メルセデス シルバーアローの伝説

メルセデス シルバーアローの伝説

アヘッド メルセデス シルバーアロー

▶︎ドイツ・シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムには、1930年代の「シルバーアロー」を中心に、歴代レーシングカーが展示してある。


メルセデス・ベンツの本社があるドイツ・シュトゥットガルトにはミュージアムがあり、130年になろうとする同ブランドの歴史を振り返ることができる。生活に密接に関わった乗用車の展示が主だが、順路の最後にモータースポーツに特化したコーナーが待ち構えている。

展示してある最古のレーシングカーは、1900年のベンツ14PSレンワーゲンとダイムラー・フェニックス23PSレンワーゲンだ。この頃、乗用車も含めて車名に馬力を入れ込むのが慣わしだった。

「レンワーゲン」は「レーシングカー」の意味。ダイムラーはゴットリープ・ダイムラーのことで、ベンツと同時期にガソリン自動車を発明した技術者だ。ベンツとダイムラーは1926年に合併し、ダイムラー・ベンツになった。これが現在のダイムラー社の始まりである。

3番目に古い展示車両は1909年のベンツ200PSレンワーゲン、通称「ブリッツェン・ベンツ」で、ブリッツェンとは稲光のことだ。排気量2万1504ccの4気筒エンジンを積んだモンスターマシンは、ヨーロッパで初めて時速200キロの壁を破った。その衝撃の速さを稲光になぞらえたのだろう。

ここまでの3台の車両はいずれも白い。なぜならこの頃、ドイツのナショナルカラーは白と定められていたからだ。当時のレースは国別対抗の性質があったためで、フランスは青、ベルギーは黄色、イギリスは濃緑などと定められていた。

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▶︎ドイツで人気のDTMにはメルセデスAMG C63 DTM(エンジンは4ℓ・V8自然吸気を搭載)で参戦。アウディやBMWとしのぎを削っている。トレンドをリードする空力開発を行うのが特徴だ。


1934年のグランプリレースは規則が大幅に変更され、車両の総重量をそれまでの半分程度の750kg以下に抑えなければならなくなった。メルセデス・ベンツは新規則に合わせてW25を開発。

このクルマも当然、ナショナルカラーの白をまとっていた。だが、デビューレース前日に規定重量を1kgオーバーしていることが発覚。苦肉の策としてボディを覆っていた塗料を落とし、アルミの地肌をむき出しにして走った。

土壇場の減量は成功。車体骨格などを徹底的に軽量化したおかげで大排気量高出力の3.3ℓ・V8スーパーチャージャー付きエンジンを搭載したW25は、デビュー戦で勝利を挙げた。このエピソードが元になり、メルセデス・ベンツのレーシングカーは「シルバーアロー」と呼ばれるようになる。その後、シルバーはドイツのナショナルカラーになった。

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▶︎日本のスーパーGT GT300クラスの2014年チャンピオンは、SLS AMG GT3で参戦したゲイナーが獲得した。写真は戦闘力アップを目指して2015年にSLS AMG GT3に切り換えたグッドスマイルレーシング初音ミク号。量産モデルをベースに開発したGT3車両は世界的に人気が高まっている。メルセデス・ベンツは5月のニュルブルクリンク24時間で、新型のメルセデスAMG GT3を引っ提げ、テスト参戦した。


1952年に300SL(W154)でル・マン24時間を制し、'54年、'55年のF1をW196で戦ったメルセデスは2010年、W01と名付けた21世紀のシルバーアローでF1に復帰した。

ノーズ先端にはカーボンファイバーの下地が覗いていたが、これは塗料を剥いで減量した故事に由来。「勝利へのこだわり」の原点を忘れていないことを示す細工だった。'14年のW05は圧倒的な強さでチャンピオンを獲得。'15年のW06も強さを受け継いでいる。

クルマは静と動のバランスで成り立っているとすれば、現代のメルセデス・ベンツからは「静」の印象を強く受ける。例えばプレミアム感あふれる佇まいがそう。技術力の象徴とも言える高い安全性能はメルセデス・ベンツの大きな魅力だ。

一方で、「動」は動力性能であり運動性能だ。双方を高い次元に引き上げたのがAMGだが、AMGのバッジをつけないモデルも「動」的な要素と無縁なわけではない。バランスの問題で「静」が目立つだけなのだ。シルバーアローのスピリットは普段顔を出さず、いつ呼ばれてもいいように控えているのである。

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▶︎F1には1996年からセーフティカーとメディカルカーを提供している。セーフティカーは2015年からメルセデスAMG GT Sにスイッチ。メルセデスAMGペトロナスF1チームは圧倒的な強さで2014年シーズンを制すると、'15年もシーズン序盤から独走態勢を築く無敵ぶりを披露している。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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