日産 GT-Rが、エンジンの手組みにこだわるワケ

日産 GT-R

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日本を代表するスポーツカー、日産 GT-Rのエンジンは、究極の走りを実現するために欠かすことのできない大事な要素の一つです。このエンジンの凄さは、設計・技術はもとより、熟練技術者『匠』が1基ずつ手組みしているという「ものづくり」に対する取り組みにもあります。日産はなぜ、この手組みにこだわっているのでしょうか。

文・吉川賢一
Chapter
GT-R用エンジンとは
なぜ手組みにこだわるのか
手組みにするメリットは?

GT-R用エンジンとは

R35 GT-Rは、圧倒的な走りとその走行安定性によって国内外で高い評価を得ています。その走りを支えるのが、専用のVR38DETT型3.8L V6ツインターボエンジンです。

ターボやインタークーラーなど数々の高出力技術を採用し、2017年モデルはライバルを圧倒する最高出力419kW(570ps)、最大トルク637Nm(65.0kgm)を達成しています。

エンジンのパフォーマンスともに注目されているのが、このエンジンが『匠』と呼ばれるプロの職人の手によって、1基ずつ丁寧に組み上げられている点です。

『匠』ってどんな人

日産は、GT-R用エンジンの手組み作業のためだけに、「ものづくり」に卓越した5人の職人を『匠』として選抜しました。彼らは、手の感触でミクロン単位の違いや、聴覚でちょっとした異常が分かるような、プロ集団の頂点に立っている方たちです。

その『匠』によるエンジン組み立て作業は、チリやホコリのないクリーンルームで行い、すべてのエンジンひとつひとつについて、品質確認や性能確認を行うほどの徹底ぶり。完成したエンジンには、手組みの重責を担った証として『匠』のネームプレートが貼り付けられています。

技術者としては大変名誉なことですが、その一方で、いい意味でプレッシャーにもなっていることでしょうね。

なぜ手組みにこだわるのか

通常、エンジンは組み立てラインで生産されます。流れるライン上で多くの作業員が、自分の担当する工程の組付け作業を行い、一連の流れを通して、1基のエンジンが組み上げられます。

一方、GT-R用エンジンは、その作業を『匠』が1人で、しかも手組みで行います。ライン組み立てに比べると、効率は圧倒的に悪くなるやり方ですが、日産はあえて『匠』による手組みにこだわっています。

その理由は、GT-Rというクルマが年間800台の限定販売で、かつ1,000万円以上する高級スポーツカーであること、さらにこのクルマを購入するのは、お金持ちだけではなく、走りにこだわるマニアックな人達も多くいることが関係してます。

つまり日産は、GT-Rを求める人たちの高い要求や期待に応えるために、『匠』による組み立て方法を選択しているのです。

手組みにするメリットは?

エンジンは、数百の部品から成り立っていますが、その部品ひとつひとつには、製造段階において微小なばらつきが発生しています。その微小な誤差のあるまま積み上げていくと、組み付け後の全体のばらつきが大きくなってしまいます。エンジンも工業製品ですので、こういったばらつきは避けられません。そのため通常は、許容できる範囲内におさまるよう部品を管理し、品質を確保しています。

手組みの場合は、パーツのばらつきをさらに少ないものとし、さらに計測しながら部品を組み付けるので、組み付け後の製品のばらつきを最小化することができます。これによって、信頼性の高い、安定した性能を達成でき、エンジンひとつひとつの性能のばらつきも抑えることができるようになります。

また、『匠』の経験に裏付けられた感覚的なセッティングが、クルマの微妙な加速性能やドライブフィーリングに効いてくることもわかっています。
GT-R用のエンジンの手組みは、昨今のラインの自動化が進むなかにおいて、「ものづくり」を意識した象徴的な取り組みといえるでしょう。

すべてのクルマのエンジンに必要なものではないかも知れませんが、ユーザの要求に真摯に向き合う自動車メーカーとしての姿勢や、日産のGT-Rというクルマに対する、熱い思いの一端がうかがえます。

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