埋もれちゃいけない名車たち vol.54 アルファ ロメオという矜持

アヘッド アルファ ロメオ

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今回の特集は〝責任〟そして〝品格〟というのがテーマ──という知らせが届いたとき、僕は別の理由で調べ物をしていて、〝このクルマ、いや、このブランドの根底に流れてるのって、まさしくそれだよな〟と開いていたページを見ながら思ったのだった。〝このブランド〟というのはアルファ ロメオであり、〝このクルマ〟は2005年デビューのブレラというクーペである。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.170 2017年1月号]
Chapter
vol.54 アルファ ロメオという矜持
アルファ ロメオ・ブレラ

vol.54 アルファ ロメオという矜持

嘘だろ? と思う方もおられることだろう。だってアルファって特徴的なエンブレムと盾のグリルがあること以外はまるで衣装を着替えるみたいにころころとスタイリングのコンセプトを変えるでしょ──と。

ブレラってフィアット・グループがGM(ゼネラルモータース)と提携してた時代の名残でプラットフォームはGMと共同開発だしエンジンのブロックはオペルと同じだし、いわば黒歴史の頃のモデルじゃん──と。

確かにアルファのスタイリングは世代ごとにガラリと様相が変わり、イメージを継続する期間も短い。ブレラとその姉妹車達の時代には、GMと様々な部分を共用していたことも事実ではある。表面だけを見るならそんなふうに思われても仕方ない。

が、僕としては否、なのだ。

100年を軽く超えるアルファの歴代モデルを順番に見ると、当然のことのように一貫性がないことが判る。でも、同時に個々のモデルが間違いなく美しく、美意識に溢れていることも判る。

理由は明白だ。一貫性を保つことなんかよりも、ハッとするような印象的な美しさを時代ごとに紡ぎ出すのがだと考えてるからだ。それこそが連綿と続くアルファのデザイン哲学なのである。

ブレラにはGM由来のパーツ類が大小たくさん使われてるが、ポン付けされてるわけじゃない。エンジンはキッチリとシャープにチューンアップされているし、ハンドリングなどは別のステージに上がったかと思えるくらい素晴らしい領域へと持ち上げられている。

アルファはレーシングカーのように過激なものと思ってる人もいるようだが、それは全然違っていて、市販モデルにおいてはどんな時代も日常領域で「楽しい」「気持ちいい」と感じられるクルマを追求するのが矜恃であり続けたブランドである。

ブレラの時代以降のアルファは歴史的モデル達のような〝濃さ〟を失ったという声もあるが、アルファのエンジニア達は時代の要求に応えながら、与えられたモノで〝アルファ・ロメオの矜恃〟を保とうと苦心し続けてきた。

だから古のモデルへの追憶的視点を横に置いてニュートラルな気持ちで走らせると、どのモデルも実はとても素晴らしいのだということが素直に体感できる。

僕はそんなところにアルファ・ロメオの〝責任〟と〝品格〟を、どうしても感じてしまうのだ。

アルファ ロメオ・ブレラ

ブレラは2005年発表の、159というセダンをベースに開発されたス2+2のクーペ。ジウジアーロによるスタイリングはキリッとした表情の存在感のある顔つきと、それ以上に短いリアのオーバーハングのうえに成り立つ絶妙なボリューム感のリアの造形が特徴的だった。

エンジンは2.2ℓ直4の185psと3.2ℓ・V6の260psで、駆動は2.2ℓはFF、3.2ℓはAWD。

時代的にも企業としての事情の上でも、性能はともかくとして、エンジンで個性を出すのが困難だったせいか、エンジニア達はハンドリング性能を徹底的に磨いた。その方法論はミトやジュリエッタに受け継がれている。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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