ベントレー ベンテイガ W12とV8…「悩む」というプロセスまで含めて贅沢な愉悦

2015年秋のフランクフルト・ショーにてワールドプレミアに供され、今やベントレー・ブランドの屋台骨を支える大ヒット作となったベンテイガは、最高出力608ps、最大トルク900Nmを発生する6リッターW12ツインターボエンジンを搭載。8速ATとの組み合わせで最高速度は301km/hに達し、同じフォルクスワーゲン/アウディ・グループに属する身内のランボルギーニから「ウルス」が誕生するまでは「世界最速SUV」として君臨していた。
文・武田公実/Takeda Hiromi 写真・土屋勇人/Tsuchiya Hayato
次世代SUVを見据えた完全装備
加えて、これまでのベントレー「ヒットの法則」における決定的なファクターとなってきた、ゴージャスかつフィニッシュに優れたインテリアはもちろん健在で、ロールス・ロイス カリナンがデビューした今でも、「世界最高級SUV」の一角を占めるモデルとして認知されている。
しかし、新生ベンテイガで何より注目すべきトピックは、次世代のSUVを見据えた当代最新の電制システムで完全武装されていることと筆者は考えている。VW/アウディ・グループが推進する48Vシステムを逸早く実用化し、電動式アクティブ・ロール・コントロールに採用した48Vアンチロールバー「ベントレー・ダイナミック・ライド」や、制御を高度にリファインした気筒休止システムなどにより、これまで特に大型のSUVが不得意としてきたオンロードでのハンドリング、あるいは燃費などの要素を格段にレベルアップさせているというのだ。
筆者はベンテイガが国内デビューを果たした2016年末以来、これまで幾度となくベンテイガをドライブさせる機会に恵まれてきたが、乗るたびにその走りっぷりに刮目させられる。同じSUVでも、ポルシェ・マカンやジャガーFペースなど、二回りも小さなモデルを思わせるような軽い身のこなしに驚かされてしまうのだ。
今やベントレーのシンボルともなった、W型12気筒ツインターボエンジンのハスキーなハミングがかすかに聞こえてくると同時に、猛然とした加速感に襲われるばかりではない。曲率の小さなタイトコーナーから高速コーナーに至るまで、ロールを最小限しか感じさせない鬼神のごときハンドリングを披露する。しかも、全高/重心ともに高いSUVでロールが小さいということは、快適な乗り心地の点でも重要なファクターと言えよう。
なぜこんなにも軽妙な乗り味なのか
この軽妙な乗り味をもたらした最大の要因が、新型アウディQ7と同じ、VW/アウディ・グループの新型軽量プラットフォーム「MLB-EVO」にあることは間違いないだろう。ベンテイガW12の車両重量は、日本仕様の公表値で2440kg。雄大なボディサイズを考えれば、決して過大なものとは言えまい。そして前述の電制システム、中でも「ベントレー・ダイナミック・ライド」が絶大な効力を発揮しているのもまた、間違いないところである。
ただ、新世代ベントレーの嚆矢として投入された電制システムがあまりにも革新的であるためか、旧いベントレーに乗り慣れた筆者にとっては、少なくとも当初はその挙動に若干の不自然さを感じてしまったのも正直な印象であった。でもこの問題は、重箱の隅を衝くレベルとも言える。実際これまで何度かベンテイガW12に乗っている内に、すっかり心地よくなってしまったのだから、筆者の感覚なんて、あまり当てにはならないものと言わざるを得ない。