現代のスーパーカー④LEXUS LFA 量産メーカーの情熱と意地

アヘッド LEXUS  LFA

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「トヨタのクルマ」と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろう? よくできてる。割安。壊れない。ソツがない。クセがない。つまらない。肯定的なモノもそうじゃないモノも含めて、そんなところだろう。


text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.114 2012年5月号]
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量産メーカーの情熱と意地

量産メーカーの情熱と意地

80点主義──1960年代半ば辺りからのトヨタのクルマ造りの思想のひとつで、自動車に求められる全ての項目でまず80点を達成し、そこから磨きをかけようという考え方だ。

結果、トヨタのクルマはトータルバランスとコストパフォーマンスに優れたモノとなったが、同時に個性の薄い、“それなり”に満足のいく“そこそこ”いいクルマの数々を生み出す結果にも繋がった。現在でもその名残が完全に消えたとは言い難いようなところがどこかにある。数年間だけつきあう暮らしの道具としては最良に近いけれど、と。

それも道理だろう。自動車生産台数世界一を記録した世界有数の大企業である。一部のマニアを喜ばせるための尖ったクルマなんて、ビジネスとしても、また精神的にも、絶対に作れない。誰もがそんなふうに考えていた。

だから2005年1月にトヨタの高級車ブランドとしての位置づけを担うレクサスから『LF|A』という名の本格的スーパースポーツカーのコンセプトモデルが発表されたとき、その4年半後に角が丸められるわけでなく、むしろ純度を徹底的に高めた形で市販に移されることになるとは誰も思っていなかった。

そのイメージを持った、もうちょっと眠いスポーティーカーになるだろう、と考えていたクルマ好きも少なくなかった。2009年10月の東京モーターショーで発表されたレクサス『LFA』の日本での売価は3750万円。世界500台の限定生産車として予約が開始され、瞬く間に売り切れた。

パフォーマンスとしてはフェラーリやランボの牙城に完全に喰らい込み、ニュルブルクリンクでのタイムアタックでは当時の量産メーカーの市販車としての最速ラップを刻み、それだけではなく他のどのスーパースポーツカーにも引けをとらない官能性を持ち合わせていた。10年前のトヨタでは、とても考えられない。

このクルマのプロジェクトを初期の段階から支えていたのは、まだ社長に就任する前の現社長、豊田章男さんだといわれている。デビューしたばかりの“86”は、大ヒットしているだけでなく、オーダーした人の30%近くがクルマ離れしてるはずの20代なのだという。

これも章男社長の存在なくして実現はしなかったプロジェクト、というのは周知の事実である。そして今、LFAの後継車の計画がスタートしたという噂が湧き上がっている。

クルマというものに対する熱い想いを持ったリーダーの存在。妙にワクワクとした期待感を持ってしまうのは僕だけだろうか──。


*レクサス『LFA』は、プロトタイプ時代には『LF-A』という名前を与えられていた。
レクサスLFAは、トヨタの高級ブランド・レクサスのチャネルで'09年に市販仕様車が発表され、500台のみ限定生産されるスーパースポーツカー。

計画段階から10年近くの歳月を開発に充てたLFAは、トヨタとその関連会社の技術の粋を結集したもので、何もかもが新設計。V10NAを搭載したFRモデルで、車重は1,480kgと軽量。最高速は325km/h、0-100km/h加速タイムは3.7秒と第一級の性能を誇る。2010年のニュルブルクリンク24時間レースでクラス優勝を収めた。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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