忘れられないこの1台 vol.33 BMW 325i カブリオレ

アヘッド BMW 325i カブリオレ

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「蜜月が長く続く分だけ様々なエピソードが生まれ、愛情が深まるほどにこの関係は永遠に続くとすら思えてしまう。それでも別れなければいけないのなら、ハッピーエンドで終わりたい」。というのは人とクルマの関係においても同じではないかと思う。中古車店を営む友人の勧めでBMW3シリーズのカブリオレの購入を検討中、ブラックのモデルに続いて紹介されたのが、電撃購入に至った“サモアブルー”という色をした325iカブリオレだった。

text:飯田裕子 [aheadアーカイブス vol.110 2012年1月号]
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vol.33 BMW 325i カブリオレ

vol.33 BMW 325i カブリオレ

BMW3シリーズの歴史の中でこのモデルは3代目にあたり、4座のオープンカーとして大人4人がしっかりと乗れる実用性と運転好きを退屈させることのないハンドリングを持つ、スポーティなオープンカーだった。

また当時のカブリオレのデザインは特にシャープさと重厚さのバランスが絶妙で、とりわけオープンにすると前端から後端へと水平に伸びたショルダーラインが際立ち、その美しさは今思い出してもウットリしてしまうほど。

さらにレッドやブラックなどのボディカラーがポピュラーな中、奇跡的に出会えたサモアブルーというボディカラーはラベンダーメタリック色を基本としながら、朝昼晩、天候によって変化する光の具合でシルバーやパープル、ライトブルーなどへと視覚的な変化が感じられるところが私にとっては魅力だった。

季節を問わずオープンドライブを楽しむ中でも、今のような寒い時期に車内を暖め、冷たく澄んだ空気を肌で感じながら走るのが特に好きだった。新型が登場した頃に愛車との取材を受けた際、編集者に買い替えについて質問された私は「検討中です」と答えた。

するとそれを傍らで聞いていたからなのか、帰りに幌が閉まらなくなるというトラブルが起きた。後にも先にも故障らしきものはこの一度きり。このヤキモチ的なトラブルは愛おしさを一層強めるエピソードでもある。

これほど深く愛していたのに、私はこのクルマとの別れの瞬間を知らない。私が2年半ほどアメリカで生活していた間、日本で誰にもどこにも連れ出してもらえず衰えていくカブリオレが可哀そうになり、購入した中古車店に引き取ってもらったのだ。これは大好きだったクルマとの別れ方としては決していい別れ方ではない。

果たして約8年間におよぶサモアブルーの325iカブリオレとの蜜月は心に残る多くの素敵な思い出と見送ることができなかったという心残りによって、これからも深く私の記憶に残る一台で在りつづけると思う。

MW 325i カブリオレ

E36型3シリーズ('90年-'98年)カブリオレは'94年に登場。それまでの丸型4灯ヘッドライトは形式を変え、安全性と実用性のためボディサイズも拡大。大きな変化を遂げた。3層構造の幌は静粛性、気密性に優れた電動開閉式。ビニール製リヤウインドウは視界が広いが、経年劣化で視認性が落ちる場合があるのが難点だった。

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text:飯田裕子/Iida Yuko
自動車メーカーでOLをしながら弟(レーサーの飯田章)とともにレースに参戦。その後、フリーのジャーナリストとして“女性にもわかる”Driving/ Car×Life/ People×Carを中心としたリポートを幅広いメディアで紹介中。
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