Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.6 『カーズ』のR指定

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Vol.6 『カーズ』のR指定

仕方がないので娘も交えて『カーズ』鑑賞会をスタートした。最近はトミカのミニカーやプラレールに大興奮で食いつくとはいえ、まだ2歳。クルマが人間のように振る舞うアニメの『カーズ』は、一見子ども向けのようで、ストーリーとしては大人の心に響く凝ったものだし、すぐに飽きてグズりはじめるだろうと思っていた。

ところがびっくり、これがまさかの大ハマり。主人公のマックィーンにすっかり惚れ込み、感情移入して爆笑したり、「がんばれ〜」なんて応援したりしている。結局エンディングまで観たあげく、「もういっかい!」と大暴れするのをなだめすかして布団に入った。

翌日には『カーズ2』も観て、それからもう何度再生したことか。書店へ行けば絵本やシールブックを欲しがり、娘の毎日はマックィーン漬けになってしまった。

もちろん、クルマの魅力を次世代に伝えるという観点では、喜ばしいことではある。でも同時に、とてつもない敗北感というべきか、もどかしさというべきか、活字で伝えることの難しさやその意味を悶々と考えさせられた。

私が子どもの頃には『カーズ』のようなものはなく、文字が読めるようになってから本や雑誌でクルマを知った。鮮明に残るのは中学生のときに出逢った、五木寛之氏の短編小説集『雨の日には車をみがいて』。ボルボの「アマゾン」なんて見たこともないクルマの形、音や匂い、乗り味までもを文章の巧みな描写から思い描き、いつか乗ってみたいと憧れたものだった。

そこから映像へと入り、実車での体験へと移る、その過程はもう娘には当てはまらない。そうした世代にこの先、活字でクルマを伝えることが必要とされるのだろうか。どんな伝え方をすれば届くのだろうか。思いもよらぬ夏休みの宿題を出された気分である。

そして夏の終わりに、私たち家族は映画館にいた。7月の時点では娘を連れて行くのは無理かなとあきらめていた、『カーズ』の最新作を観るためだ。もちろん、騒いだりグズったりしたらすぐ退出するのは覚悟の上。でも2時間弱の上映中、ポップコーンとジュースの助けもあり、娘はほとんど飽きることなくスクリーンを見つめていた。

今作は大人の心を揺さぶり、この先の人生を考えずにいられない内容で、夫と私はしんみりとその余韻を噛み締めることになったが、娘の映画館デビューとしては大成功だ。「○歳にはまだ早い、まだ無理」というレギュレーションは、命に関わること以外、親が決めるべきではないのかもしれない。そんなことも『カーズ』は教えてくれたのだった。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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