ECO時事通信 vol.10 技術がコラボする時代
更新日:2024.09.09
※この記事には広告が含まれます
東京モーターショー開催期間中の2011年12月2日、トヨタとBMWの共同記者会見が行われた。2014年から欧州で生産・販売されるトヨタ車にBMW製ディーゼル・エンジンが搭載されるとともに、バッテリー技術など広範囲で提携していくというのがその内容だ。
text:石井昌道 [aheadアーカイブス vol.110 2012年1月号]
text:石井昌道 [aheadアーカイブス vol.110 2012年1月号]
- Chapter
- vol.10 技術がコラボする時代
vol.10 技術がコラボする時代
日本はハイブリッドカーやEVといった電気系、欧州はクリーンディーゼルに高効率ガソリン・エンジンなど内燃機関を中心に環境対応技術の高度化を図ってきた。
これまでは「ハイブリッドVSディーゼル」「電気系VS内燃機関」という構図で見られがちだったが、地域によって需要が大きく違うことを考えれば、グローバル企業としてビジネスをしていく上でどちらかに偏っていては具合が悪い。
だからどちらも幅広くラインアップしておく必要があるが、電気系も高効率な内燃機関も研究開発には莫大なコストと時間が掛かる。技術的に開発ができないわけではないとしても、効果的な提携によってそれらを圧縮するとともに量産効果で販売価格を下げることもできる。
自動車メーカーには常に数の理論、スケールメリットがつきまとってきたが、ここにきて環境対応技術の高度化、複雑化がその傾向を後押ししているかっこうだ。
2009年、2010年に世界販売台数で一位のトヨタでさえ、電気系に選択と集中したことでディーゼルをBMWから調達するほうが効率的と判断したのだから、規模が大きくないメーカーが独自ですべてを開発し、競争力を発揮するのは至難の技と言える。
自動車メーカーの先端技術力でいえば、日本とドイツは世界でも双璧をなしているだろう。この両者が手を組めばかなり理想的な展開になるはずだ。
ちなみに電気系では、1997年からハイブリッドカーが販売されている日本は、ユーザーフィードバックなども含め経験が豊富だが、ドイツも大学などと産学協業でバッテリーの基礎研究する体制が整っており、また脱・原発を掲げ太陽光発電など再生可能エネルギーに力を入れている国だという強みもある。
2011年9月のフランクフルトモーターショーで詳しい提携内容を発表したルノー日産とダイムラーにも日本とドイツの技術コラボレーションが期待されている。
ほぼ同じ時期にフォルクスワーゲンとスズキが決裂したので、提携には乗り越えなくてはならない壁が存在するのも事実。だが、フォルクスワーゲンAG取締役会会長のマルティン・ヴィンターコルン氏は東京モーターショーのプレスカンファレンス冒頭で「日本の自動車メーカー、部品メーカーの技術力の高さ、日本市場の先進性をリスペクトしている」と語っていた。
さらに、短い滞在時間中はメディアのインタビューなどを入れることを許さず、電気系を得意とする日本の部品メーカーを精力的に訪ねていたとも聞く。ドイツ最大にして世界一も目前のフォルクスワーゲンにとっても、電気系では日本と手を組むことが不可欠だと考えているのだろう。
日本側でいえば、頑なに独立独歩を維持し続けているホンダが気になる存在。もともとは内燃機関を得意としてきたが、ここ最近は電気系に力を入れてきたこともあって現時点でのラインアップは先進的とは言えない。
もう数年で次世代型内燃機関や、フルハイブリッドにEVといった進化した電気系が出揃ってくることはコンセプトカーなどから伝わってくるが、やはり独立独歩はスピーディさに欠けることが見えてきてしまう。
いずれにせよ、環境対応技術をフックとして自動車業界再編の大波がやってきたことは間違いない。その主役が日本とドイツ。規模が小さなメーカーは、キラリと光る技術やブランド力などを発揮してキャスティング・ボートを握るのが生き残りの近道だろう。
これまでは「ハイブリッドVSディーゼル」「電気系VS内燃機関」という構図で見られがちだったが、地域によって需要が大きく違うことを考えれば、グローバル企業としてビジネスをしていく上でどちらかに偏っていては具合が悪い。
だからどちらも幅広くラインアップしておく必要があるが、電気系も高効率な内燃機関も研究開発には莫大なコストと時間が掛かる。技術的に開発ができないわけではないとしても、効果的な提携によってそれらを圧縮するとともに量産効果で販売価格を下げることもできる。
自動車メーカーには常に数の理論、スケールメリットがつきまとってきたが、ここにきて環境対応技術の高度化、複雑化がその傾向を後押ししているかっこうだ。
2009年、2010年に世界販売台数で一位のトヨタでさえ、電気系に選択と集中したことでディーゼルをBMWから調達するほうが効率的と判断したのだから、規模が大きくないメーカーが独自ですべてを開発し、競争力を発揮するのは至難の技と言える。
自動車メーカーの先端技術力でいえば、日本とドイツは世界でも双璧をなしているだろう。この両者が手を組めばかなり理想的な展開になるはずだ。
ちなみに電気系では、1997年からハイブリッドカーが販売されている日本は、ユーザーフィードバックなども含め経験が豊富だが、ドイツも大学などと産学協業でバッテリーの基礎研究する体制が整っており、また脱・原発を掲げ太陽光発電など再生可能エネルギーに力を入れている国だという強みもある。
2011年9月のフランクフルトモーターショーで詳しい提携内容を発表したルノー日産とダイムラーにも日本とドイツの技術コラボレーションが期待されている。
ほぼ同じ時期にフォルクスワーゲンとスズキが決裂したので、提携には乗り越えなくてはならない壁が存在するのも事実。だが、フォルクスワーゲンAG取締役会会長のマルティン・ヴィンターコルン氏は東京モーターショーのプレスカンファレンス冒頭で「日本の自動車メーカー、部品メーカーの技術力の高さ、日本市場の先進性をリスペクトしている」と語っていた。
さらに、短い滞在時間中はメディアのインタビューなどを入れることを許さず、電気系を得意とする日本の部品メーカーを精力的に訪ねていたとも聞く。ドイツ最大にして世界一も目前のフォルクスワーゲンにとっても、電気系では日本と手を組むことが不可欠だと考えているのだろう。
日本側でいえば、頑なに独立独歩を維持し続けているホンダが気になる存在。もともとは内燃機関を得意としてきたが、ここ最近は電気系に力を入れてきたこともあって現時点でのラインアップは先進的とは言えない。
もう数年で次世代型内燃機関や、フルハイブリッドにEVといった進化した電気系が出揃ってくることはコンセプトカーなどから伝わってくるが、やはり独立独歩はスピーディさに欠けることが見えてきてしまう。
いずれにせよ、環境対応技術をフックとして自動車業界再編の大波がやってきたことは間違いない。その主役が日本とドイツ。規模が小さなメーカーは、キラリと光る技術やブランド力などを発揮してキャスティング・ボートを握るのが生き残りの近道だろう。
-------------------------------------------
text:石井昌道/Masamichi Ishii
モータージャーナリスト。スポーツカーやモータースポーツを愛する一方、ハイブリッドやEVに造詣が深い。取材力と鋭い分析力を生かし、自動車業界の行く末について執筆や講演を行っている。現在の愛車は『インサイト』。
text:石井昌道/Masamichi Ishii
モータージャーナリスト。スポーツカーやモータースポーツを愛する一方、ハイブリッドやEVに造詣が深い。取材力と鋭い分析力を生かし、自動車業界の行く末について執筆や講演を行っている。現在の愛車は『インサイト』。