イタリアのMOTO GUZZI(モトグッチィ)とは何か

アヘッド イタリアのMOTO GUZZI(モトダッチィ)とは何か

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モトグッツィには昔からV7と名のつくモデルがいくつもある。

共通しているのは、空冷の90度V型2気筒エンジンを縦置きに懸架、シャフトを介して後輪へと駆動力を伝える…といったところだ。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.124 2013年3月号]
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イタリアのMOTO GUZZI(モトダッチィ)とは何か
MOTO GUZZI 2013MODELS

イタリアのMOTO GUZZI(モトダッチィ)とは何か

MOTO GUZZI 2013MODELS

モトグッツィには昔からV7と名のつくモデルがいくつもある。

共通しているのは、空冷の90度V型2気筒エンジンを縦置きに懸架、シャフトを介して後輪へと駆動力を伝える…といったところだ。

ただし、デビュー当初のⅤ7と最新モデルとの間には、実に50年近い隔たりがある。ひとくくりにV7と言っても、65年のミラノショーで発表された初期型を思い浮かべる人もいれば、今年から導入された新型をイメージする人もいるといった具合で、少々ややこしい。

しかも、今も昔も車体やエンジンの基本構造は変わっておらず、性能も大差がない。最高出力は、50馬力を境に前後する程度で、車重もおおよそ200㎏程で推移。まるで進化を止めてしまったかのように、60年代のスペックのまま、V7は生き長らえているのだ。

これは、他のモトグッツィの現行モデルにもおおよそ当てはまる。そこに至った背景を歴史から紐解いてみよう。

モトグッツィの設立は、1921年のこと。きっかけは、さらに数年遡る。第一次世界大戦の真っ只中に3人のイタリア空軍候補生が出会ったことがきっかけだった。

機械を得意とする「カルロ・グッツィ」と富豪一族の息子である「ジョルジョ・パローディ」、そしてレーサーとしてもパイロットとしても優れた資質を持っていた「ジョヴァンニ・ラベッリ」の3人である。

彼らは、オートバイの話題で意気投合。戦争が終わったら、オートバイメーカーを興そうと誓い合ったのだ。それぞれの役割は明白で、グッツィが図面を起こす傍ら、パローディがその資金を調達。レースを通しての広告宣伝はラベッリと、個々の能力を活かす場も決まっていた。

幸運にも、戦争を生き延びた3人の行く末は光り輝いているように見えたが、あろうことか、ラベッリが飛行機事故で他界するという悲劇が、終戦の数日後に起こってしまう。

 それでも結束は揺るがなかった。グッツィとパローディは、会社名を「モトグッツィ」と命名し、そのシンボルに翼を広げた鷲の図柄を採用。これはイタリア空軍のシンボルマークでもある。雄々しいその姿にラベッリの勇姿を重ね合わせたのだ。

 それだけではなく、ラベッリに託すはずだった車両をレースに送り込む。最初の成功は会社設立の年のシチリア島で行われた公道レース、「タルガ・フローリオ」で早くも達成。3速のギヤボックスを備える500㏄のシングルエンジンでこのレースを制覇してみせた。

 以降、モトグッツィのモデルは、どれも先進技術の塊で知られるようになる。多気筒化はもとより、その配置も直列縦置き、横置き、V型と様々で、スーパーチャージャーDOHCを採用するなど、その技術力は圧倒的だった。なかでも異彩を放ったのは、55年の世界グランプリに送り込まれたV型8気筒のモンスターマシン、「オットー・チリンドリ」(右頁下写真)だろう。世界グランプリ史上で、最も野心的な一台として知られ、ベルギーGPでは286キロという最高速度も残している。

49年にスタートした世界グランプリでは、その初年度を含めて57年までに8個もの世界タイトルを獲得。すべてが順調に見えていたが、市販車は比較的オーソドックスな単気筒モデルを主軸としていたので、レースのイメージとは乖離していた。

そのため、レース結果に対して市販車の売り上げが伸びず、会社の資金繰りを圧迫し始めたこともあって、世界グランプリからの撤退を余儀なくされたのである。その後のモトグッツィは、マーケットの拡大に力を注ぎ、かのフィアット500のエンジンも試作している。結果的に、これは不採用になったが、もうひとつの大仕事は見事に形にしてみせた。

それが国からの依頼を受け、警察機関用として開発された初代V7である。高速化時代を前に、オートバイにも排気量とパワーの向上が求められるようになったため、704㏄の縦置きV型2気筒エンジンを開発。ほどなく、排気量は748㏄に拡大され「V7スペシャル」、「V7スポルト」と進化し、市販車としても絶大な人気を得るようになったのだ。

これを機に、モトグッツィのモデルは、すべてこのエンジン形式へと切り替わり、今に続いているのである。

現代のモトグッツィに乗っていつも感じるのは、「これで充分」という満足感だ。確かに、多くのバイクはここ数十年の間、恐ろしいスピードで進化を果たした。しかし、それを走らせるべき道路は、街中もワインディングも高速道路も60年代から、大きく変わってはいないのが実情だ。

だとすると、その当時、最も先進的で、かつ完成の域に達していたモトグッツィを今走らせたところで不満が無いのは、当然ではないか。その性能をそっくり受け継いでいる現行のモトグッツィも同様である。

モトグッツィは変わらなかったのではなく、変える必要がなかったのだ。
California CUSTOM(年内導入予定)
エンジン:空冷90°V型2気筒SOHC4バルブ1380㏄
最大出力:95hp(71.0 kW)/ 6600rpm(本国データ)
New V7 Racer(年内導入予定)
エンジン:空冷90°V型2気筒OHV2バルブ744㏄
最大出力:50hp(37.0 kW)/ 6,200rpm
V7 Special
エンジン:空冷90°V型2気筒OHV2バルブ744㏄
最大出力:50hp(37.0 kW)/ 6,200rpm
最大トルク:60Nm/2,800rpm
全長×全幅 ×全高:2185×800×1115㎜
車両重量:198㎏
価格:1,050,000円
V7 Stone
エンジン:空冷90°V型2気筒OHV2バルブ744㏄
最大出力:50hp(37.0 kW)/ 6,200rpm
最大トルク:60Nm/2,800rpm
全長×全幅 ×全高:2185×800×1150㎜
車両重量:198㎏
価格:898,000円
1200 Sport 4V
エンジン:空冷90°V型2気筒SOHC4バルブ1151㏄
最大出力:105hp(77.0 kW)/ 7,000rpm
最大トルク:105Nm/6,750rpm
全長×全幅 ×全高:2195×820×1180㎜
車両重量:257㎏
価格:1,398,000円
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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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