エンジンオイルにとって重要な「粘度」って一体何?

MOTUL

※この記事には広告が含まれます

寒い冬が終わり、そろそろ暖かくなりおでかけしたくなる季節。長距離ドライブに行く前に古くなったエンジンオイルを変えてみてはいかがでしょう。ですが量販店に行くと「0W20」とか「5W30」というような数字を見たことはありませんか? そこで今回、長年レーシングカーや市販車のエンジンオイルを開発されている工学博士でMOTUL R&D取締役の新井さんに、エンジンオイルの粘度についてお話を伺いました。

文/写真・栗原祥光
Chapter
エンジンオイルにとって重要な「粘度」って一体何?

エンジンオイルにとって重要な「粘度」って一体何?

――まず、エンジンオイルには容器に「0W20」とか「5W30」といった数字が書かれていますが、これはいったいどういった意味なのでしょうか。

「これはエンジンオイルの粘度を表すもので、SAE J300という規格に準じた数字が表記されています。」

「まず大きい方の数字は100度と150度時の油の流れやすさと油膜の厚さを表しています。油の流れやすさは油圧に関係します。エンジンオイルはオイルポンプによってエンジン内部を循環していますが、オイルポンプの容量が充分にあれば、どんなに数字が大きい、つまり硬い油を使っても隅々まで行き渡ります。ですがオイルポンプの容量が足りない、またはエンジンにはリリーフバルブという一定以上のエンジンオイル圧力がかかると圧力を逃がす仕組みがあるのですが、それが開いて圧力が抜ける場合がありますので、マニュアルに従ったエンジンオイルの硬さを選んでください。」

「高温側は温度が一定で粘度を表す数字が変わりますが、低温側は数字そのものが温度を表しています。例えば0Wというのはマイナス35度まではエンジンの始動性を確保しますという意味になります。同じように5Wはマイナス30度、10Wはマイナス25度までと、Wの前の数字が大きいほど対応する温度が高くなります。ですので、お住まいの地域がマイナス25度になるのでしたら5Wを、今年の最低気温はマイナス32度位でしたので、そういった地域の方は0Wをお使いください、となります。北海道の方は外に停めることは少なくガレージに入れられるのですが、それでもマイナス15度や20度となりますので、できるだけ柔らかいものをお使い頂ければと思います。また北海道の冬ですと0Wと5Wではエンジンを始動した時のかかりやすさが全然違います。マイナス10度位からでも変化が出ます。」
▶︎エンジンオイルには車種に合わせて様々な粘度が用意されている。

――寒い冬は0W20 を使い、夏は暑いからと5W30を使った方がいいという声を聴きますが、それは意味があるのでしょうか。

「夏に5W30を使って寒い冬に0W20にするというのは、エンジンがかかりやすくなりますから意味があります。ですが、その逆は意味がありません。0W20で性能保証されているのですから、生涯0W20で問題ありません。地球上では、ほとんどが気温40度以下のところだと思います。エンジン内部はそれよりももっと高い温度なのですから。また、オートバイは違いますが自動車は水温が管理されていて、油温は水温に連動して変化します。ですので、あまり粘度の高いオイルを使うのは勿体無いなぁと思います。」

 
――寒冷地使用車がありますが、その車両に入っているエンジンオイルは普通のエンジンオイルとは異なるのでしょうか。

「今ほとんどのエンジンオイルは工場充填で0Wか5Wですので、そこは関係ないと思います。寒冷地仕様の違いは、ウォッシャー液の違いやバッテリーなどの装備面の違いではないでしょうか。」
――粘度を高くすると、燃費が悪くなるという声をよく耳にしますし、実際に体験しています。それはなぜ起こるのでしょうか。

「油膜が厚いということは、フリクションが大きいということになります。排気量の小さいエンジンほど、フリクションの違いから、燃費が変化するという傾向は顕著に表れます。いっぽう、排気量の大きいエンジンですと燃費の違いは出にくいですね。」
――MOTULには、レーシングカー等に適している300Vシリーズに0W8という粘度のオイルがラインアップされています。これはどのような用途で出ているのでしょうか。

「設計した時点では「8」という粘度の規格はありませんでしたが、現在は策定されています。オイルの成り立ちがレーシングから来ていまして、スプリントで走りたい人、例えばフォーミュラーとかジムカーナ、7周しか走らないVitzレースなどですが、そういった方の中には、エンジンが許す限りロスを減らしたいという要望があり設定しました。純粋なレーシングオイルで、自分で油温・油圧管理ができる人に向けた商品になります。」


――では、自己責任でかつ油温と油圧が管理できる、という条件のもと、燃費を良くしたい、レスポンス向上という目的のため、街乗りで、0W8を使う事はやめた方がいいのでしょうか。

「それは車によります。例えば軽自動車のターボ車、例えばHondaのS660などでは大丈夫です。ですが第2世代スカイラインGT-Rに搭載されているRB26DETTではダメです。RB26DETTは油圧も油膜もを必要とする設計で、私達ではこのエンジン専用としてNISMOと共同で10W60という高い粘度のエンジンオイルを開発しました。エンジンによって必要とする粘度は大きく異なるのです。」

-------------------

現在、ほとんどの車両は0W20が主流で、最近はそれより低粘度のエンジンオイルが登場しています。エンジンオイルの粘度は、自動車のオーナーズマニュアルに記載されています。2種類ある場合は、低粘度側を選択して問題ないとのことですので、そちらを選んではいかがでしょうか。

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細