、まっさきに思い浮かぶのは、冒頭でも書いたようにアメリカでしょうか。広大な土地、キャンピングカーなどをけん引するのが当たり前なカーライフ、なにより燃料代を日欧に比べれば気にせずとも済む環境はピックアップトラックを主流としています。なにしろアメリカではフォードのピックアップトラック「F-150」が30年以上に渡って、もっとも売れているクルマなのです。その理由としては主に保険料の安さが効いているといわれています。

ホールデン UTE Holden SS V Redline UTE Nurburgring

ほかにもアメリカ同様に広大な国土を持つオーストラリアでもピックアップトラックは人気です。とくに「UTE」と呼ばれるクーペボディの後半を荷台に仕上げたようなスポーツトラックは独自の自動車文化といえます。アジアではタイがピックアップトラック天国です。乗用車に対して圧倒的に安い物品税がピックアップトラックへのニーズを高めています。トラックといってもボンネットを持つピックアップタイプで、ダブルキャブと呼ばれる2列シートのモデルであれば乗用車的に使えるため人気なのです。

三菱 トライトン
トヨタ ハイラックス 2017

そのためタイには各社がピックアップトラックの生産工場を構えています。いすゞはD-MAXなど、三菱自動車はトライトン、トヨタが「ハイラックス」を彼の地で生産しているのです。そして「ハイラックス」は日本に輸入されています。ピックアップトラックに分類されるクルマの中で、日本で正規販売されている唯一の存在といえます。

日本でも自動車税は安い

自動車税 税金

日本では1ナンバーとなるハイラックスですが、その維持費を調べてみると、自動車税や重量税といった課税が乗用モデルよりも安価なことに気付くでしょう。ハイラックスのエンジンは2.4L直列4気筒ディーゼルですが、1ナンバー(商用車)の自動車税はエンジン排気量とはあまり関係がありません。最大積載量500kgで乗車定員5名ですから、貨客兼用車となります。自家用での自動車税は年額16,000円です。もし、同じエンジンで乗用車だとすると自家用登録で45,000円になりますから、ずいぶんとオトクに見えます。さらに、ハイラックスはエコカー減税の対象モデルなので、取得税99,000円と重量税15,000円が全額減税となっているのです。

ハイラックス 2016年 ナミビア

こうした税負担の軽さをみると日本でもピックアップトラックが増えてもおかしくないと感じますが、乗用車と比較するとデメリットもあります。まず車検が毎年になります。乗用車でも12か月点検に出していると思えば、それほど負担は変わらないのですが、それでも毎年車検というのはハードルに感じることでしょう。

休日割引がなく高速料金が高い

関越自動車道 高速道路

さらに高速道路の料金が1ナンバーでは高くなってしまいます。4ナンバーの小型貨物車であれば乗用車と同額ですが、1ナンバーは中型車扱いとなってしまうため、わずかですが高くなります。とはいえ、首都高速の基本料金(現金支払料金)でいえば、普通車が1,300円なのに対して、中型車は1,380円ですから、それほど高くなるわけではありません。ちなみに、東名高速道路で東京から名古屋まで行った場合の料金は、普通車が通常料金で7,090円、中型車は8,480円です。ただし、普通車でETCを利用していると休日割引が適用され、同じルートでは5,240円になりますが、中型車は休日割引の対象外なので、土日祝のレジャーユースを考えているユーザーにとっては無視できない違いとなってくるでしょう。

保険

さらに自動車保険(任意保険)の扱いも異なります。1ナンバーになると、いわゆるネットで申し込むダイレクト型の保険サービスが対応していないことも少なくありません。代理店で申し込むタイプの自動車保険は割高になってしまいがちです。そうした部分での不便さが日本のピックアップトラック・マーケットが盛り上がりに欠ける一因なのかもしれません。ただし、維持費を均してみると3ナンバーの乗用車と1ナンバーの商用車ではさほど変わらなかったりします。日本でピックアップトラックのシェアが増えないのはトラックをレジャーで活用するという自動車文化が育まれていないことが大きな原因なのかもしれません。もっともグローバルに見ればピックアップトラックが主流となっている市場は限られていますので、日本市場の問題というよりは、アメリカやタイが特殊な市場と捉えるべきでしょう。

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也|やまもと しんや