女性ドライバーが知りたい夏の日差し対策

クルマを巡るUV対策事情

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あるテレビ番組で、「ついに発見!顔のシワを本当につくらない美肌術」というテーマの特集を放送していた。番組に登場した70〜80代の女性たちは、シワの少ない、きめ細やかなツヤツヤとした肌をしている。

彼女たちには、ある共通点があるそうで、実行すれば、画面のお肌に近付けるというわけ。いったいどんな秘密があるのか? じらされる時間とともに、期待も高まる。

だが…。答えを見て「なぁんだ」と正直がっかりしてしまった。共通点は〝日本一日照時間が少ない土地に住み、ずっと屋内で働いてきた人〟というもの。つまり「極力、紫外線(UV)を浴びないこと」

だから、それが難しい。

UV対策が、肌の老化対策につながることは、大半の女性が知っているだろう。クルマを運転する女性なら、なおさらだ。

三菱自動車が実施した『主婦ドライバー5000人実態調査2013』によると女性の93%が「UVが気になる」と回答、8割以上の人が何らかの対策をとっていた。とはいえ、紫外線は目に見えないため、どれだけ対策すれば十分なのか実感しづらく、マメさも求められる。

季節は夏本番を迎え、友人や家族らと遠出をする機会も増える。ダイエットで言うところの「食べたいけど痩せたい」と同様、ドライブ時に「ラクしてUV対策」はできないものか。

そのためにはまず、相手を知ることから。UVは、骨の生成に欠かせないビタミンDを生成したり、殺菌・脱臭効果を発揮したりといったプラスの面もあるが、ここでは主にデメリットである肌ダメージに注目したい。

肌の奥深くまで届くA波

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地上に届くUVには「B波」「A波」の2種類がある。B波は、波長が短く、皮膚表面にダメージを与えるのが特徴。「日焼けして肌が真っ赤になった」というのはB波の影響だ。シミやそばかすの原因にもなるが、極力直射日光に当たらないようにすれば、ある程度防御することができる。

一方、アンチエイジングなどの観点から影響が大きいとされるのがA波。波長が長いため、B波よりも皮膚の奥深くにまで侵入。一見、肌には急激な変化が生じないように見えるが、奥ではじわじわとダメージが蓄積。

やがて肌のハリに欠かせないコラーゲンの繊維が切断・分解され、しわやたるみを引き起こす。しかも、地上に降り注ぐ量はB波の20倍以上。雲をすり抜け、さらには建物やクルマのガラスをも通り抜けてしまうというから、天候に関わらず対策しなければ、肌はダメージを受け続ける。

また、目に浴びることで、肌が日焼けするという研究結果もある。信号が脳の下垂体へと伝わり、全身にメラニン色素を生成する指令を出すのだそうだ。

ガラスを隔てていても、クルマの中にはUVが降り注いでいる。だからこそ女性ドライバーは、日焼け止めを塗ったり、アームカバーをしたり、サングラスをしたり、と各自で工夫しているのだ。しかしそれでも、何だか焼けている気がしないだろうか。

そこで、まずは現在のクルマのガラスにおけるUV対策がどうなっているのかを聞いてみた。

どうなっている? 自分のクルマ  

訪ねたのは、クルマ向けの高機能ガラス開発に力を入れているAGC旭硝子。クルマのUVカットガラスの最新事情でまず驚いたのが、「クルマのフロントガラスは、基本的にUVカット率約99%ですよ」(自動車ガラスグローバルマーケティング・営業推進室小島美穂さん)という事実。

安全面や耐久性など厳しい品質が求められるクルマ用ガラスには、「合わせガラス」と「強化ガラス」の2種類がある。合わせガラスは、2枚のガラスの間に樹脂でできた膜を挟むという構造のため、衝撃物が貫通しにくく、割れても飛び散りにくい。このため、フロントガラスでは、標準的に合わせガラスが採用されている。

実は、この安全性を求めた、〝2枚のガラスの間に膜を挟む〟構造こそ、UVカット率約99%の秘密。「フロントガラスの中間膜は、安全性の確保やUVカットだけでなく、さらに赤外線カット、音を遮る機能なども搭載されている」そうだ。

なるほど。旧いクルマなどは別として(*1)、フロントガラスからのUVはほぼ気にしなくて良いということか。となれば、次に気になるのは、横から入ってくる紫外線。運転席側からのじりじりとした強い日差しに、ストレスを感じる人も多い。

*1 日本では、1985年にフロントガラスへの合わせガラス搭載を法制化。

運転席や助手席UVカット率90%の壁とは

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運転席や助手席、つまりフロントドア部分のガラスについて尋ねてみると、意外なことに「国内メーカーのほとんどがUVカットガラスを採用している」との答え。

ちなみに商用車や一部のベーシックグレードの軽自動車の場合は、ふつうのガラスが採用されていることが多いという。

ここで、疑問がわいてきた。

先ほど国内メーカーのほとんどは「フロントドア用ガラスにもUVカットガラスを採用している」と教えてもらったが、実際には日焼けをしている気がするのだが…。

「実は、フロントドア用ガラスは、車種によってUVカット率が異なるんです」

UVカットガラスだからと言って、安心はできないということか。「しかも、これまでのフロントドア用ガラスのUVカット率は、一般的には約90%が限界なんです」とのこと。

その理由は、技術面と安全面の両立。多くの場合、フロントドア用ガラスは、単板である強化ガラスを採用しており、UVカット機能を持たせる際にはガラス自体に紫外線吸収剤を練り込む。この時、B波だけでなく、A波も防ぐ吸収剤を練り込もうとすると、ガラス自体の透明度が落ちてしまい、可視光線透過率(*2)の必要値が確保できなくなる。これが、90%の壁なのだ。

*2「道路運送車輛の保安基準」によって、自動車のフロントガラスおよびフロントドア用ガラスは、可視光線透過率が70%以上でなくてはならない、と定められている。

アームカバーはもういらない?!

だが、約90%カットとは、実際のところ、どの程度の効果があるのだろう?

「波長の短いB波と、波長の長いA波の一部は防ぐことができますね。逆に言えば、しわやたるみの原因となるA波の一部は、ガラスを通して車内に入り込んでいるんです」 

どちらかと言えば、A波のほうを防ぎたいところだ。

そんな声に応え、同社は世界で初めてUVカット率約99%のフロントドア用ガラスを開発した。B波の吸収剤を練り込んだ従来のUVカットガラスに、A波を吸収する高性能な膜をコーティングする技術を開発。残りのUV約10%をカットすることに成功した。

このフロントドア用ガラス「UVベール プレミアム」を使うと、アームカバーとほぼ同程度、日焼け止めだとSPF50、PA+++相当の効果が期待できるという。まさに、「ラクしてUV対策」を叶えたのである。

2010年12月の発表以来、すでに7ブランド24車種(2013年6月時点)で採用。女性向けのクルマがメインだが、意外なことに、男性ターゲットの車種に搭載されているケースもある。助手席に座る彼女や妻を気遣ってという声もあるが、内装のプラスチックやレザーなどの劣化を防ぐ効果も魅力となっているのだろう。

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クルマの外ではUVチェッカーがすぐ真っ赤に。「UVベールPremium」搭載車のフロントドア用ガラスを閉めると色が引いた。

時代は赤外線対策へ

肌を刺すジリジリとした暑さ。いかにも「今、私の腕は焼けています」と証明しているかのよう——。AGC旭硝子が女性ドライバー104人にクルマの窓付近で感じる不満について調査したところ、UVに次いで回答が多かったのが「暑さ」への不満。このジリジリとした暑さ。UVによる日焼けと混同している人も多いが、原因は別物だという。

それは、赤外線。赤外線とは、太陽から出ている暑さの原因となる光線で、人の皮膚表面から数ミリメートルの深さまで浸透し、細胞を振動させることによって熱を発生させる。

ステアリングを持つときや、シートに座るときにアチッとなるのも、赤外線によるものだ。さらに、輻射熱によって空気を温めるため、車内温度を高くする原因にも。近年、熱中症を引き起こす一因として注目されている。

女性としては、UV対策に目が向きがちだが、とくに子供や高齢者とドライブする際は、注意しておきたい。中でも、子供は体温調整機能が未発達で、一度体温が上がると平熱に戻りにくく、例えクーラーで車内が涼しくても、窓からの直射日光に当たれば、体温がすぐに上がってしまう。
 
そこで最近では、UVカット機能に加え、赤外線もカットできるガラスが登場しているという。
 
同社が開発したフロントドア用ガラス「UVベール プレミアム クールオン」は約99%のUVカットに、赤外線カット機能をプラス。実験によると、従来のUVカットガラスに比べ、肌表面温度が2℃低くなった。数字にするといまいちピンとこないが、体感すると2℃の差は大きい。暑さを和らげることにより、エアコンの設定温度を上げられるなど、燃費向上効果も期待できる。現在はトヨタの特別仕様車「ヴィッツ シエル」やレクサス
「HS250h」などで採用されている。

車内で闘うドライバーを救うべく、クルマの日差し対策はここまで進化している。

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従来のドアガラスでは、41.4℃だった肌表面温度が、「UVベールPremium Cool on」を通すと39.4℃まで低下。ジリジリした暑さも和らいだ。

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従来のフロントドア用ガラス

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UVベール Premium Cool On

従来のドアガラスでは、41.4℃だった肌表面温度が、「UVベールPremium Cool on」を通すと39.4℃まで低下。ジリジリした暑さも和らいだ。

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