救急車のベースとなっている車種5選!意外と知らない名車たち【2025年版】
更新日:2025.09.30

※この記事には広告が含まれます
救急車とは、傷病者を医療機関へ搬送する専門車両のことです。最近では、救急車内で応急手当てを行うドクターカーも登場しています。なお救急車の正式名称は、消防法によると救急自動車といいます。そんな救急車のベースとなっている車種は何でしょう?
救急車のベース車両とは?
救急車とは、傷病者を医療機関へ搬送するための特種用途特種用途自動車です。正式名称は消防法で「救急自動車」と定義され、車内で応急処置や救命活動が行えるよう装備が施されています。これらの救急車は既存の市販車をベースに改造して作られており、そのベース車両とは救急車の土台となる市販車種のことです。
救急車の主な種類
救急車には様々な種類があり、用途や規模によってベース車両も異なります。
- 高規格救急自動車(標準的な救急車)
- 1B型・2B型・3B型の違い
小型救急車(軽救急車)の存在
一方で、狭い道や住宅街に対応した小型の救急車(軽救急車)もあります。軽ワンボックスや小型車両をベースにしており、それぞれのサイズ・用途に応じて最適な車種がベース車両として採用されているのです。
なぜ特定の車種が選ばれるのか?選定のポイント
救急車のベース車種が多岐にわたるのは、各地域や用途によって求められる性能が異なるためです。選定の主なポイントは、信頼性と耐久性、車内スペースや搭載力、そして走破性や機動性などです。
例えば日常的に出動する標準的な救急車には、エンジンやブレーキの信頼性が高く、長時間のアイドリングや頻繁な加減速にも耐えうる車種が求められます。こうした理由から、日本ではトヨタ「ハイエース」が圧倒的シェアを誇り、高い耐久性と全国どこでも整備しやすい体制が評価されています。
例えば日常的に出動する標準的な救急車には、エンジンやブレーキの信頼性が高く、長時間のアイドリングや頻繁な加減速にも耐えうる車種が求められます。こうした理由から、日本ではトヨタ「ハイエース」が圧倒的シェアを誇り、高い耐久性と全国どこでも整備しやすい体制が評価されています。
山間部・降雪地域での4WD需要
山間部や降雪地域では四輪駆動(4WD)仕様のニーズも高く、トヨタは1994年にハイエース救急車(ハイメディック)に4WDを追加設定するなど、各地の要望に応えてきました。
ドクターカーに必要な車両性能
車内に多くの医療機器を積むドクターカー(医師同乗型救急車)には、大型のマイクロバスが選ばれる傾向があります。十分な室内空間が必要とされるため、ワンボックス車より大きなサイズの車種が採用されやすいのです。
2025年最新・救急車のベース車種5選
① トヨタ ハイエース(ハイメディック)
トヨタ「ハイエース」をベースにした高規格救急車「ハイメディック」。日本の救急車の約9割以上を占める代表的モデルです。救急車と聞いて真っ先にこのハイエースを思い浮かべる方も多いでしょう。
ハイエースは信頼性の高さと十分な車内空間で全国の消防本部から絶大な信頼を得ています。トヨタの関連会社であるトヨタテクノクラフト社(現・トヨタ車体)が救急車向けに架装を担当し、「ハイメディック」の名称で全国のトヨタディーラーから販売されています。
標準的な1B型救急車のベース車両ですが、自治体によっては2B型(二段ベッド搭載)のハイメディックを採用することもあります。ハイエース救急車の多くはガソリンエンジン車で、高いアイドリング安定性と整備性を備えているのも特徴です。
ハイエースは信頼性の高さと十分な車内空間で全国の消防本部から絶大な信頼を得ています。トヨタの関連会社であるトヨタテクノクラフト社(現・トヨタ車体)が救急車向けに架装を担当し、「ハイメディック」の名称で全国のトヨタディーラーから販売されています。
標準的な1B型救急車のベース車両ですが、自治体によっては2B型(二段ベッド搭載)のハイメディックを採用することもあります。ハイエース救急車の多くはガソリンエンジン車で、高いアイドリング安定性と整備性を備えているのも特徴です。
なお、ハイエースに次ぐシェアを持つ国産高規格救急車が日産「パラメディック」です。初代パラメディックは日産エルグランドをベースに1990年代後半に登場し、約20年もの間モデルチェンジが行われない異例のロングセラーとなりました。その後2018年になってようやくNV350キャラバンをベースとした新型パラメディック(3代目)へフルモデルチェンジされ、先進の安全装備や直列4気筒2.5Lエンジンの採用で一新されています。
もっとも、2025年現在でもハイエース(ハイメディック)の独壇場である状況は変わらず、各地の救急現場を支える屋台骨と言える存在です。② トヨタ コースター(マイクロバス型救急車)
大型の救急車やドクターカーには、マイクロバスがベース車両として用いられるケースがあります。代表例がトヨタの小型バス「コースター」です。
コースターをベースにした救急車両は、主にドクターカー(医師・看護師が同乗し現場で治療を行う車両)として活躍します。通常の救急車(患者搬送が主体)と異なり、ドクターカーには医療処置を行うための広いスペースや多数の医療機器が必要となるため、ワンボックス車よりも一回り大きいマイクロバスが適しているのです。
例えば熊本赤十字病院ではコースター救急車がER(救命救急センター)のドクターカーとして配備されており、車内で処置ができる大型救急車として運用されています。
コースターベースの救急車は2B型や3B型と呼ばれる複数傷病者対応型として使われることもあり、その車内の広さと積載能力は大規模災害時にも威力を発揮します。
コースターをベースにした救急車両は、主にドクターカー(医師・看護師が同乗し現場で治療を行う車両)として活躍します。通常の救急車(患者搬送が主体)と異なり、ドクターカーには医療処置を行うための広いスペースや多数の医療機器が必要となるため、ワンボックス車よりも一回り大きいマイクロバスが適しているのです。
例えば熊本赤十字病院ではコースター救急車がER(救命救急センター)のドクターカーとして配備されており、車内で処置ができる大型救急車として運用されています。
コースターベースの救急車は2B型や3B型と呼ばれる複数傷病者対応型として使われることもあり、その車内の広さと積載能力は大規模災害時にも威力を発揮します。
③ 日産 ジューク(小型SUVドクターカー)
救急車には患者を運ぶ車両だけでなく、医師や医療スタッフを現場へ迅速に送り届けるための車両も存在します。それが小型乗用車タイプのドクターカーです。中でも意外なベース車種として知られるのが日産の小型SUV「ジューク」でしょう。
ジュークも実はドクターカーのベースとして活躍した例があります。医師を運ぶだけのドクターカーには、高い機動性が重視されます。山間部や離島など救急現場へのアクセスが悪い地域では、悪路走破性に優れた小型SUVが適任です。
実際に鹿児島市立病院ではジュークを改造したドクターカーが運用され、救急ヘリの離着陸点まで医師を送り届ける役割を担っていました。また、埼玉県のさいたま赤十字病院では日産エクストレイルをドクターカーとして導入し、24時間体制で医師を現場に派遣しています。
普段はおしゃれな街乗りSUVという印象の車種も、緊急走行用の赤色灯とサイレンを装備すれば一転して命をつなぐ緊急車両に変身するのは興味深いポイントでしょう。
ジュークも実はドクターカーのベースとして活躍した例があります。医師を運ぶだけのドクターカーには、高い機動性が重視されます。山間部や離島など救急現場へのアクセスが悪い地域では、悪路走破性に優れた小型SUVが適任です。
実際に鹿児島市立病院ではジュークを改造したドクターカーが運用され、救急ヘリの離着陸点まで医師を送り届ける役割を担っていました。また、埼玉県のさいたま赤十字病院では日産エクストレイルをドクターカーとして導入し、24時間体制で医師を現場に派遣しています。
普段はおしゃれな街乗りSUVという印象の車種も、緊急走行用の赤色灯とサイレンを装備すれば一転して命をつなぐ緊急車両に変身するのは興味深いポイントでしょう。
④ いすゞ ギガ(スーパーアンビュランス)
救急車の中でも最大級のサイズを誇る特殊車両が、スーパーアンビュランスです。いすゞの大型トラック「ギガ」をベースにしており、全長約12メートルにも達する車体には医療設備満載のキャビンが架装されています。
車内スペースは床面積40平方メートルにも及び、最大で8床のベッドを設置可能。車両停止時には車体の側面部がせり出すように展開し、まるでモバイル野戦病院のような光景になります。その役割は大規模災害時の救護所であり、多数の傷病者が発生した現場で初療を行う拠点として活躍します。
東京消防庁では現在このスーパーアンビュランスを2台配備しており、1台はいすゞ・ギガ、もう1台は三菱ふそう・スーパーグレートをベースとしています。初代車両は地下鉄サリン事件(1995年)での教訓を元に開発され、以降も多数傷病者対応が必要な現場で活躍しました。
車両価格も数億円規模と非常に高価ですが、その分災害時の切り札として大きな安心感をもたらします。
なお近年では、このスーパーアンビュランスに加え、東京消防庁に電気駆動の救急車も試験導入されています。2020年には日本初となるEV救急車(日産の欧州向けバンNV400ベース)が池袋消防署で運用開始され、静粛性や低振動を活かして患者・隊員の負担軽減や非常時の移動電源として期待されています。
車内スペースは床面積40平方メートルにも及び、最大で8床のベッドを設置可能。車両停止時には車体の側面部がせり出すように展開し、まるでモバイル野戦病院のような光景になります。その役割は大規模災害時の救護所であり、多数の傷病者が発生した現場で初療を行う拠点として活躍します。
東京消防庁では現在このスーパーアンビュランスを2台配備しており、1台はいすゞ・ギガ、もう1台は三菱ふそう・スーパーグレートをベースとしています。初代車両は地下鉄サリン事件(1995年)での教訓を元に開発され、以降も多数傷病者対応が必要な現場で活躍しました。
車両価格も数億円規模と非常に高価ですが、その分災害時の切り札として大きな安心感をもたらします。
なお近年では、このスーパーアンビュランスに加え、東京消防庁に電気駆動の救急車も試験導入されています。2020年には日本初となるEV救急車(日産の欧州向けバンNV400ベース)が池袋消防署で運用開始され、静粛性や低振動を活かして患者・隊員の負担軽減や非常時の移動電源として期待されています。
⑤ 軽ワンボックスカー(軽救急車)
大都市のビル街とは異なり、地方の集落や城下町など狭隘路(きょうあいろ)が多い地域では、標準的な救急車が現場へ進入できないケースがあります。この課題を解決するために生まれたのが、軽自動車をベースとする「軽救急車」です。
主にダイハツ「ハイゼットカーゴ」やスズキ「エブリイ」といった軽ワンボックスを基に改造された車両が、各地の消防本部で導入されています。その最大の目的は、傷病者の元へいち早く到達し、応急処置を開始することです。
象徴的な例として、大分県臼杵市消防本部が2023年に軽救急車を導入しました。城下町特有の狭い路地が多い同市では、救急車が現場近くまで進入できない事案が年間150件近く発生していたとされ、軽救急車の配備により、現場到着と処置開始時間の大幅な短縮が期待されています。
軽自動車ベースとはいえ、車内には専用のストレッチャーやAED(自動体外式除細動器)、吸引器といった救命に必要な資器材は確実に搭載されています。
また、近年では消防の「軽救急車」とは別に、医療機関が主体となり、高度な医療機器を積んでへき地や被災地を巡回する軽自動車ベースの「移動診療車」や「ドクターカー」の活用も進んでいます。 これは東日本大震災の教訓から生まれた動きでもあり、医療資源が限られる地域での新たな役割として注目されています。
低コストで機動力に優れた軽救急車は、高齢化が進む過疎地域や、古い町並みが残る観光地などで、今後さらに重要な存在となるでしょう。
主にダイハツ「ハイゼットカーゴ」やスズキ「エブリイ」といった軽ワンボックスを基に改造された車両が、各地の消防本部で導入されています。その最大の目的は、傷病者の元へいち早く到達し、応急処置を開始することです。
象徴的な例として、大分県臼杵市消防本部が2023年に軽救急車を導入しました。城下町特有の狭い路地が多い同市では、救急車が現場近くまで進入できない事案が年間150件近く発生していたとされ、軽救急車の配備により、現場到着と処置開始時間の大幅な短縮が期待されています。
軽自動車ベースとはいえ、車内には専用のストレッチャーやAED(自動体外式除細動器)、吸引器といった救命に必要な資器材は確実に搭載されています。
また、近年では消防の「軽救急車」とは別に、医療機関が主体となり、高度な医療機器を積んでへき地や被災地を巡回する軽自動車ベースの「移動診療車」や「ドクターカー」の活用も進んでいます。 これは東日本大震災の教訓から生まれた動きでもあり、医療資源が限られる地域での新たな役割として注目されています。
低コストで機動力に優れた軽救急車は、高齢化が進む過疎地域や、古い町並みが残る観光地などで、今後さらに重要な存在となるでしょう。
【豆知識】近未来の救急車はEVになる?
最後に豆知識として、「EV救急車」の登場をご紹介します。三菱自動車は2023年、軽商用EV「ミニキャブバン」をベースにした電気救急車を試作し、大阪・関西万博の主催団体に寄贈しました。
ガソリンエンジンを持たないEV救急車は静粛性が高く、排ガスを出さないため屋内イベント会場などでも安心して医療活動が行える利点があります。またトヨタも燃料電池バスを改造した大型救急車を発表するなど、水素燃料や電気で走る次世代の救急車開発が進められています。
こうした新技術が本格普及すれば、いずれ当記事で紹介した5車種にも電動パワートレイン版が登場するかもしれません。クルマ好きとしては、環境に優しくパワフルな次世代の「頼れる働くクルマ」にも注目したいところです。
ガソリンエンジンを持たないEV救急車は静粛性が高く、排ガスを出さないため屋内イベント会場などでも安心して医療活動が行える利点があります。またトヨタも燃料電池バスを改造した大型救急車を発表するなど、水素燃料や電気で走る次世代の救急車開発が進められています。
こうした新技術が本格普及すれば、いずれ当記事で紹介した5車種にも電動パワートレイン版が登場するかもしれません。クルマ好きとしては、環境に優しくパワフルな次世代の「頼れる働くクルマ」にも注目したいところです。
まとめ:進化する救急車のベース車種
以上、2025年時点で注目の救急車ベース車種5選をご紹介しました。救急車両は普段何気なく目にしていますが、その背後には各車種ごとの特徴を活かした工夫があることが分かります。
車両技術の進歩に伴い、救急車の世界も日々進化しています。たとえばゼロエミッション化の潮流は救急車にも波及しており、前述のEV救急車のように環境に優しく災害時の電源にもなる車両が登場しました。また感染症対策として陰圧装置を備えた救急車も開発され、2020年の新型コロナウイルス流行時には専用車が活躍しています。
今後も各メーカーの車種が新たな救急車ベースとして採用されていく可能性があり、私たちが将来目にする救急車はさらに多様化していることでしょう。日々進化する名車たちが、これからも陰で私たちの命と安全を支えてくれるのです。
車両技術の進歩に伴い、救急車の世界も日々進化しています。たとえばゼロエミッション化の潮流は救急車にも波及しており、前述のEV救急車のように環境に優しく災害時の電源にもなる車両が登場しました。また感染症対策として陰圧装置を備えた救急車も開発され、2020年の新型コロナウイルス流行時には専用車が活躍しています。
今後も各メーカーの車種が新たな救急車ベースとして採用されていく可能性があり、私たちが将来目にする救急車はさらに多様化していることでしょう。日々進化する名車たちが、これからも陰で私たちの命と安全を支えてくれるのです。