なぜアテンザが世界から注目されるのか ーMAZDA ATENZAー

アヘッド マツダ アテンザ

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日本のみならず、世界でも高い評価を受けるクルマが生まれたのはなぜか。2013-2014年日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)のエモーショナル部門賞でアテンザに満点を入れた千葉 匠氏、片岡英明氏を迎え、COTY実行委員をつとめる本誌プロデューサー、近藤正純ロバートがお話をうかがった。

text:近藤正純ロバート [aheadアーカイブス vol.136 2014年3月号]
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なぜアテンザが世界から注目されるのか

なぜアテンザが世界から注目されるのか

近藤:アテンザを語るにあたっては、「世界的評価の高さ」ということに触れないわけにはいかないと思います。2013年にデザインの世界的権威である「ワールドカーデザインオブザイヤー」のベスト3に選ばれたことは未だ記憶に新しい。

千葉:僕は日本に5人いるこの賞のデザイン・エキスパートの一人なんです。まず5台を選び、それに英語のコメントを付ける。それが全世界60人の審査員の参考にされるわけですが、アテンザのデザインは世界に通用する、と確信がありましたね。

片岡:ベスト3の他の2台は、ジャガー・Fタイプとアストン・マーチン・ヴァンキッシュで、FFのセダンであるアテンザに比べるとデザインの自由度も投入できる資金も遥かに高いわけです。その中で残ったというのはすごい。走っている姿も美しく、自然に目が追ってしまいます。そういうクルマは日本車では極めて少ない。

近藤:なるほど。デザインと技術が切磋琢磨しているんですね。

片岡:世の中的には内燃機関はもう終わりなのかなという空気が漂いつつあったときにマツダがスカイアクティブを出してきた。まだまだいけるんだという希望を与えてくれた。革命的だったと思います。

千葉:日産のように一足飛びに電気自動車には行けないという事情もあったにせよ、マツダの人たちはもうどうしようもなくクルマが好きだから、今の時代に、何とか自分たちが乗って楽しいクルマを造りたかったんだと思うね。
近藤:考えてみればスカイアクティブに関わらず、走りのフィーリングにこだわって、現行ロードスターのマイナーチェンジで鍛造クランクに15億円の投資をするような会社ですからね。

片岡:マツダという会社の歴史的なDNAでしょうね。昔のマツダ車は軽自動車に4気筒の総アルミのエンジンを使ったりしていた。ミラーサイクルエンジンもそうですし、パワーウィンドウに引き上げ式を採用したのもマツダが最初です。技術的にも常に果敢に攻めてきている。その地道な積み重ねや蓄積がスカイアクティブにつながってきたのだと思いますね。クルマ好き集団ですから、そうなったらデザインチームだって負けてはいられない。

近藤:海外のジャーナリストにも、マツダのこの独自のテクノロジーへのこだわりを高く評価する声が多いですね。「スカイアクティブエンジンはマツダのエンジニアのたゆまぬ努力と情熱によって実現されたものだ」と。今、アテンザのような国産車があるというのは日本人としては鼻が高いですね。

千葉:乗っていて誇りに思えるクルマだと思いますね。それにあの、ある種のなまめかしさまで表現できるというのは、単に与えられた仕事をこなすだけでは無理なんです。つくっている人たちの精神性の高さの表れだと思っていい。

片岡:コンセプトカーに近いデザインを量産車で実現し、走りのどこにも破綻がない。普通なら諦めるところを諦めず、ここまで高いレベルでまとめたというのは本当に凄いことです。乗っていると、あぁこういうことを表現したかったのだなとか、設計者が語りかけてくることがあるんです。そういう意味で、乗っていても飽きることのないクルマ。是非、多くの日本の人たちにも乗って欲しいですね。

近藤:千葉さんは25年にわたって、クルマをデザインの視点から観て来られたわけですが、これだけアテンザのデザインが評価された理由は何でしょう。

千葉:一口にデザインといっても、モノの形というのは独立してあるわけではないんです。そのモノが何であるかを見る人に伝えるのがデザインの大きな役割です。機能やキャラクターや世の中における存在価値を含めて、お客さんが実際に見て触って使う前に伝えるわけです。ピュアなデザインがいいと言われるのは、その方がより伝わるからです。変なラインをひとつでも入れると、そこに目がいってしまって、本来伝えるべきモノの中身が分からなくなってしまう。
片岡:確かにアテンザはどういう走りをするかがよく伝わってきますね。

千葉:でもデザインの段階ではそのクルマがどんな風にダイナミックなのか、どんな風にスポーティに走るのかはまだ分からないんですよね。

近藤:そこにデザイナーの力量が問われるわけですね。

千葉:そうです。こうしたいというプランナーの意図をデザイナーが実感を持って分かることが大事です。デザイナーが走りがうまくなかったり、さまざまなクルマに乗った経験がなかったりすると、コミュニケーションは成り立ちません。

近藤:その点、マツダは…。

片岡:みんなクルマが大好き。開発もデザイナーも広報も。

千葉:デザインのまとめ役の前田育男氏は〝社内最速〟と言われるくらいだから。

近藤:アテンザのデザインは、まさにアテンザの持っている価値=走りへの期待感を感じさせますが、クルマ全体としてみれば、デザインと走りのいずれもが熟成されなければ良いクルマとは言えないですよね。

千葉:もちろんです。このアテンザのデザインは、スカイアクティブエンジンが前提となっています。そこがこれまでとは大きく違うところですね。スカイアクティブによってエンジンが後方排気になったことで、ボンネットが伸びてタイヤとペダルの位置関係の自由度が高くなった。さらにキャビン自体も後ろよりになるから、少しFRっぽいデザインになったんですね。

片岡:そのせいかどうか、走りもFRっぽいんですよ。これはFRなんですよと言われたらほとんどの人は分からないんじゃないでしょうか。そのくらい気持ちのいい走りをします。アンダーステアが出て曲がらないということもなく、すーっと曲がって行く。先代まではもう少し分かりやすい「スポーティさ」を演出していた感じがあるのですが、そういった過剰な表現も感じられませんね。箱根で走ったら楽しいけど、街中ではちょっと疲れちゃうというようなこともない。ハンドルを切ったら、車体の動きがそれに沿ってきてくれるという感じです。ロードスターやRX-8のDNAを持っていながらも、さらに大人っぽくなって、グランドツーリングの表現がなされています。
片岡英明
モーター・ジャーナリスト。教職についたのち自動車専門誌の記者に転身、1986年に自動車評論家として独立。分かりやすい文章と、クルマのトータル性能、デザイン、素材、ヒストリーなどに対する独自の視点をもった分析とで、カー・マニアのあいだで人気が高い。
千葉 匠
自動車評論家。デザインジャーナリスト。デザインを通してクルマを語ることのできる日本で数少ない評論家。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールドカーオブザイヤー日本代表審査員の他、デザイン関連の数々の審査員をつとめている。
▶︎近藤正純ロバート
本誌・プロデューサー。COTY実行委員。
米国サンフランシスコで生まれ、英国、日本で育つ。

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