アルファロメオのSUVステルヴィオ(Stelvio)をジャーナリストが解説

アルファロメオ ステルヴィオ クアドリフォリオ

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イタリア北部、アルプス山中にある峠=ステルヴィオ峠からその名前をとったアルファロメオのSUVがステルヴィオです。ジュリアのプラットフォームを用いてSUVに仕立て直し、オフロードの走破性よりも?オンロードでの操縦性を重視したのに違いないと思える過激な操縦性が魅力です。ハイパフォーマンスモデルのクアドリフォリオの速さは折り紙付きで、2017年にはニュルブルクリンク北コースで、7分51秒7というタイムを叩き出して、量産SUV最速の座を奪取しています。アルファロメオらしい?SUVはいったいどんな走りを見せてくれるのでしょうか。今回は、2.2ターボディーゼル Q4と2.9L、V6ターボエンジンを搭載したクアドリフォリオをご紹介します。

文・斎藤聡/写真・CarMe編集部
Chapter
イタリア車のSUVが世界最速を目指す!
ステルヴィオ クアドリフォリオをレヴューした
アルファロメオとフェラーリと共同開発したエンジンを搭載!
470Nmの極太トルクが魅せるストレスなく力強い走り
ステルヴィオのSUVらしい収納力も画像で確認

イタリア車のSUVが世界最速を目指す!


今や世界的なSUVブームです。とくに欧州では各メーカーこぞってSUVを開発・発売しており、文字通り百花繚乱といった状況です。イタリアのスポーツカーの名門、アルファロメオからSUVが発表されたのは2016年のロサンゼルスショーの事でした。すでに世界中でSUVブームが盛り上がりを見せていた時期でもあったので、正直なところ「アルファロメオお前もか」という気分はぬぐえませんでした。


その一方で、後発なのにちゃんと存在感のあるデザインとたたずまいを持っていました。SUVにスタイリッシュなクーペデザインをさせても、やはりアルファロメオは上手い、と思わずにはいられませんでした。

ベースとなるプラットフォームは、ジュリアに採用された「ジョルジオ」で、新世代のプラットフォームとして評価をすでに得ています。ちなみに、ジュリア・クアドリフォリオは2016年にニュルブルクリンク北コースで、量産4ドア車最速(7分32秒)を記録したことでも注目を集めたクルマでもあるのです。


そんなジュリアのプラットフォームを使って作り上げたSUVがステルヴィオ。カテゴリー的には、欧州Dセグメントと呼ばれるカテゴリーで、アウディQ5、BMW X3 ポルシェ・マカンが同クラスのライバルになります。そのステルヴィオもハイパフォーマンスモデルQ4クアドリフォリオで2017年9月に、それまでカイエンが持っていたニュルブルクリンク北コースSUV最速タイムを更新(7分51秒7)したのでした。

ステルヴィオの日本への導入は、2018年7月。3か月遅れて11月にハイパフォーマンスモデルであるQ4クアドリフォリオが日本導入を果たしました。今回はクアドリフォリオについてレポートし、そんな鳴る物入りというか、ニュル最速SUVの冠を引っ提げて登場したステルヴィオQ4クアドリフォリオですから、いったいどんな走りを見せてくれるのか興味深いところです。

ステルヴィオ クアドリフォリオをレヴューした


果たして、いざ走らせてみると、その操縦性は思いきりぶっ飛んだものでした。サスペンションのストローク感は極めて少なく、ハンドルを切ると”その場でスピンするのか?”というくらいグイグイ曲がります。まるで直角に曲がりたがっているかのようなものでした。ドライブモードは「d」、「n」、「a」のモードに加えRACEモードが設定されていますが、いずれもテイストは同じ。RACE→d→n→aとその傾向が穏やかになっていくようですが、ゆったりのんびり走りを楽しむというよりは、適度な緊張感を伴ってスポーティな走りを楽しむのを狙っているように感じました。


クワドリフォリオは、ジュリアと同様に後輪駆動(FR)をベースに、トランスファー(センターデフに相当する部分)に多板クラッチを用いた可変トルク配分式の4WDです。それに加えてクワドリフォリオはリヤデフにもクラッチユニットを持っており、これによって後左右輪のトルクスプリットを行っています。

ハンドルを切り出した瞬間ギュンと曲がり込むような仕草は、サスペンションのセッティングもさることながら、後輪左右のトルクスプリット=ALFAアクティブトルクスプリットによるところが大きいのだと思います。


もちろんこれは思いきり違和感のある操縦性なんですが、ニュルブルクリンク北コースで8分を切る、とんでもないタイムを叩きだすには、このくらい曲がるクルマであることが求められるのでしょう。

実際のところ、ニュルブルクリンク北コースは、時速150~200キロの速域でブラインドコーナーに飛び込んでいくなんてシーンが頻繁にあります。オーバーステアは4WDのトラクション性能で抑え込み、ALFAアクティブトルクベクタリングでグイグイクルマを曲げていく…そんなシーンを思い浮かべると、この操縦性が面白く感じられてきます。

なによりグイグイ曲がり込むような独特の操縦性を持っているのに、SUV独特の車高の高さからくる腰高感は皆無だし、不安定な感じもありません。タイトコーナーが続くワインディングロードをハイペースで走らせてみると、身のこなしがよくクイックイッと小気味よくクルマの向きを変え、次々に現れるコーナーをクリアしてくことができます。ボディの大きさを持て余さないんです。

初めはグイグイ曲がる操縦性に違和感がありましたが、慣れるにつれて、この操縦性が思いのほかワインディングで走りやすく、1・8tを超える車重さえ気にならなくなってきます。

アルファロメオとフェラーリと共同開発したエンジンを搭載!


そして、この操縦性、身のこなしを作り出すもう一つの大きな要因となっているのが、2.9L、V6DOHC直噴ツインターボエンジンです。フェラーリと共同開発したというこのエンジンは、最高出力510馬力、最大トルク600Nmを発揮。最高速度は283km/hを記録し、0→100km/h加速はたったの3.8秒です。

クリープの状態から無造作にアクセルを床まで踏み込んでみると、少しのタイムラグの後、ホントにシートに体が埋まってしまうかのような強烈な加速でクアドリフォリオは猛烈にダッシュしていきます。


発進では少しのラグが…と書きましたが、ある程度回転を上げてスポーティな走り方をしているときのターボのレスポンスは素早く、ほとんどターボラグを感じません。だからカーブの立ち上がりでアクセルを深く踏み込んでいくと、腰のあたりを途轍もない力で押し込まれるように加速をはじめ、クルマの重さがフッと半減したかのような、不思議な重力感覚にとらわれます。

パワーだけが高いだけなく、ターボラグが少なく、アクセルに対するエンジンのピックアップが素晴らしくいいんです。なかなかこのパワーとトルクには慣れないでしょうが、慣れるほどにこのエンジンの扱いやすさを実感できるのではないかと思います。

この強烈な走りの個性は、間違いなくアルファロメオのそれです。百花繚乱のSUVの中にあって、ステルヴィオQ4クアドリフォリオは、ひときわ異彩を放つ存在です。

470Nmの極太トルクが魅せるストレスなく力強い走り


そんな超過激なクアドリフォリオの登場で、いよいよ過激なSUVといったイメージの強いステルヴィオですが、2019年4月に2.2Lターボディーゼル搭載モデルが導入されました。

このエンジンもジュリアに搭載されたディーゼルエンジンと基本的には同じものですが、パワー&トルクは、ジュリアの190馬力/450Nmに対して210馬力/470Nmと、パワフルなチューニングとなっています。

ドライブモードをnモードにしてDレンジで加速していくと、普通に5,000回転オーバーまで回ってからシフトアップしてくれます。ジュリアのディーゼルは4,500回転くらいでシフトアップしていたのと比べると、8速ATのセットアップにも違いがあるようです。


加速していく時の力強さ感≒トルク感もステルヴィオのほうが明瞭で、スポーティな味付けであるように感じられました。

発進時に路面を蹴り出す時の力強さも、ステルビオのほうが力強く感じられます。実際のところ加速にそれほど差はないのではないかと思いますが、ジュリアはジェントルなテイスト、ステルビヴィオはディーゼルでもスポーティなテイストを演出しているように感じられました。

ステルヴィオのSUVらしい収納力も画像で確認


操縦性も、ステルビオ・クアドリフォリオほど過激ではありませんが、面白いくらい良く曲がります。ハンドルを切り出す時には4WDの締結を弱め、旋回中はさらに弱め、コーナー立ち上がりでアクセルを踏み込むと4WDの締結が強くなる。実際にはそんな単純なロジックではないのでしょうが、基本的にはそんな駆動感があります。曲がりたいときにフロントタイヤの旋回グリップ力を引き出しやすいという点でFRベースの4WDはとても都合がよく、またそれをアルファロメオが熟知してセッティングしているというのがよく判ります。


しかも、前後重量配分はステルヴィオもセダンのジュリア同様50対50なので、カーブを曲がっているときのバランスがとてもいいのです。クアドリフォリオのように後輪の左右駆動力配分は行っていませんが、シャシーの素性の良さとして旋回性能の良さがあるようです。

280馬力を発生する2Lガソリンターボのほうが刺激は強めですが、ディーゼルの圧倒的にぶ厚い低回転域のトルクが、ゴー&ストップが頻繁にある街中や、車速が落ちるタイトなコーナーが続く山道では、この低回転域のトルクの厚みが1.8tのボディを苦も無く加速してくれるので、じつはストレスなく気持ちよい走りが楽しめます。


ディーゼルエンジンというと、いまだに大人しいイメージがありますが、極太の低回転域のトルクを積極的に使ってやると、かなり骨太なドライブ感覚が得られます。

超過激なクアドリフォリオの後にディーゼルエンジン搭載車の試乗では、さぞや非力で大人しく感じるのだろうと思っていたのですが、試乗してみるとステルヴィオの素性の良い旋回性能が見られ、極太の低速トルクが思いのほか力強い走りを見せてくれことに驚かされました。楽しさを基準に考えても積極的に選ぶ魅力を持っていると感じました。

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