サーブ(Saab)はどんな車を作るメーカーだったのか?
更新日:2024.09.09
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北欧のスウェーデンの自動車メーカーといえば、ボルボが有名ですが、2000年代初めまで、『SAAB(サーブ)』というメーカーが存在していました。独創的なスタイリング、一風変わったインストゥルメントパネルのデザイン、航空機メーカーが母体という経緯など、他の自動車メーカーとはひと味違った車づくりで知られていました。今回はそんなサーブという自動車メーカーの歴史と現在を紐解いてみましょう。
文・西山昭智
文・西山昭智
サーブはスウェーデンで航空機メーカーとして誕生した
スウェーデンの財閥グループ、ヴァレンベリ家の手によって1937年に設立された『SAAB(サーブ)』。もともとは、スウェーデン軍向けの航空機を製造するメーカーとして誕生した企業であり、社名も「Svenska Aeroplan AB(スウェーデン航空機会社)」の頭文字を取って、SAABと名付けられています。
そんなSAABの自動車部門として、1947年に誕生したのが、SAAB オートモービル。その前年の1946年に完成した美しいティアドロップ型の92001のボディには、Cd値など航空機メーカーならではの発想と技術が投入されていました。
そんなSAABの自動車部門として、1947年に誕生したのが、SAAB オートモービル。その前年の1946年に完成した美しいティアドロップ型の92001のボディには、Cd値など航空機メーカーならではの発想と技術が投入されていました。
1940年代サーブの旧車など名車を画像付きで紹介
1946年の92001をベースに開発されたサーブ初の量産車が92で、フロントに横置きに搭載された水冷2サイクル2気筒エンジンは25馬力という性能ながら、空力性能の高さによって最高速度は105km/hにまで達したといわれています。この92は、1949年から1956年まで製造されました。
92をベースに開発された3気筒モデルの93や4気筒モデルの96は、ラリーを中心としたモータースポーツシーンで目覚ましい活躍を見せています。
1980年まで製造され続けた92シリーズ(92、93、96)がティアドロップ型の美しいスタイリングをしていたのに対し、もうひとつの個性的なモデルが1967年に誕生します。それが99です。
99は、フロントノーズが長くリアエンドが極端に短いハッチバックのようなスタイリングでアメリカを中心に人気を博したモデル。当時、一般的ではなかったターボチャージャーを搭載していたこと(99ターボ:1978年デビュー)も特筆に値します。
ターボエンジンといえば、1973年にBMW 2002が量産車として初採用したことで知られていますが、同じ1970年代にサーブもターボを採用していたのは、航空機メーカーを母体としていたからかもしれません。そしてこの99をベースにして誕生するのが、サーブを代表する名作モデルとして名高い900です。
92をベースに開発された3気筒モデルの93や4気筒モデルの96は、ラリーを中心としたモータースポーツシーンで目覚ましい活躍を見せています。
1980年まで製造され続けた92シリーズ(92、93、96)がティアドロップ型の美しいスタイリングをしていたのに対し、もうひとつの個性的なモデルが1967年に誕生します。それが99です。
99は、フロントノーズが長くリアエンドが極端に短いハッチバックのようなスタイリングでアメリカを中心に人気を博したモデル。当時、一般的ではなかったターボチャージャーを搭載していたこと(99ターボ:1978年デビュー)も特筆に値します。
ターボエンジンといえば、1973年にBMW 2002が量産車として初採用したことで知られていますが、同じ1970年代にサーブもターボを採用していたのは、航空機メーカーを母体としていたからかもしれません。そしてこの99をベースにして誕生するのが、サーブを代表する名作モデルとして名高い900です。
スタイリングは基本的に99を踏襲しつつ、アメリカの衝突安全基準をクリアするため全長を拡大した900。エンジンは、2.0L直4NAエンジンとターボエンジンの2種類があり、ボディスタイルもセダン、ハッチバック、カブリオレの3タイプが存在しました。
この900は日本にも正規輸入され、独創的なスタイリングとキーシリンダーがセンターコンソール上に配置されたユニークなレイアウトによって注目を集めました。1993年にフルモデルチェンジを行い、のちの9-3(ナインスリー)へとつながっていくことになります。
また1984年には、フラッグシップとなる9000がデビュー。イタリアのフィアットと共同開発を行ったモデルで、アルファロメオやランチア、フィアットに9000の姉妹車が存在しています。900ほど斬新なスタイリングではなく、こちらはのちの9-5(ナインファイブ)へとつながっていきます。
この900は日本にも正規輸入され、独創的なスタイリングとキーシリンダーがセンターコンソール上に配置されたユニークなレイアウトによって注目を集めました。1993年にフルモデルチェンジを行い、のちの9-3(ナインスリー)へとつながっていくことになります。
また1984年には、フラッグシップとなる9000がデビュー。イタリアのフィアットと共同開発を行ったモデルで、アルファロメオやランチア、フィアットに9000の姉妹車が存在しています。900ほど斬新なスタイリングではなく、こちらはのちの9-5(ナインファイブ)へとつながっていきます。
サーブ・オートモービルはゼネラルモーターズの傘下に
1990年、SAABはゼネラルモーターズ(GM)の資本提携を受け、2000年には完全子会社となります。当時、独オペルも傘下におさめていたGMになって以降の各モデルでは、オペルの影響を強く受けるようになってきます。
その一方で、9-3にはボルボでも採用されていたロープレッシャーターボが、上級グレードの9-5ではシートヒーターが標準装備されるなど、GM傘下となって以降も北欧らしさあふれる自動車づくりは続けられてきました。
ちなみにこの2モデルは日本にも正規輸入されていましたが、GMが親会社ということもあり、キャデラックやシボレーと同じ販売店に並べられていたこともあります。
9-3は2003年に早くもフルモデルチェンジを行い、2代目の9-3では独創的なスタイリングが消え、落ち着いたデザインへと変更されています。一方の9-5は2010年まで初代モデルが生産され続けていました。
その一方で、9-3にはボルボでも採用されていたロープレッシャーターボが、上級グレードの9-5ではシートヒーターが標準装備されるなど、GM傘下となって以降も北欧らしさあふれる自動車づくりは続けられてきました。
ちなみにこの2モデルは日本にも正規輸入されていましたが、GMが親会社ということもあり、キャデラックやシボレーと同じ販売店に並べられていたこともあります。
9-3は2003年に早くもフルモデルチェンジを行い、2代目の9-3では独創的なスタイリングが消え、落ち着いたデザインへと変更されています。一方の9-5は2010年まで初代モデルが生産され続けていました。
GM破綻を経て「サーブ」というブランドは消滅
アメリカのビッグスリーだったGMが、2009年に破綻。SAABは、オランダのスパイカーに売却されることになるのですが、このスパイカーズの経営不振によって、またしてもSAABというブランドは宙に浮いてしまうことになります。
その後サーブは中国資本のスウェーデン企業であるナショナル エレクトリック ビークルス ウェーデンに買収先が決定。この自動車メーカーにて9-3がEV車として再出発することになったのです。
しかしこのメーカーではSAABというブランド名を使うことはなく、会社名のイニシャルであるNEVSというブランド名で9-3エレクトリックをデビューさせました。
つまり、このEVモデルの誕生によって、事実上SAABというブランドは消滅してしまったのです。
その後サーブは中国資本のスウェーデン企業であるナショナル エレクトリック ビークルス ウェーデンに買収先が決定。この自動車メーカーにて9-3がEV車として再出発することになったのです。
しかしこのメーカーではSAABというブランド名を使うことはなく、会社名のイニシャルであるNEVSというブランド名で9-3エレクトリックをデビューさせました。
つまり、このEVモデルの誕生によって、事実上SAABというブランドは消滅してしまったのです。
スウェーデンの航空機メーカーから派生し、自動車製造部門を担ってきた自動車メーカーがSAABです。決して多くのモデルをラインナップしていたわけではありませんでしたが、その個性は強烈に自動車史で存在感を放ち続けています。
20世紀末に始まった自動車メーカーの再編の渦に巻き込まれ、ついには名前そのものが消滅してしまいましたが、その姿はEVというカタチになって、今後の自動車史で新しい時代を作り上げていくことになるのかもしれません。
20世紀末に始まった自動車メーカーの再編の渦に巻き込まれ、ついには名前そのものが消滅してしまいましたが、その姿はEVというカタチになって、今後の自動車史で新しい時代を作り上げていくことになるのかもしれません。
西山昭智
大学卒業後自動車雑誌の編集部へ入社。アメリカ車を皮切りに輸入中古車やスーパーカー専門誌の編集部を経て独立。現在も紙媒体の自動車雑誌で編集および執筆を行なっている。正規販売ディーラーや中古車専門店などに取材を行なうことが多く、現場でしか聞けない業界の裏話的なものも取り扱い中。好きな車はフランス車。