R35GT-Rに採用されているセミドライサンプ方式とは?ドライサンプとの違いは?

まずはオイル循環の仕組み

ガソリン、ディーゼルを問わずエンジンの付いた自動車であればエンジンオイルは必ず必要です。エンジンオイルは、高温で動作を繰り返すエンジンの潤滑と冷却を助け、いわゆる「エンジンの焼き付き」を防いでくれる大事な消耗品と言えます。

このエンジンオイルは、通常エンジンの最下部にある、オイルパンと呼ばれるタンクにためてあります。エンジンを動かすと、同時にオイルポンプが動作し、オイルポンプがくみ上げたオイルはエンジン内部のオイルが必要な部分に圧送されるのです。

そして、このオイルは最終的にシリンダー内に戻り、重量に任せる形でオイルパンへ落ちていきます。これがエンジンオイルが循環する仕組みです。

しかし、これには欠点も。オイルパンの中で前後左右に揺れるオイルは、強い横Gが発生したときに極端に片側に偏る事が考えられます。その瞬間、オイルポンプがオイルを循環させられなくなり、エンジンにオイルが行き渡らなくなるケースが想定されます。結果エンジンブローにも繋がるため、特にサーキット走行も見据えて作られるスポーツカー等では、リスクの伴う構造となります。

また、4気筒2000ccクラスの国産車でも、オイルは4リットル程度必要でしょう。それをためておくだけのオイルパンをエンジン下部に設けるため、どうしてもエンジン設置位置が高くなり、重心が上がるなど、重量バランスとしては良いと言えません。この方式をウェットサンプ方式と呼ばれます。

そこでドライサンプの登場

そこで、サーキット走行も見据えたようなスポーツカーの場合、ドライサンプ方式を用います。ドライサンプは、専用のオイルパン(ほとんどオイルが入らない)を設置したうえで、オイルタンクを別設置とし、そのオイルタンクからオイルポンプによってエンジン全体にオイルを行き渡らせます。

その為、縦横Gに関係なく、安定したオイルの供給が行えるのが一番の特徴と言えます。また、オイルタンクの容量を選択する事でオイルの容量を用途に合わせて調整できるので、レースなどの目的やエンジン、車の性格に合わせて最適な量のオイルを確保する事が可能になります。

さらに、オイルパンは実質無いのと同じと言えるので、エンジン搭載位置を下げることで、低重心化も可能となります。また、オイル量の増加に加え、エンジンの外にオイルタンクがある事から温度管理も容易となるなど、サーキット走行などを見据えると非常にメリットが多いのがドライサンプ方式です。

市販車での採用事例が少ないワケ

ポルシェ 911 カレラ S

このドライサンプ方式は、ポルシェやフェラーリ、コルベットZ06などで採用されたことがあるものの、それ以外の市販車での採用事例は決して多くありません。

その理由の一つはコストです。ウェットサンプと比べてポンプの量が多く、またオイルマネージメントを別ラインとする事で、部品点数が多くなるほか、狭いエンジンルーム内にこれらを設置するため、構造が複雑化する事は必至です。

また、この複雑化も採用されない理由です。室内が狭くてもクレームの出ないスポーツカーならいざ知らず、ファミリーカーでは室内空間も広く取らないといけない事情がありますので、エンジンルーム内の部品は減らしたいもの。

構造が複雑である=トラブルが発生する可能性も高まります。やはりシンプルな構造な程、壊れにくくなります。メンテナンスもキチンとされる超高級スポーツカーならいざ知らず、ファミリカーには向かないと言えるでしょう。

さて、そこでセミドライサンプ

日産 GT-R

セミドライサンプも、市販車と言う意味ではポルシェやGT-R、レクサスIS-Fなどにしか使われていない方式です。しかし、ドライサンプの複雑でメンテナンスの心配がある方式を捨て、ウェットサンプの欠点を上手く濁すという意味では、市販車両への搭載としては非常に良い方式です。

セミドライサンプ車両は、オイルパンを用い、オイルパン=オイルタンクという設計をとります。この際、通常はオイルの自由落下のみでオイルを回収しますが、オイル回収用のポンプも備え、オイルの回収を確実に行います。これにより、横Gなどが発生しても、オイルタンク内には確実にオイル回収ができるため、供給も安定して行うことが可能になります。

ドライサンプ程は複雑にならないため、スペースの問題等は解決できますし、トラブルもドライサンプに比べれば減る事でしょう。

ドライサンプとウェットサンプの良いとこ取りではありますが、それでもまだまだ市販車に用いる程シンプルなものでもありません。そう考えると、GT-Rというクルマのメインターゲット層が、よくわかる構造の一つとも言えますね。

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