ガレージがもたらすセカンドステージ

アヘッド ガレージ

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いっぱしに「自動車趣味歴は26年!」なんて吹聴していて、色々と知った気になっていてもまだまだ新しい発見はあるわけで……。

text:吉田拓生 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.169 2016年12月号]
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ガレージがもたらすセカンドステージ

ガレージがもたらすセカンドステージ

夏の終わりとともに、ボクの生活に新たな習慣が加わった。夕飯の後、コーヒー片手にいそいそと庭先にある建て途中のガレージに籠るのである。

「毎晩ガレージで何してるの?」と呆れた口調で妻が言う。

昔のボクなら、同じことを思ったに違いない。ただクルマを眺めているだけで、何が楽しいのか、と。たまに簡単な整備をすることもあるのだけれど、食後の時間は何もしないことを楽しむ。ポツンとひとりで椅子に腰かけ、微かに口元を緩ませながら。これはもう生活習慣病である。

インターナショナル・ドッグハウス・クラブは、イギリスでも有名な部類に入る自動車クラブである。国際的な犬小屋(?)が自動車とどのようなつながりがあるのかと頭を傾げたくなるが、しかしその会員はグラハム・ヒルやジャッキー・イクス、ジャック・ブラバク等々、おおよそ'60年代のF1ドライバーの大半が加盟する仲良しクラブだったのだ。

と言うと立派に聞こえるが、さらにその根源を辿ると、ドッグハウスというのは「ダメ親父」を表すイギリスの隠語であり、つまり自動車にうつつを抜かし過ぎて、家から追い出されて、犬小屋しか寝る場所がなくなってしまったヤツ、もしくはガレージでクルマと生活するようになってしまったヤツを意味している。昨今のボクはつまり、立派なドッグハウス予備軍になっている。

そんな泥沼にはまったボクに言わせれば、クルマ趣味はガレージがないとはじまらない。古いカメラでも機械式腕時計でも、楽器なんかでもいいけれど、オトコの趣味の主役を張るモノは、必ず相応の入れ物に収まっているハズだ。

見せたがり屋はトランクケースの中に整然と並べていたり、自己満足派はガラスケースの中に飾ったりしているわけで、裸のままで埃にまみれていることはまずないだろう。クルマも同じである。誰だって愛車を屋根付き、シャッター付きのガレージに入れておきたいに違いないのである。

マイ・ガレージを長い間熱望しつつ、しかし縁がなかったこれまでのボクは、雨風を凌げる場所が確保できればそれだけでいい、と考えていた。けれどいざガレージが半完成の状態まで到達すると、これまで見えなかった世界観が見えてくる。

いや世界観なんてカッコイイものじゃない。雨風凌げるのは当たり前で、どうせなら自分のクルマ趣味を反映させた空間にしたい、という欲望だ。いい歳して恥ずかしいのだけれど、正直に告白するとクルマ趣味歴26年にして今が一番ときめいているかもしれない。

いや、ガレージがないとクルマ趣味がはじまらないのだとすれば、ボクはピカピカの1年生なのだから、ときめいていなくちゃ話にならない。
普段は自分の趣味を押し売りしないボクだけれど、しかしガレージはお薦めだ。そこにはマイ・ガレージを持った人にしかわからない楽しみが存在するのだから。

フェラーリ好きや国産改造系のヒト、モーターサイクル命のライダーやボクのように古いイギリス車を愛好している輩にも、それぞれが理想とするガレージがある。それらは愛車と自らのライフスタイルの懸け橋となって、充実した時間を長持ちさせてくれる存在なのである。

本当に「ドッグハウス」なヤツになってしまうのはゴメンだけれど、ガレージの片隅にロフトを作る予定なので、そこにキャンプ道具をあれこれと持ち込んで昼寝ぐらいはしてみようかと考えている昨今のボクである。

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text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。
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