ジムニーは世界を走り回っている

アヘッド ジムニー

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概してモデルチェンジのサイクルが短い日本車において、販売開始から42年を経て、いまだわずか3代目というクルマがある。それがスズキのジムニーだ。ジムニーは、軽自動車規格内に収まる本格的クロスカントリータイプ4WDとして1970年に登場した。しかしその誕生の経緯は決して平坦ではなかった。

text:桜間 潤  [aheadアーカイブス vol.114 2012年5月号]

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ジムニーは世界を走り回っている

ジムニーは世界を走り回っている

ジムニーは、じつはゼロから生まれたクルマではない。その前身となるクルマがあった。そのクルマは、日本のホープ自動車というメーカーが開発した軽自動車の四輪駆動車『ホープスターON型』だ。'67年に完成したこのクルマは、本格的なオフロード性能を備えていた。

ただ、ホープ自動車は弱小メーカーで、経営的に困難を抱えていたため、このクルマの製造権を他社に移譲することを決意。当時はスズキ東京の社長だった現スズキ会長兼社長の鈴木 修氏が、社内の反対を押し切って製造権を買い取ったのである。

当時スズキは軽自動車規格の乗用車『スズライト』や同じく軽規格のトラック『キャリイ』で成功を収め、軽のスズキという立場を固めつつあった。さらに、そのラインアップに軽の四輪駆動車を加えることになる。

手本となる『ホープスターON型』があるとはいえ、手作りに近かった同車をそのまま量産することは困難であり、新たに開発し直さなくてはならなかったのだ。エンジンとトランスミッションはキャリイのものを流用。デザインも『ホープスターON型』から一新、レジャー用途に使えるアピールがなされた。

ジムニーという名称は、四輪駆動車の代名詞であるジープと、小ささを意味するミニとを掛け合わせた造語だ。ジープに匹敵する悪路走破性を軽という小さな規格の中で作り上げた自負心が名前に込められている。

当初、空冷2サイクル360㏄エンジンで登場したジムニーは、2年後には水冷式に変更され、安定した性能を発揮できるようになった。

副変速機を持つ4WD機構はもちろん、悪路走破性に有利な大径の16インチタイヤを採用したことなどは、ジムニーが本格的なオフロードモデルであることの証だった。

事実、水冷化されたモデルでは、バハ・カリフォルニアの灼熱の砂漠を走るレース、「バハ1000」の前身となる「メキシカン1000」に参戦。数千㏄のエンジンを搭載する車両でエントリーするのが当たり前の中で、わずか360㏄しかないジムニーが、見事に完走を果たした。

高い悪路走破性能に加え、実用車としての使い勝手を備えたジムニーは、現在も世界各国・各地域に輸出されている。アメリカでは「サムライ」の名称で親しまれた。

オセアニアでは、オーストラリアやニュージーランドを中心に、小型トラックとしても活躍。アジアでは、インドネシアやタイ、台湾をはじめ各国で販売され、インドネシアでは「カタナ」、タイでは「カリビアン」の名称で親しまれている。

さらにインドでは、スズキの現地法人、マルチ・スズキ・インディアがノックダウン生産を行い、「マルチ・ジプシー」という名前で販売。

市民の足として重宝されているのはもちろん、救急車への採用や、現地のアドベンチャーラリー「レイド・デ・ヒマラヤ」や「デザート・ストーム」などにも出場し、現地の国民車としての地位を得ているのだ。

ジムニーが輸出されたり、ノックダウン生産されている国と地域は、188にも上る。世界地図を広げてジムニーが受け入れられている国・地域を塗りつぶしていくと、ヨーロッパからアフリカ、北米・南米、アジア、オセアニアの多くの地域で活躍していることが分かるのである。

軽自動車の可能性を広げようと造られたジムニーは、肥大することなく、小ささにこだわり続けた。小さな車体に本格的な4WDシステム、足回り、シャシーを組み合わせた結果、ジムニーは高いオフロード走破性能を発揮できた。小さくとも、軽であろうとも、胸を張って乗れるクルマ、それがジムニーなのである。

1970

▶︎オーストラリアの広大な大地を走るジムニー。小排気量ながら、本格的なクロスカントリー4WD性能が認められた証である。
▶︎最初期モデルのLJ10型は、まだ空冷式エンジンだった(トップ)。2年後に登場したLJ20型で水冷式エンジンを搭載。室内は依然として質実剛健(上)。
▶︎オフロードの走破性能と実用性の高さから、ジムニーは警察車両や消防車両としても採用され、活躍した。

1981

▶︎1981年に、初めてフルモデルチェンジを受ける。世界戦略車として地歩を固めつつあった先代から、さらに世界市場を意識した。
▶︎世界市場の中でも、とくに重要なマーケットとなるのがインド。実用ユースはもとより、ラリーなど競技にも使われている。
▶︎2サイクル550ccエンジン搭載モデルのほかに、'82年には4サイクル1ℓエンジンを搭載したモデルも追加された。
▶︎年代を経るにつれ、搭載エンジンは4サイクル550cc、さらに軽規格の変更に伴い660ccエンジンを積むようになった。

1998

▶︎初期モデル登場から28年。ジムニーは第三世代にモデルチェンジした。本格四輪駆動車であることにこだわり、コストのかかるラダーフレームを依然採用し続けた。
▶︎商品コンセプトが10年以上継承されている商品を対象に選ばれる「グッドデザイン・ロングライフ賞」を'08年に受賞。長年に渡りオフロードにこだわってきたジムニーの姿勢が評価された。
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