C-HRは新種のプリウスだった!?

アヘッド C-HR

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自動車史に残る大事件である。日本自動車販売協会連合会(自販連)による2017年4月の新車乗用車販売台数月別ランキングで、トヨタのコンパクトSUV、C-HRが初の首位に躍り出たのだ!SUVを名乗るクルマが月間販売台数で1位になるのは史上初ではあるまいか。

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.174 2017年6月号]
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C-HRは新種のプリウスだった!?

C-HRは新種のプリウスだった!?

SUV大国アメリカでさえ、1位のフォードFシリーズは、SUV的な使われ方をされているにしても、外観上はどう見てもトラックであって、SUVではない。ヨーロッパではフォルクスワーゲン・ゴルフがあいかわらず磐石の1位で、SUVが世界的ブームとはいえ、これがティグアンに取って代わるとは考えにくい。

トヨタによると、受注1ヵ月の購買層は男性が8割で、20〜30歳が3割を占め、若い人にも好評である。下取りはRAV4やヴァンガード、ラッシュなどのSUVに加えて、プリウス、アクアが多いという。

自動車の概念における静かな革命が極東の島国で起きつつある……。Carに対するアンチとして周縁にいたSUVがセンターに出てきたのだ。

ご参考にベスト5とその台数を記しておくと、以下のようになる。

1、トヨタ C-HR  1万3168台
2、トヨタ プリウス   9920台
3、日産 ノート       9263台
4、ホンダ フリード     9111台
5、トヨタ アクア    7762台

昨年同期の1位はプリウスで2万770台。2位のアクアの1万3099台を大きく引き離し、ダントツのトップだった。1年後に、販売台数の半分をC-HRに譲ったことになる。
なあんだ。そう考えると、それほどの大事件でもないようにも思われる。仮に筆者が3代目プリウスのオーナーで、車検も2回とったから、そろそろ新しいモデルに買い換えるべくトヨタの販売店に行ったとしよう。いらっしゃいませ。といわれてショールームを見渡すと、現行4代目プリウスがあって、プリウスだな……と思う。

そこにトキメキはない。だってもう見慣れている。プリウスの横に見たこともない、「スターシップ・トゥルパーズ」に出てくる昆虫型宇宙生物みたいなのが飾ってある。照明でキラキラ輝いている。

考えてみたら、オレ、カブトムシが好きだったなぁ。プリウスは2代目から乗り継いでいて、燃費がいいところは気に入っている。不満は特にない。

こういう人を相手にすれば、営業マンが背中を押すのはたやすい。C-HRは現行プリウスと同じプラットフォームのTNGAで、ハイブリッドもある。どっちを買っていただいてもよいけれど、C-HRはプリウスより10万円ほど高いし、彼自身、プリウスを売るのに飽きている。

人間は飽きる動物である。飽きるから、ほかのことをやりたくなる。C-HRはおそらくSUVというより、新種のプリウスとして受け入れられたのだ。ほとんど推測ですけど。
●C-HR
車両本体価格:¥2,905,200〜(G/ハイブリッド2WD、税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,360×1,795×1,550
エンジン:直列4気筒DOHC 総排気量:1,797cc 
乗車定員:5名 車両重量:1,440㎏

【エンジン】最高出力:72kW(98ps)/5,200rpm
      最大トルク:142Nm(14.5kgm)/3,600rpm
【モーター】最高出力:53kW(72ps)  最大トルク:163Nm(16.6kgm)
      JC08モード燃費:30.2㎞/ℓ 駆動方式:前輪駆動

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

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